「越境学習×学習コミュニティ~小さな越境からはじめるVUCA時代の人材育成~」イベントレポ#3

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去る2022年11月9日に一般社団法人ノンプログラマー協会(以下ノンプロ協会)主催のセミナー「越境学習×学習コミュニティ~小さな越境からはじめるVUCA時代の人材育成~」が開催されました。

前回、前々回の記事では石山先生パート、高橋さんパートの内容をレポートしました。

本記事では参加者からの質問と、それに対する石山先生、高橋さんの回答をご紹介します。

越境学習における伴走者の役割

――越境学習後に伴走者がコーチングと壁打ちをしてくれるという話がありましたが、壁打ちとコーチングとは何でしょうか

石山先生 色々な事例を見ていく中で伴走者の力量がとても重要というのは感じています。押してみて、ダメなら引いてみたり、なところがあって、例えばSlackを見て圧倒されて何もできないという場合は Slack だとこうした方がいいんだよ、というティーチング的な要素をしてあげたり、一方でメンタル的に励ましてあげるような要素もあり。しかし手取り足取りやってはいけないので、本人の口から吐き出してもらいながら内省して掘り下げていく、ということ行います。

また、できていないところを補うだけではなく、反対に「意外と出来ちゃうね」ということがあった場合は、「本当はチャレンジしてないんじゃない?」「本当にみんなの役に立ってると思ってるの?」というようにチャレンジを促すこともあります。

高橋さん ノンプロ研の場合はアウェイでもホーム側でも一人ずつ伴走者がいますので、二人体制で伴走してるというような形になります。

学習者によって感じている負荷や楽さに雲泥の差があるため、人によってはものすごくサポートしないと折れてしまう人もいたり、反対にゆるいサポートでもできる方もいらっしゃったりします。そういう方にはストレッチさせるように課題を与えることもあります。またアウェイを楽しんでいただくために、ノンプロ研のメンバーとコミュニケーションをどんどん取って欲しいので、ペアプロをやってもらったりしますね。

石山先生 ホーム側とアウェイ側に伴走者が一人ずついるのは、とても良いと思います。実際、他の良いプログラムの場合は意識的にはやっていないけれども、実際そのようになっていることがありますね。

――「越境前にマインドセットを整える段階」の前段階、「越境学習」に取り組む気になってもらうために、必要なものがあれば教えてください!今日お話頂いた「自己効力感の4つの要因」の前段階のイメージです。

石山先生 越境学習に入ってから固定観念が剥がれるということはあるのですが、やはり色々インタビューを聞いていると、ある程度自分が興味関心があって進んでいかないと全く学ばなくなってしまう、ということはあると思います。そのため、「自分はどこに興味関心があって、ここに行くのだ」ということを自身で棚卸してもらった方が良いと思います。伴走者がその棚卸を一緒にやれるのが理想的だったりしますね。

行ってみて違ったっていうのがあってもいいと思いますが、少なくとも自身で、「自分はどんな興味関心があり、どんなことやりたいのか」を考える機会を持つ方が良いと思います。

高橋さん そういう意味では、今ノンプロ協会の越境学習サービスは6ヶ月のプランしかないですが、プチ越境学習のような2ヶ月のものもあっても良いかもしれませんね。

――ホームに刺激がたくさんあった場合でも、越境学習のメリットは多くありますか?

石山先生 ホームの中に刺激があること自体はとても良いと思いますし、ホームに刺激があった時には今は越境には行かずに、そのホームの刺激にだけ集中しようという時期があっても僕個人はいいと思います。

無理やり作る必要はないですし、 それは副業もしかり。ただ、人生をもう少し長くスパンで考えた時にずっとホームに刺激があり続ける状態というのは、難しいのかなと思います。 

今はアウェイに行く道は封印はしておくけれども、ある程度長い期間で見た時には冒険でいろんな外を見に行こう、という姿勢も必要なのかなと思います。

越境学習導入の壁を乗り越えるには

――企業が越境学習を取り入れるために、社内の上司に理解してもらう、また説得するときの事例はありますか?

