書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その4: 実践コミュニティの7つの設計原則

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「コミュニティ・オブ・プラクティス」その4: 実践コミュニティの7つの設計原則

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その4: 実践コミュニティの7つの設計原則です。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

実践コミュニティの設計原則についてじっくり紹介

今日は、「コミュニティ・オブ・プラクティス」第三章から実践コミュニティの設計原則についてお伝えします。

僕が運営しているノンプロ研もコミュニティ・オブ・プラクティス、実践コミュニティでして、これに関してはたくさんお話することができまして、じっくり紹介させていただいています。

実践コミュニティとは何かといいますと、次のようなものです。

あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団

いわゆる学習コミュニティとか、組織内で開催されている勉強会なんかも実践コミュニティということが多いと思います。

この実践コミュニティをどうやって運営していくかという話です。

コミュニティづくりってまちづくりと同じだと思っています。イメージとしては、ちょっと前のゲームなんですが、シムシティというゲームがありましたよね。

市長になって、道路を作ったりとか、公園を作ったり、商業施設を作ったり、それによって街の中の人々の動き・流れが変わるわけです。

さらにそれが上手く回っていると、人々がより集まる場所ができあがったりそこから経済効果が生まれたりとか、そういうことが起きるわけです。

コミュニティもまさに人の集まりなので、人々にどうやって行動を取ってほしいかというところを設計しておかないといけないわけです。

その設計に則って人々は活動したり、しなかったりするわけなので、それをよく観察してより良い活動になるように設計を変えていくことがコミュニティ運営の仕事なのかなと思います。

まさに前回お伝えしたようにOODAループによって観察、情勢判断、意思決定、行動、これによって設計をどんどん変えていくのがすごく有効かなというふうに思います。

その意思決定を助けるべく、本書では7つの原則が紹介されています。なので今日はこの7つの原則について紹介をしていきたいなと思います。

実践コミュニティの7つの設計原則

1. 進化を前提とした設計を行う

まず1つ目の原則です。 「進化を前提とした設計を行う」です。

コミュニティを運営していったら、人数も変わりますし、メンバーが増えることでその研究対象とする範囲が広くなっていく可能性もありますよね。

また、新しいテクノロジーが出てくることで、新たな活動のしかたを実現することができることも有り得るわけです。

なのでそういった変化に対応できるようにしておくというのはけっこう大事なことです。

つまり変更容易性を高めておくということかなと思うんですね。

もちろんコミュニティとして曲げられないことはあると思うんですけれども、そうでない部分に関しては基本的にはやってみようというスタンスでいいと思います。

その際に元に戻せないと困ってしまいますので、やってみて上手くいかなかったら元に戻せるようにしておくということですね。

これを可逆的といいいます。

ノンプロ研の場合は、そのスタンスでやっていまして、かつ基本オンラインのコミュニティなので、メンバーがいくら増えてもオッケーという性質があります。

組織で実践コミュニティを作る場合は、逆の心配もあると思っていまして、組織の社員数が少ないと、作る実践コミュニティのサイズもそこに依存してしまうということがけっこうあるんじゃないかなと思うんですね。

そして、メンバーの入れ替わりが無いと人間関係もマンネリ化してしまいそうなので、そうならないようにいっそうの工夫が必要です。

メンバーは変わらなくてもチャレンジする内容を変えていくとか運営の仕方を変えていくといった工夫が求められるようになると思います。

2. 内部と外部それぞれの視点を入れる

2つめの原則は「内部と外部それぞれの視点を入れる」ということです。

コミュニティの本質的な会話をするには、やはりコミュニティに深くコミットしている視点が必要になりますので、そういった意味で内部からの意見がすごく大事なわけです。

一方で中で活動していると逆に気付かない、灯台下暗しというところがありまして、そこはほかのコミュニティと比べてこうというような外部からの視点があると、より発見しやすかったりするんですね。

ここで活躍するのが2つ以上のコミュニティで活躍しているナレッジブローカーと呼ばれる方々です。2つ以上のコミュニティにコミットして活動しながらも、それぞれを体験していますので、その差分を明確に把握できるわけなんです。

その差分の中で、他方に有益なものがあれば、そこにどんどん取り入れて行けばいいということになります。

実際にノンプロ研ではたとえばSlack、Discord、Notionなどのツールの導入は、他の組織から輸入してきたものが多いんです。

ちょっと独善的なコミュニティだと、他のコミュニティには入らないでほしいといったメッセージを出してしまいがちなんですけれど、それは全く逆で、ほかのコミュニティでもどんどん活躍してきてくださいというスタンスでメンバーと付き合うのがメリットが大きいということがいえるかなと思います。

