書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その2 知識と情報の違いは何か

  • ブックマーク
書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その2: 知識と情報の違いは何か

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その2 知識と情報の違いは何かです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

引き続きですね、「コミュニティ・オブ・プラクティス」についてお話をしていきたいなと思っています。今日は2回目です。

おさらい:コミュニティ・オブ・プラクティス

まず、おさらいなんですけれども、コミュニティ・オブ・プラクティス、日本語でいうと実践コミュニティです。これが何かと言いますと、あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団ということになります。

僕が主催しているノンプログラムのためのスキルアップ研究会、通称ノンプロ研は、まさに実践コミュニティです。もしくは会社の中でちょっとした勉強会を定期的に開催されている、そんなことがあるのであれば、それも実践コミュニティと言えるんじゃないかということです。

この実践コミュニティ自体は、ずっと昔から延々と存在をしていました。今は、この時代でいうと、組織に実践コミュニティを意図的に作ることで、そこで生み出されたり共有されたりする知識を経営の武器にしていこうと、こういった発想があるわけなんです。

そして、僕の視点でいうと、この実践コミュニティを作ることで、リスキリング活動が加速して、それを持続させることができるんじゃないか、このように考えているわけなんです。

知識と情報の違い

今日は1章から知識と情報、何が違うのかについて話をしていきたいと思います。

よく知識とか情報とかいう言葉、皆さん使います。この言葉の違い、実際には皆さん説明できますか。本書では、この知識と情報は明確に異なると、このように伝えているわけなんです。

これを、非常に分かりやすい例えで伝えていますので、ちょっと紹介します。

たとえば、あなたの友人から、外科手術に関する本をたくさん読んだから、頭の手術をしてやろうと、このように提案された時にどう答えるかという話で、いくらその友達がすごく信用できる人だったとしても、さすがにいいよいいよ、じゃあよろしくっていうことにはならないですよね。

つまり、書籍に書いてあるものは情報なわけです。ただ、それだけでは、専門家としてその人に、じゃあ仕事をお願いしますと、そういったことにはなりません。

どうすればその専門家として知識、議論を得られるかというと、その学んだことを実践したり活用して、そういった十分な経験を通して、その技能・知識が身についたと認められるわけなんです。

つまり、知識というのは、経験の蓄積です。そして、蓄積されたものが、じゃあそのまま固定化されてるかというと、そういうわけでもなくて、まさに進行中のダイナミックなもので生き続けている。そういったものだと指摘しています。

先ほどの外科手術の例でも、お医者さんが一定の知識を得たとしても、ずっとそのままでいるわけではなくて、ある経験を通して改善すべきところは改善していきます。

もしくは、新しいテクノロジーが生み出されたとすると、それを使って自分のやり方も変えていこうとする。そういったものであるということなんです。つまり、知識というのは、人に紐づいて存在するものであるということになります。

ナレッジ・マネジメント

ところで、ちょっと話が変わるんですが、1990年代にナレッジ・マネジメントっていうアイデアが見出されて、世界中の経営者はこれを経営に生かしていこうとに考えたわけなんです。

つまりどういったことかというと、社員たちが持っている、業務を行う中で得られた、もしくはなされた知識を会社全体でちゃんと共有して生かしていこう。こういった発想になるわけなんです。

せっかく社員の皆さんが毎日活動してますから、そこで生み出された知識を捨ててしまうなんて、確かにもったいない話だなと思います。しかも、どんどん社会は知識労働者が増えていまして、そのパフォーマンスが経営にものすごく影響を与える。そういった時代になってきていたわけです。

ナレッジ・マネジメントの多くの失敗とは

ただし、このナレッジ・マネジメントに関して、多くの企業は失敗をしてしまうわけです。

どういった失敗をしてしまったかというと、この活動の多くをIT部門主導で行ってしまったっていうことなんです。なぜ、それが良くなかったかということなんですが、冒頭の話に関連するところなんです。

知識と情報を混同してしまったという話なんです。つまり、莫大なお金をかけて、データベースに情報を蓄積する。そういったシステムを作ったんですが、そこに蓄積されるものは情報であって、会社に資する知識ではなかったということに気づいたわけなんです。

知識というのは、先ほどお話した通り、静的なスタティックな情報の集まりではなくて、人に紐付いていて、動的でダイナミックで生きてるものなわけです。つまり、簡単にいうと、データベースには保管できないという話なんです。

