もう「リスキリングしなさい」と言わないほうがいいのでは?

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もう「リスキリングしなさい」と言わないほうがいいのでは?

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、もう「リスキリングしなさい」と言わないほうがいいのでは?です。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

リスキリングしろと言わない方が良い?!

今日は、もうリスキリングしろと言わない方がいいんじゃないか、という話をしていきます。

みなさんの中には、タカハシさんどうしたのって思われる方もいらっしゃると思いますが、心配ご無用です。

というのも、僕はリスキリングすること自体には引き続き賛成の立場です。

働くみなさんも幸せに近づきますし、ビジネスにもいい影響があると思っていますので、どんどんみなさんリスキリングしていただければと思っています。

その裏付けとして、第720回の放送大人の学びを遠ざける7つの「ラーニング・バイアス」とはの回でお伝えしている通り、学びをしている人の方が、学びをしてない人よりも働く幸せの実感やワークエンゲージメント、人事評価などの指標が高いという結果が出ています。

実際、僕がやっている活動で、ノンプログラマーのみなさんがプログラミングやITスキルを身につけるのはまさにリスキリングです。

その活動を通して、ノンプログラマーのみなさんが生き生きと楽しく学び、働くことを実現しているという姿も、実際にたくさん見ていますので、リスキリングはぜひみなさんじゃんじゃんやってほしいと思っています。

やれと言われるとやりたくなくなる

では、もうリスキリングしろと言わない方がいいというのはどういうことか、ですよね。

それは、今リスキリングの活動をしていないビジネスパーソンや企業に対して直接的に、「リスキリングしよう、しなさい」と言うのをやめた方がいいのでは、と思っているということです。つまり、伝え方の問題です。

僕の感覚的には、もうリスキリングというキーワード自体に「何かやらないとまずいもの」、といった外圧的なニュアンスが含まれてしまっていると感じるんです。

「しろと言われるとなんかやりたくなくなっちゃう」、そういった心理的な反応のことを心理的リアクタンスなどと言いますが、リスキリングというキーワード自体にそういった抵抗感を感じてしまう人たちも少なくないんじゃないかなと感じています。

なので、僕としては、リスキングしましょうとか、直接的過ぎる働きかけはしないように気を付けているところなんです。

「リスキリングはこれからの生存戦略」有識者会議提言

先日、日経で「リスキリングはこれからの生存戦略」有識者会議提言という記事がありました。

この記事は、日経リスキリングコンソーシアムアドバイザリーボードという有識者会議がありまして、そこが5月に提言をまとめた、その内容を伝えるものだったんです。

この記事の内容を見て、やはりリスキリング進めていくには本当にうまいことをやらないとなと感じました。

以下に提言の要点の一部を抜粋してみます。

経済環境の変化が加速し、「生涯現役」が標準となるなか、リスキリングは、個々の働き手が尊重され、幸せな人生をつかむための、必須の課題である。今いる会社に漫然としがみつくだけでは、望むキャリアも、生活の安定も得られない。生涯を通じて必要なスキルを獲得し、自分自身の可能性を広げ続けることが、これからの時代を生き抜くカギとなる。

リスキリングは、日本の成長を取り戻すために取り得る数少ない選択肢である。主体となる個人、主導する企業に加え、政府、自治体、労組、大学などの幅広いステークホルダーが参加する「国民運動」に発展させ、日本社会を変革しなければならない。

これを読んで、みなさんはどういう風に感じられましたか。

よし、リスキリングやるぞ、ということで、やる気がむくむく湧いてきましたでしょうか。そうは思えなかった方も少なくないんじゃないかと思います。

さらに、こちらの提言なんですが、個人、企業、政府またはステークホルダー間の連携に対して、対象ごとにより具体的な提言も挙げられていたので、個人と企業の提言に関してだけ簡単に紹介していきたいと思います。