最近はタカハシもflier book laboというコミュニティに6月から入会して、越境して外部からの視点を取り入れているんです。

同じ学びのコミュニティで共通点も多いんですけれど、一方で新たな発見とか気づきもあって、ノンプロ研にはいくつか採用させていただいています。

なので皆さんが自分の組織でコミュニティを作ろうとするときも、外部のコミュニティにぜひ参加して、そのアイデアを取り入れるのがすごく良いと思います。

3. さまざまなレベルの参加を奨励する

3つめの原則は「さまざまなレベルの参加を奨励する」というものです。

一般的にはメンバーの参加レベルは一様ではなくてばらつきが出るものなんですね。

コミュニティ・オブ・プラクティスでいうと、大きく3つのグループに分かれますということです。

まず「コアグループ」です。まさにコミュニティのコアとして活躍してくれるメンバーですけれど、全体のメンバー数の10~15%といわれています。

ノンプロ研でいうと、20~30人くらいですので、確かにそれくらいかなというかんじはします。

次に「アクティブグループ」です。積極的にコミュニティの活動に参加するメンバーです。メンバー全体の15~20%といわれています。

ノンプロ研でいうと30~40人くらいというかんじです。

そして残りの「周辺メンバー」ということで、滅多に積極的に参加することはなくて、コミュニティの活動を見守っているグループです。これは残りの65~75%になります。

ノンプロ研の比率もこのくらいかなと思っていて、100人くらいのメンバーはなかなか会う機会がないということにはなるんですが、Slackのアクティブ率は70%以上だったことから、周辺メンバーもかなりSlackにはアクセスしていたりするんですね。

つまりROM専として活動している方が多いといえるのかなと思います。

僕としてはもっと参加していただいて、せっかく月々お支払いしていただいているので、どんどん取り返していただきたいなと思うんですけれども、そういった活動のしかたでオッケーということなのであればそれも良しということですね。

ただ、初めて参加するときとか、ほんとに久しぶりに参加するときは、やはり勇気がいるものだったりしますので、そういったときに参加しやすくなるようなイベントづくりとか機会づくりはずっと注力しているテーマだったりします。

ほかのコミュニティとか見ると、けっこうやっちゃってるなというパターンが専門的領域で、いきなりゴリゴリのハードな内容ばかりのイベントに初心者が紛れ込んでしまって、打ちひしがれて帰ってくるようなことがあったりするんですね。

なので、新しい人たちに関してはこちらみたいな、入りやすいイベントを別途用意しておくのがいいんじゃないかと思います。

4. 公と私のそれぞれのコミュニティ空間を作る

次に4つめの原則です。「公と私のそれぞれのコミュニティ空間を作る」というものです。

イベントについてはコミュニティにとってはいわゆる公的な場所になります。それ以外にイベントとイベントの間の私的な時間の活用をいかに作り出すかということが重要だと伝えられています。

ノンプロ研ではここでデジタルツールが活躍していまして、Slack・Discord・Xが私的な時間でそれぞれメンバーが交流する機会を提供しています。

あとは、イベントの後の懇親会も、時にはお酒を飲んだりご飯を食べたりしながら皆でおしゃべりする機会として活用してもらっています。

さらにもうひとつ有効だと思っているのが部活です。部活ごとにチャンネルがありまして、アクティブな部活であれば、部活ごとのイベントも開催されています。そこもどちらかというと私的な空間づくりに寄与してくれていると思います。

よく会社組織でもチャットツールの中で部活チャンネルなどを用意しているところがあると聞いています。そういうものはつながりが増えるきっかけを作るものなので、専門的なコミュニティだからといって、それに限定せずに様々な交流の機会を提供するといいと思います。

5. 価値に焦点を当てる

5つめの原則は「価値に焦点を当てる」というものです。

コミュニティの価値をしっかり明確にして、メンバーにお伝えするというのがまず一つです。

メンバーがそれぞれが、それを発言できるようにするというのがもう一つのポイントになります。

コミュニティの価値って本当に様々なんです。

ノンプロ研の場合は、本来の目的でいうとノンプログラマーがデジタルスキルを学びあうといったところにあるので、独学で学ぶよりも学びやすくなったとか楽しく学べるようになったとかいったところが価値だったりするんですが、実際にメンバーが感じている価値はそれだけではないということです。

たくさんの人とつながれるようになったとか、プレゼンとかアウトプットの機会が得られたとか、他者に貢献できる機会が楽しいとか、副業の機会としてもすごく有効とかいろんな価値があるんです。

僕が運営側として想定している価値はあるので、それをもちろん皆さんにお伝えするんですけれど、皆さんが感じた価値を逆に拾うのもけっこう大事だったりします。

そこでポイントなのは、仕掛けとしてアウトプットの機会を増やすというのが大事だと思います。

様々な機会でプレゼンしてもらったりとか、イベントでXでポストしながら参加してもらったりとか、イベントの最後には必ずリフレクションの時間があって、そこでその日の学びとか気づきを発表してもらったりとか、そのような、メンバーが言語化する機会を増やしていくわけです。