では、その知識、人に紐づいてる限り、その人にしか持ちえないのか。という問いが出てきます。

その人が会社を辞めたら、その知識はどうなるのか。経営者の皆さんからすると、そこが気になるポイントではあります。

実践コミュニティは知識の生きたレポジトリー

しかし、これを保管する方法があると伝えているわけです。それがまさに実践コミュニティであると本書では伝えています。つまり、実践コミュニティは、知識の生きたレポジトリーの役割を果たします。レポジトリーというのは、貯蔵庫という意味です。

実践コミュニティ、人の集まりに知識が本当に蓄積されるのか。これは、もしかしたら、人によっては不思議な感覚を覚えてしまうかもしれないですが、これは多くは意図的ではないんですけれども、普通に行われていることなんです。

1つの例として、4人チームを組んで家作りをしている大工さんたちを考えてみたいと思います。毎日、予定があります。その予定の仕事が、一通り終わりました。その後、その4人のチームは、30分間、各人が進めたところについて、時には実演などを踏まえながら、振り返りをする。そんな時間を設けていたとします。

おそらく、この活動を何日も続けていたとしたら、チームの中で、1番熟練している人の技術は、そのいくつかは、若手の方々にも移転するんじゃないかと想像できます。一方、別の4人チームの大工さんたちがいたとします。

黙々と、それぞれの各自の仕事をして、それぞれの分担が終わったら、黙って帰っていきます。

こちらのチームでは、その知識とか議論、これの移転があるとは、なかなか想像できないわけです。最初のチームとあとのチーム。どちらが良い仕事ができるチームで、そして、どちらがメンバーの変更があった時に対応できるのか。そういったことを考えると、その答えは明らかなわけなんです。

暗黙知と形式知

これに関連して、もう1つ話をしていきたいと思います。科学者のマイケル・ポランニーという方がいらっしゃるんですが、この方はこういう言葉を残しているんです。

「我々は語れる以上のことを知っている。逆に捉えると、知っているけど語れない部分がある」

こう伝えているんです。

これは何を伝えてるかというと、暗黙知ということを初めに言い出した人が、このマイケル・ポランニーという方です。なので、知ってるけど語れない部分、これを暗黙知と名付けたわけです。それで、知識というのは、形式知と暗黙知が組み合わさったものと言われています。

形式知というのは、言語や習字、図表で表現できる、そういった静的なスタティックなものを言います。一方で、暗黙知というのは、形式知化できないものです。

たとえば、技能でも表現できないところもありますし、その本人が認識していない暗黙的な理解の部分もあったりするわけです。

仕事で得た専門的な知識、これらには、形式知だけということは、まずないわけなんです。暗黙知が、必ず組み合わさっています。

人が持っている知識のうち、形式知化できる部分これに関しては、文書や図表に落とすことができますので、これをコピーすることは簡単にできるわけなんです。

一方で、取り残された暗黙知の部分。これが共有できるのかという話なんです。

実践コミュニティは形式知と暗黙知を保持できる

本書では、相互交流とか学習プロセス、それを通して暗黙知を共有することができると伝えています。つまり、共に人々が活動する実践コミュニティでは、形式知と暗黙知、両方結びつけて共有することができますし、保持することができる。このように伝えているわけなんです。

今でいうと、形式知に関しては、インターネットを通じて、いくらでも伝播させ、手に入れることができます。もちろん、次々と新しいアイデアが生み出されて、次々と有益な書籍が見出されているわけなんですけれども、実際に経営活動として価値を生み出すのは、そういった書籍を学んだり、活用したり、実践したり、そういった経験を通して後に残ったものなわけなんです。

そして、その中には、暗黙知も含まれている。そして、その暗黙知は、簡単に模倣できるものではないんです。

実践コミュニティの知識は企業の強み

人々の交流を通すことで、ようやく共有ができる。そういった特性がありますので、これを創造したり、共有したり、保管できる実践コミュニティのそこで保管されている知識というのは、企業にとって、他社との差別化要因、強みになる部分になるわけなんです。

ということで、コミュニティ・オブ・プラクティス第1章から知識と情報、何が違うのか。そして、知識を生み出し、共有し、保管する実践コミュニティの役割、さらに実践コミュニティが生み出し、保管している暗黙知を含めた知識が、経営にとって非常に価値があるものだということをお話してきました。

明日以降、コミュニティ、オブプラクティスから色々と話ができればと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その2 知識と情報の違いは何か」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

チャンネルのフォロー、コメント、SNSでのシェアなどなど、楽しみにお待ちしております。

では、また。

  • ブックマーク

この記事を書いた人