書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その1: 今、実践コミュニティを学ぶ意義とは

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書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その1: 今、実践コミュニティを学ぶ意義とは

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その1: 今、実践コミュニティを学ぶ意義とはです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

書籍「コミュニティ・オブ・プラクティス」

今日は書籍を紹介します。タイトルは「コミュニティ・オブ・プラクティス」です。

じつは発売されたのは2002年12月ということなので、20年以上前の書籍です。

翔泳社のHarvard Business School Pressというシリーズから出ていて、全部で406ページというボリュームです。

実践コミュニティ

このコミュニティ・オブ・プラクティスというのは、どういったものかというと、日本語では実践コミュニティと呼ばれています。

定義は書籍の中で次のようになっています。

あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野における知識や技能を、持続的な相互作用を通じて深めていく人々の集団

コミュニティはコミュニティということなので、人の集まりなんですけれど、あるテーマに関して知識や技能を深めていく、つまり学習するコミュニティということになります。

実は、僕が主宰しているコミュニティ、ノンプロ研も、ノンプログラマーがデジタルスキルを学ぶというテーマで集まっている集団です。

これはまさに実践コミュニティということになります。

本書は、実践コミュニティを、知識を経営に活かすために作り上げて活用しようという提案をするものになっています。

そしてその理論と実践を豊富な事例とともに解説しています。

著者は、エティエンヌ・ウェンガーさん

こちらの書籍の著者は、エティエンヌ・ウェンガーさんです。

実践コミュニティ研究のパイオニアであり、この分野の世界的なリーダーとして活躍されています。

ご本人はコンサルタントとしてあちこちの企業に携わっています。

共著者として、リチャード・マクダーモット、ウィリアム・M・スナイダー、この2人のコンサルタントがいます。

この著書が発売された時点で20年、実践コミュニティの立ち上げや維持に携わってきたということです。

書籍の構成

書籍の構成は全部で3つか4つに分かれる構成になっています。

導入部分

  • 第一章 実践コミュニティについて-今なぜ必要なのか
  • 第二章 実践コミュニティとその構成要素
  • 第三章 実践コミュニティ育成の七原則

このあたりが導入部分になっています。実践コミュニティとは何か、そしてうまく実践コミュニティを立ち上げて運用するための原則についてお伝えしています。

おそらくリスナーの皆さんはコミュニティが何故経営に活きるのかがピンときていない方が多いのではないかと思います。

なのでこの冒頭の三章を読むことで実践コミュニティの知られざる能力というか、凄さが明らかになります。

残念ながら少なくない経営者が人というリソースを人件費を払ってコストをかけて、そしてアウトプットとして生産をする、そんな捉え方をしてしまっていると思うんですけれど、実践コミュニティとそれがどう知識を生み出して共有するのか、そういったメカニズムを学ぶことで人が持つポテンシャルの凄さをまざまざと見せつけられます。

実践コミュニティの発展段階

  • 第四章 発展の初期段階-実践コミュニティの計画と立ち上げ
  • 第五章 発展の成熟段階-実践コミュニティを成長させ、維持する

続く2つの章では、実践コミュニティの発展段階を5つの段階に分けて、それぞれの段階がどういうものか、そしてそれぞれでやるべきこと気をつけるべき点は何かということを語っています。

コミュニティというのは、自然の生き物と同じようなものだと語られていまして、誕生とか成長とか、場合によっては死というサイクルを経験するという話です。

それを人の手でマネジメントするのでなかなか大変なものだと感じますね。

分散型コミュニティは挑戦的な話

そして次の章は以下のようなものです。

  • 第六章 分散型コミュニティという挑戦
  • 第七章 実践コミュニティのマイナス面

2002年の話なので、分散型コミュニティは挑戦的な話だったと思います。インターネットはかろうじてあったにしても今みたいにSNSとかチャット、ましてやオンライン会議などは普及していなかった時代ですから、どうやってグローバルに分散したコミュニティを運営するかというのは興味深い話だなと思うんです。

そして第七章では実践コミュニティで起きうる不調と対策について語られています。

最後のパート

第八章以降は最後のパートになります。

  • 第八章 価値創造の評価と管理
  • 第九章 コミュニティを核とした知識促進活動
  • 第十章 世界の再構築-組織を超えたコミュニティ

この書籍でいうと、実践コミュニティは企業の中に別のコミュニティとして作るというイメージで捉えていますので、組織としていかに実践コミュニティを評価・管理するかとか、コミュニティを軸にいかに知識促進活動をするかということが語られています。