石山先生 これ ROI問題と言いまして、よくあるんですよね。人材育成部門で越境学習をやりたい場合、上に話を通す時に ROI計算して出してと言われるんです。ノンプロ研の場合は Python やプログラミングができるようになりますという具体的なものもあるのですが、越境学習で得られる成果というのはどちらかというと「ノンプロ研らしい自分になれる」という曖昧な成果なのですよね。

この「ノンプロ研らしい自分」というのは、例えば、ノンプロ研に入ったら積極的に質問したり、教えたり共有したり、コミュニティーを活性させると面白いということを学び、それを自身でも実践してみる、「ノンプロ研らしい人になる」ということです。

このROIを出せと言われると、人材育成担当者は挫折してしまうことが多いです。
ただこれにはいくつか手がありまして、会社の経営者の方は修羅場や外のコミュニティで学んだという経験がある方が多かったりするので、言語化できていないけれど、わかっていることがあります。

その経営者の方に越境学習者を紹介しながら、こんなことがあったんですよと話したり飲み会をしたりすると急に支援者になってくれたりとか、ちょっと見に行ってみませんかという話ができたりするんです。数字を出して説得しようとしてもなかなか難しいので。

高橋さん 企業さんに数字を見せるのはとても難しいので、今やれることとしては参加してくださった方々や会社さんの成功事例をどんどんストーリーとして出していき、それを提案材料に使っていただくと良いのではないかと考えています。今まさにそのPR 事例をたくさん作ろうとしているところですね。 

石山先生 こういうアプローチはめっちゃいいと思います。「越境学習入門」の中で一番こだわったのは最後のケーススタディなんです。事例やストーリーを提示して、だから若手がこのように学べるんです、という話をするのが一番スッと入ってくるみたいです。

ノンプロ協会では、越境学習に参加された企業様のインタビューを多数掲載しています。

――「経営者が越境するメリットは理解するが、会社が資金を出してまでやることか?個人でやれば?」と今一つ納得感がない場合のひと押しは何が良いでしょう?

石山先生 これもよくある話で、「越境学習はやりたい人が勝手にやるものだから、あえてお金を出す必要がない」とか「むしろ企業はやらない人をどう動かすかが問題だが、そこにお金をかけるのはもったいない」とか「優秀な人にお金を出したいけれど、そういう人は自分で勝手に越境するので会社ではやる必要がない」というような話があります。

ただ私は企業がやることはとても意義があると思っていまして、まずは越境学習をフルセットでやってみることで、企業の中の”下敷き”(前例)ができますし、そのようなものがあるんだ、ということをメンバーに知ってもらうという効果もあります。
また、企業はリーダーシップ育成にはかなりお金をかけているはずなので、それと同じものだと考えれば良いのです。

企業が越境学習って大事だよ、と打ち出すということは企業文化から見てもとても重要なことだと思っています。ちなみに、「中小企業だと越境学習はできません」というような批判もたくさんいただくのですが、例えば小さくても、ある中小企業だと越境学習手当として一人年間5万円を設けていたりするんです。
むしろ中小企業だからこそ波及効果が高い。会社が意図的に人を仕掛ける効果は絶大だと思います。

高橋さん ヌーラボさんのワーケーション事例も、社内の人達にも満足度が高いと思いますし、社外にアピールするにしても、とっても魅力的に感じられると思います。人材獲得、従業員満足度の観点でとても有効で、こういうところで企業によって差が出てくるかもしれないなと思います。

石山先生 企業によっては「自動的にリーダーになるんだから勝手にやればいいじゃん」という姿勢の企業もあるのですが、やはり意図的にリーダーを作ろうという意思がある企業なのかどうかで差がでてきちゃうのかな、と思いますね。


以上、セミナー「越境学習×学習コミュニティ~小さな越境からはじめるVUCA時代の人材育成~」のイベントレポートをお届けしました。

なお、セミナーの様子はYouTubeにもアップされています。

当日の実況ツイートもまとめられていますので、合わせてご是非ご覧くださいね。

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この記事を書いた人

あやか

ノンプロ研在籍の二児ワーママ。ITベンチャー数社経験し、現在はフリーランス。GAS、Python学習中。趣味は読書です♪