組織にも個人にも求められる「ダブルループ学習」とは

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組織にも個人にも求められる「ダブルループ学習」とは

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、組織にも個人にも求められる「ダブルループ学習」とはです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

ダブルループ学習とは何か

ダブルループ学習とは何かお伝えしていきます。

1970年代にアメリカの組織行動学者クリス・アージリスによって提唱された学習理論で、既存の枠組みや考え方、前提そのものを問い直すことを含めた学習プロセスになります。

ダブルもあるなら、シングルもあるだろうと思われるかもしれませんがシングルループ学習もありますので、まずはそちらから解説していきます。

シングルループ学習とダブルループ学習

シングルループ学習

まず、過去の経験とか成功体験に基づいて構築された前提があり、それにもとづいて行動を起こすとします。行動の結果が出たら、その結果を見て行動に変化をおこす。そんな学習のことをシングルループ学習と言います。

うまくいっていればそれをぐるぐる回しますし、何かあれば結果を見てその行動を変えます。

例えば、温室で植物を育てる場合、適温が18度というのが決まっていたとします。これが前提ですね。室温が18度以下になったら温度を上げないといけないので、サーモスタットのスイッチを入れます。室温が18度以上になったら温度を下げないといけないので、スイッチを切る。これがシングルループ学習です。

別の例としては、営業部が売上目標が達成できていないとします。

  • 電話をかける回数を増やし、アポの数を増やす。
  • アポからの成約率を上げるために、過去の成功パターンをまとめて活用する。

こんな行動の変化をします。これがシングルループ学習になります。

ダブルループ学習

ダブルループ学習は、何かについての行動をした結果から行動を変えるだけでなく、その前提も同時に見直して必要に応じて変えるということをします。

先ほどの温室の例で言うと、植物の育成が良くなかったとしたら、本当に温度だけの問題なのか?と考えるわけです。土とか肥料とか他の要素も適正なのか検討するわけです。

先ほどの営業部例では、営業は電話でアポをとるだけだったけど、本当に販路はそれだけでよいのか考えるわけです。ネットの活用や、他の企業と提携したりとか、そういった選択肢はないかということを考えていくわけです。

まとめると、特定の前提があります。その前提に基づいて、行動して結果が出ます。そのフィードバックを行動に反映する。そのようなサイクルを反復してまわすループがひとつあります。これがシングルループ学習です。

それとは別に、結果が出たらそのフィードバックが前提にも必要に応じて変化を加えるという別のループもあり、その2つのループがぐるぐる回る、このような学習プロセスをダブルループ学習といいます。

ダブルループ学習的発想

両利きの経営~「知の深化」と「知の探索」

これに関連して両利きの経営という話があります。

ビジネスでいうと、既存領域を深めてそこに関して改善・向上を繰り返すのが「知の深化」と呼ばれて、これはシングルループ学習ともいえます。

ただ、今は変化が激しくて先が見えない時代になってきています。例えばテクノロジーの変化によって業界構図が一気に変わって、デジタルを得意とするIT企業に主役が取って代わられるみたいなことが良く起きているわけです。

このような、デジタル革新による旧来の業界の破壊は、デジタルディスラプションなどと言われていて、NetflixやUberが映像業界やタクシー業界でやってきたことだったりしますし、これからでいうと、テスラなどの新興企業が自動車業界でそういうことを起こすかもしれないと言われています。

また一方で、コロナ禍のような未曽有の出来事がおきて、対面商売が制限されてしまったりとかそんな話もあります。

日本企業はもともと知の深化が得意で、過去の栄光をたっぷり味わってきたのですが、既存領域に凝り固まっているがために、停滞してしまっている側面があります。

そこで必要になってくるのが、既存の枠組みを外して新たな領域の選択肢を模索するような活動、「知の探索」という活動。

これは、既存の枠組みの外から見直すということで、ダブルループ的な学習が求められるわけです。

なので、企業としては、知の深化だけでなく、知の探索の活動ができる機能を持たないとけないという話なんです。

メンタルモデル~固定観念を検証する

ちなみに、前提を疑うという部分なんですが、名著「学習する組織」で、メンタルモデルというワードで言及されている部分を思い出しました。

メンタルモデルというのは「こういうものだ」と染み付いたイメージ、認識や解釈のことを言います。言い換えると固定観念と言ってもいいかもしれません。

書籍の中では、メンタルモデルを浮かび上がらせて検証し、改善する、このようにコントロールすることが、学習する組織の構築に寄与するといっています。その点は、まさにダブルループ学習の機能と一致するんじゃないかなと思うんです。

ただこのメンタルモデルの難しいところは、それが暗黙の存在である可能性があるということです。人の心とか認識の話しなので気づかれづらいんです。気づかなければ検証はできないですね。

もうひとつ、ダブルループ学習を提唱したアージリスは、組織や個人はメンタルモデルを検証させまいとする「習慣的な防御行動」をとると指摘しています。なぜなら、学習をすることによって、自分にとって苦痛や脅威が生じてしまうからということなんです。このメンタルモデルをコントロールするのはそう簡単にはいかない話だと言えるでしょう。

DXにも必要なダブルループ学習の発想

このダブルループ学習という概念と出会ったのは、個人的に大きな意味がありました。

というのも、自分が今やっている領域に強く関わってくるもので、例えばDXをするためには、組織としての前提を見直して、そして新たな可能性を見出す知の探索の活動、つまりダブルループ学習の機能が必須とも言えるわけです。

そして、そのDXにおいて活躍する人材は、越境学習の経験を経た冒険人材があてはまるということが期待されるわけです。

組織レベルでいうとそうなんですが、これは個人レベルでも当てはまります。これまでのシングルループ学習の方向、つまり自分の専門性を高めていくだけでは、この激しい変化の時代に十分に価値のある仕事をし続けることができなくなるんじゃないかと言われています。

今後来る見えない変化に適応できるような新たなスキルを身につけ続けることが求められていて、だからこそ、「リスキリング」などという言葉がバズワード化しているわけです。そして今、日本政府も企業もそこに本腰を入れ始めています。

ただこのリスキリングに取り組むには、これまでの前提を取り払って学ぶ、新たなことを学ばないといけないので、そういった意味で言うとダブルループ学習の発想が求められます。

ということで、組織に対する改革やDX、個人に対するリスキリング、両面でこの理論が使えそうなので、これを有効に使ってみなさんの活動をサポートをしていきたいと思っています。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「組織にも個人にも求められる『ダブルループ学習』とは」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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