それによってメンバーの皆さんもコミュニティで得た価値を言語化することによって自分で気付く機会にもなりますし、運営側もそれを拾う機会ができるということです。

社内の勉強会とかだと、そういった振り返りとかアウトプットを割とないがしろにしがちじゃないかと思うんですけれど、すごく大事なので、ぜひ皆さんにおすすめしたいです。

6. 親近感と刺激を組み合わせる

6つ目の原則は「親近感と刺激を組み合わせる」というものになります。

やはり、慣れ親しんだメンバーだといつもの定例的なイベントがあると安心感があって心地がいいんですね。

ただ、それだけではなくてコミュニティの活動には目新しさや刺激も必要だということです。

比較的、コミュニティは継続的なパターンを繰り返すことに落ち着くことが多くて、ここは気を付けないといけないポイントです。

なのでお馴染みのイベントと刺激的なイベントを組み合わせるのを意識しないといけません。

ノンプロ研でも定例的なイベントはたくさんあるんです。

そういったイベントというのは、なるべく誰でも運営できるようにマニュアル化していくことを考えています。

そして、安定感を維持しつつ、マニュアル化されていますので、主催するメンバーを入れ替えることで刺激を投入する工夫をしています。

コミュニティ内の講座もそうしていまして、講師とかTAとかは入れ替わる形となっていますので、提供する側も緊張感がいつもありますし、学びが多いというモードをキープできます。

一方でコミュニティの活動として新たな風を投入していくということも大事です。

そこはけっこうタカハシの役目だと思っていまして、新しいところを開拓してはじめるというところを担っていることが多いと思っています。。

ここは理想のイメージがありまして、街の中心地でいつもの祭りがやっているわけです。これはコミュニティの信頼できるコアなメンバーが中心となって活動していて、皆が楽しむ状況です。僕はそのとき何をしているかというと、そこから離れた町外れを開墾しながら、街の遠い明かりと聞こえて来る雰囲気を楽しんでいるというのが僕の心地よいポジションとして考えているところではあります。

開墾できたところで新しい施設が完成したら、お披露目会をやって皆にびっくりしてもらうのが楽しみだったりします。

こういう感覚を味わえるというのがコミュニティ・コーディネーターの一番の醍醐味かなと思うんですけどね。

ぜひ多くの皆さんに体験していただきたいと思いますね。

7. コミュニティのリズムを生み出す

最後の原則は7つめの原則「コミュニティのリズムを生み出す」です。

皆さん忙しいので、放っておくといつもの仕事とか家庭とかそういったものが優先になってしまうんですね。

ただ本当は活動したいのに、いまいち乗り切れないときがあります。そうならないように、コミュニティのリズムも、皆さんの習慣に組み込んでもらうのがすごく大事かなと思ってるんですね。

習慣にさえ組み込んでもらえれば、それが当たり前の活動になりますので、コミュニティでの活動が負担にあまり感じられないという状況が作れるので、お互いにとってすごく良いことだなと思うんですね。

そのために習慣的なイベントを用意しておくことが大事ですね。それによってリズムを生み出します。毎年・毎月・毎週・毎日、こういったスパンで習慣的なイベントを用意するんですね。

たとえば毎日であれば、朝6時から朝もく会というイベントが開催されていて、朝を学習習慣にしたい人はそこに参加しているわけなんですね。

コミュニティとは直接関係無いんですけれど、こちらのVoicyも毎朝8:30に公開していますので、そこでリズムを皆さんが作ってくれれば、毎日聴いていただけるということになりますね。

コミュ二ティとしては、毎週とか毎月スパンのイベントが各種用意されているので、皆さん好みに合うように選んで習慣に組み込んでいただいています。

毎年でいうと、年末にビア・トークというお酒を飲みながらやる発表イベントがあるんですが、これは本当に毎年盛大に開催されていまして、年末の楽しみになっています。

そんなかんじで組織内で実践コミュニティを作る場合も、その成長に応じて様々な定例イベントを作っておくというのがおすすめです。

ただマンネリ化しやすいという問題はありますので、そこはじっくり観察をしながら刺激が薄れてきたなと思ったら何か手を入れる、そういった運営をしたらいいのかなと思います。

設計原則を指針としてOODAループも回そう

ということで実践コミュニティの設計原則を7つお送りしました。

まとめますと、次のようになります。

  1. 進化を前提とした設計を行う
  2. 内部と外部それぞれの視点を入れる
  3. さまざまなレベルの参加を奨励する
  4. 公と私のそれぞれのコミュニティ空間を作る
  5. 価値に焦点を当てる
  6. 親近感と刺激を組み合わせる
  7. コミュニティのリズムを生み出す

これらの原則を指針としながらOODAループを回していただくことで素敵なコミュニティ活動ができると思いますのでぜひ参考にしてください。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「書評「コミュニティ・オブ・プラクティス」その4: 実践コミュニティの7つの設計原則」をお届けしました。

4回目でまだ三章という驚きの進み具合なんですけれど、実践コミュニティとなったら僕も話したいことがほんとにたくさんありまして、こんなかんじになっちゃうんですね。

まだちょっと続きそうなので、ぜひお付き合いいただければうれしく思います。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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