シンガポールの全国民リスキリング計画について解説します

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シンガポールの全国民リスキリング計画について解説します

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、「シンガポールの全国民リスキリング計画について解説します」です。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

シンガポールのリスキリング計画

日経新聞の「シンガポール、全国民リスキリング 人口より生産性優先」という記事について解説します。

リスキリングとは何か。新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得するもしくはさせること、と定義されています。

スキルズフィーチャー

この記事はスキルズフィーチャーという、シンガポールの全国民対象のリスキリング計画を紹介する記事で、リスキリングという言葉とともに話題になっていました。

スキルズフィーチャーという制度は、シンガポール政府のリスキリングサポート制度で、シンガポール国民の生涯学習とスキル獲得の支援を目指すものです。

スキルズフィーチャーの公式ウェブサイトでは

シンガポールの国民が個々の潜在能力を、年齢に関係なく、生涯を通じて最大まで伸ばせるよう、機会を提供する国家的運動

と紹介されています。

具体的には25歳以上の男女に1人当たり500シンガポールドル(約39,000円)がスキルズフィーチャー・クレジットとして支給されます。

これを使ってシンガポール国内、もしくは、国外のオンライン学習プラットフォームが提供するコースを受講できるというものです。対象となっているコースは、デジタル技術から経営管理まで2万4千を超えるコースから選べるそうです。

シンガポール政府機関の方の発言によると、資源のないシンガポールにとって人材のリスキリングは、「国ができた時から考えてきたこと」という話があり、シンガポールにとって重要視されてきたトピックなんだなとわかります。

2020年からのアップデート

スキルズフィーチャーは2014年からスタートしているのですが、2020年から一段とアップデートされたと報じられています。

要因としては、コロナ禍により経済成長を支えていた外国人人材がシンガポールを去っていってしまったということがあります。

シンガポールは低い出生率でありながらも、人口の3割を占める外国人人材が非常に優秀で、それにより経済が支えられてきた背景があったんです。

これがコロナ過で経済が悪化して、50代中心のミドル世代がリストラにあってしまったことで、さらにこのスキルズフィーチャーに注目が集まったというわけです。ミドル世代が業界を越えた転職を実現するための手段として、スキルズフィーチャーをたくさん利用するようになったんです。

シンガポール政府は、スキルズフィーチャーの内容をどんなふうにアップデートしたのか。

40~60歳のシンガポール国民に対して、追加のスキルズフィーチャー・クレジットを提供し、さらにペイパル、マイクロソフト、シーメンス、IBMなど、国内外の企業と連携したプログラムを多数追加したんです。

これが功を奏して、2021年に支援を受けた人は66万人。シンガポールの人口は570万人だそうなんですが、66万人というのは生産年齢人口の1/4にあたるということです。生産年齢人口の25%の人たちがこの制度を利用したんですね。

シンガポールと比較した日本

では、日本の状況と比較してみたいと思います。

日本の現状

日本では2008年に人口減少がスタート、IT人材を中心に労働者が不足していく未来は確定しました。日本もシンガポールと同様にコロナ禍に入ったわけなんですが、日本では飲食店中心に補助で切り抜けているという感じですね。

制度上、解雇やリストラはもともと起こりづらいので、コロナきっかけでリスキリングに対する危機感が増したかというと、そこまで感じることはなかったのかなと思います。

ここ最近リスキリングが話題に上がるようになってきて、政府も人への投資を掲げて、「骨太の方針」にリスキリング、成長分野への労働移動、兼業・副業の促進などを盛り込んだという背景があります。

これで日本でも少しずつリスキリングが進んでいくのではないか、という期待感はでてきたかなあと思います。

日本版スキルズフィーチャー

スキルズフィーチャーのプログラムは2点特徴があると思っていて、1つ目はプログラムが全国民が対象という点、2つ目はコースの選択肢が豊富にあるという点です。

全国民が対象なので、使わないと損、やらない人は置いていかれるという力学が働きやすいと感じます。学びはじめる人がでてくることで慣性が働いて、リスキリング習慣が身につく人材が増えてくる、そんな期待もできるかなと思います。

先日のパーソル総合研究所の報告「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」にもあったように、リスキリングの経験がある人はリスキリング習慣も高いので、市場としてのスキルが継続的に底上げされていく力学が働くようになるんじゃないかなと期待しています。

もう1点のコースの選択肢が豊富という点については、日本企業の最近のニュースでいくと、リスキリング対策として動画講座を見られるようにするみたいな内容で、割と特定のコースを提供するという話が多いかなと思います。

オンライン動画をいくつか見たからといって、ITの先端分野で即戦力になる人材になれるかといったら、そこまで簡単な話ではないと思うんです。

なので最初の選択も大事ですが、継続的に学んでいただくようなことを視野に入れてリスキリング対策を考えていく必要がありそうです。

選べるコースが多数あれば、何をどのように学べばよいかとか、自分で考える機会も提供されます。

さらに全国民が対象ということであれば、サンプルが多数発生するため良い事例・悪い事例などさまざまな事例が集まって、検証ができるという利点もあります

この2点を抑えてリスキリング計画を実施すれば、日本でもけっこうハマるのではないかと期待しています。

ただ、リストラの危機感が少なめなので、国からサポートがあっても学ばない層がシンガポール以上にいそうという懸念はあります。

スキルを身に着ける機会を与えて、それをちゃんと評価できる企業が増えてくれば、成長分野への労働移動の促進なども図れるのではないかと思います。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「シンガポールの全国民リスキリング計画について解説します」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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