そして第十章ではまとめ的な文章なんですけど、世界の話へと広がっていきます。

実は以前読んでいたものを再度読み返している

こちらの書籍ですが、実は以前読んでいて、最近再度読み返しているところです。

以前読んだのは確か2021年頃だったと思うんですけど、ちょうどDXという言葉がどんどんブームになっていた時期です。

ただやはりDXがなかなか進まない、DXを進めるにはどうしたらいいかというヒントを得たくて手に取った書籍の1つがピーター・センゲ「学習する組織」です。

こちらの書籍も1990年代に出版されてビジネス界に一大ムーブメントを巻き起こした書籍です。

ただ、僕はこちらの書籍を読んで、既存の既にできあがっている日本のコントロール型階層型組織を、この学習する組織に変えていくのは相当長い道のりのように感じたんです。

まず、全員が全員、学習に前向きではないですし、リーダー層にも少なからずアンラーンが苦手な方がいらっしゃるんです。組織構造や仕組みとか文化を変えるには途方もない時間がかかります。

ではどうしたらいいかと考えたときに、こちらの書籍「コミュニティ・オブ・プラクティス」に出会ったんです。

伝統的な組織図はそのままでよいとしている

本書での提案は、伝統的な組織図はそのままでよくて、それとは別に、もうひとつ組織を重ねて作っちゃうよということなんですね。

それが実践コミュニティだということです。

それであれば組織構造やしくみ、これまでの文化を変更する必要がなくて、一から小さく実践コミュニティ作りをはじめられるわけです。

そしてそこに参加するメンバーに関してはビジョンがしっかりしていてエネルギーのあるメンバーだけで構成できます。

DXを推進するためには組織が学習していく必要があるんですけれど、実践コミュニティがかなり使えるアイデアなのではないかと考えたわけです。

しかも、僕が立ち上げて運営してきた学習コミュニティノンプロ研はまさに実践コミュニティそのものだと気づいたんです。

立ち上げから運用まで、学習を加速させるための実践コミュニティの作り方に関しては、僕なりのノウハウがたまっている状態でもありました。

組織への提案は頓挫していた

ただ、その後、ちょっと組織への実践コミュニティの提案については実績を作ることができずに頓挫したままだったんです。

というのも、当時のバズワード「DX」に関しては特に中小企業が何をしたらいいのかピンとこないところもありましたし、実践コミュニティからDXを実現するまでのステップには、ちょっと飛躍があって、しっくりこなかったのはあると思います。

リスキリングというワードが来た

ただ、ここ最近になって、リスキリングというワードがブームになってきました。

僕自身は個人ビジネスパーソン向けとして、デジタルリスキリング入門という書籍を書きました。

世の中を見渡すと、大企業ではリスキリングの導入事例は増えてきている印象がありまして、いくつかは素晴らしい取り組みだと思いますし、多くはまだどうかなというところもあります。

ただ、中小企業に関してはあまり進められていないところが多いんじゃないかと見受けられます。

リスキリングと実践コミュニティについて考えてみたい

リスキリングは個人でも進める必要があるかなと思っていますが、企業として個人をどうサポートできるかを考えたいと次のステップでは思っていまして、その視点で成功事例のいくつかを見ると、社内にコミュニティを作れているんです。

実際にリスキリングとコミュニティはすごく相性がいいというのはノンプロ研の事例からわかっていまして、これを各企業に提案していくことでその動きを加速させていくことができるんじゃないかと考えたわけです。

まずは僕の立場でできることをしていこうということで、再度、組織での実践コミュニティづくりについて考えてみようということでこちらの書籍を手に取りました。

ということで今回コミュニティ・オブ・プラクティスの概要だけを紹介したような形ですけれど、明日以降書籍の中からいくつかトピックをピックアップしてお伝えしていきます。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その1: 今、実践コミュニティを学ぶ意義とは」をお届けしました。

おそらく実践コミュニティという言葉はあまり知られていない言葉なんじゃないかと思います。

一方で実質的な実践コミュニティとして活動している事例は山ほど世の中にあると思っていまして、例えば大企業だと企業内大学とかを持っているところも多いですね。

これもおそらく実践コミュニティとしての機能を果たしている企業もあると思いますし、もっともっと小さいスケールでいうと、ちょっとした部内での勉強会というのも実践コミュニティと言っていいんじゃないかと思います。

なので、今まで我々の営みとして普通にやってきたことではあるんですけれど、この実践コミュニティという分野についてエティエンヌ・ウェンガーさんがしっかり研究されているわけです。

ですからその理論の裏付けを元に、実際のノンプロ研の活動経験を踏まえて成功率の高い実践コミュニティづくりについて紹介していければと思います。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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