個人への提言3項目

まず、個人への提言なんですが、3項目挙げられていました。

  • 「人生100年時代」のキャリア自律
  • 脱・「会社依存」のススメ
  • キャリアチェンジのススメ

この3つになります。

まだビジネスでやれることはある

全体的なメッセージとしては、自律してリスキリングし、会社に依存しないようにしようというメッセージに聞こえます。

現実では、終身雇用性が徐々に崩壊しつつあり、僕自身の場合も、キャリアを社会や会社に預けていたために、ブラック企業に叩き落とされてひどい目にあったという経験もありましたので、キャリアを自分事として考えて自律しようというのは大いに賛成です。

しかし、日本型雇用で今安定している正社員のみなさんは、切羽詰まっていない状況なのであれば、正直、自分事として響かないんじゃないかなと思いますし、実際僕が今まで活動してきた限りで言うと、響かなかったなと感じています。

さらに提言で言うと、今の会社に期待しないようにみたいなニュアンスも結構感じるんですが、今の仕事やビジネスでやれることは全然あるんじゃないかなとも思うわけです。

今ビジネスで相手をしている顧客だったりとか、今一緒に働いている仲間だったりとか、何ひとつ課題を抱えておらず、順風満帆ってことはあまりないんじゃないかなと思います。

その課題を見つけて、解決して貢献する。

そういった基本動作の先にリスキリングという活動があるんじゃないかと思うんです。

たとえば、クライアントがデータの活用方法がよくわからないで困っているとか、仲間がExcel作業でヒーヒー言っているとか、そういった課題があったとしたら、その解決の1つとして新たなスキルを獲得して、それを解決、貢献する、そして喜んでもらって小さな成果を上げる。

そういった基本動作を繰り返していくのであれば、自ずとリスキリングは達成されるんじゃないか。そんな風にも思うわけです。

企業への提言8項目

もう1つ、企業への提言も見ていきましょう。

8つの項目が挙げられていましたので、挙げていきますね。

  • 経営者の責務に
  • 働き手の権利に
  • 「離職恐怖症」の克服
  • 「スキル基準」の人事制度
  • 賃金上昇の起点に
  • 脱・「OJT偏重」
  • 実践機会としての「越境体験」
  • 「使いこなすスキル」の強化

このような8つの項目が挙げられていました。

企業がどのようにリスキリング進めていくかというHowの視点で言うと、そういった項目が挙げられるのかなと思います。

しかし、このような様々な手法を試す前に考えるべき点があるんじゃないかなと感じるんです。

ラーニング・バイアスの問題

それは、720回の放送でお伝えしたラーニング・バイアスの問題です。

リスキリングした方がいいことは頭では分かっています。ただ、無意識化、固定観念の時点で、なかなか学びやリスキリングに火がつかない状況になっているというのを無視できないんじゃないかということです。

たとえば、学びというのは新人がやるものだ、若手がやるものだ、学校でやるものだ、こういったバイアスが根強く残ってしまっているわけです。

また、職場に根強く形成されてしまっている文化としても、たとえばOJT以上の学びを、裏切りだったり暇人だったりと認定するような文化があるとするなら、それらの取り組みはなかなか効果が挙げられないわけです。

社員に学ばせよう、やらせようと燃料を投下する前に、そういった個人に根強く残るバイアスとか職場に残っている文化を解除し、まずは火がつきやすくなるような状況を作らないといけないんじゃないかと思うわけです。

それであれば、例えばトップ自らリスキリングを行って、それをオープンにしていくというのは非常に効果的です。

これは新人バイアスや学校バイアスの解除に良い影響があると思います。

越境体験の本来の効果

提言の中では、越境体験に関して「実践の機会を作るため」とあったんですが、本質的にはそこではないと考えています。

越境体験の最も重要な効果は、価値観を揺さぶるということなんです。越境学習は、古い価値観を捨ててアンラーニングすることにとても効果があると言われています。

これも、立場が上の人であればあるほど効果が高いと言われています。

他にも、個人のバイアスを解除していく、組織の文化を変えていく、そして学び、リスキリングの火がつきやすくするような施策はたくさん考えられるかなと思います。

外からやれと、こうしなさいと燃料を投下する前に、そういったことをよくよく考えていくといいんじゃないかなと思います。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「もうリスキリングしなさいと言わないほうがいいのでは?」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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