なぜLIXILは4000人もの従業員がアプリ開発できるようになったのか

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なぜLIXILは4000人もの従業員がアプリ開発できるようになったのか

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、なぜLIXILは4000人もの従業員がアプリ開発できるようになったのかです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

なぜLIXILは4000人もの従業員がアプリ開発できるようになったのか

今日はLIXILの強烈なDX事例を紹介します。

どんな事例かというと、従業員約4000人がノーコード開発ツール「Google AppSheet」でアプリ開発ができるようになって、1万7000のアプリを開発したよという事例です。

どのように進めていったか、ものすごく興味があったので今回分析してみました。

大企業のDXが上手く進まない理由

一般的に、大企業の場合は、トップのコミットがあって、DX推進部門があって、外部のDXコンサルと絵図を描いて、トップから落とすのですが、なかなか進まずに苦しむということが多いです。

うまくいかないのは下記の理由があると思います。

  • 現場の変えることへの抵抗感
  • 決裁者・関係者の協力、承認が得られない
  • チーム外・社外とのやり取りに引きずられて変えられない

僕個人としては、実際に導入を進めていく前に、組織全体で腹落ちをするセンスメイキングのステップと、業務フローやプロセスの変更容易性を高めるような組織改革が先に必要だと思っています。

経営メッセージはまず幹部に向けられた

その視点でLIXILの例を見ていきたいと思います。

DXでいうと、プロセスのデジタル化、デジタライゼーションのステップがあります。

業務アプリ開発を今までデジタル部門がしていたものを部門でやるように民主化をするために、ノーコードアプリ開発AppSheetを全員が使えるようにしていくというプロジェクトでした。

まずスタートとして、2021年7月、CEOの瀬戸氏から役員幹部向けの会議で、突然の宿題が発表されました。

LIXILの未来を担うリーダーである皆さんは、デジタルを避けては通れません。なので皆さんには、これからアプリを作ってもらいます

他の記事では2021年4月プロジェクトスタート、2021年7月まで各部門幹部に説明行脚、と書かれたものがあったので、それ以前に根回しはあったかもしれません。

トップからのメッセージは、まず幹部に向けられたんです。

経営幹部による発表会が設定されていた

次のステップとして、50~60人の経営幹部向けにアプリ開発のワークショップを展開しました。

このあと重要なのが、2021年10月前に、宿題を出しておそらく1,2ヶ月後くらいに、経営幹部による開発アプリ発表会が設定されていたんです。

個人的にはこの発表会が超重要だったと思っています。

というのも、学びを人前でアウトプットすることは、大きな効果を上げるので、経営幹部の皆さんの学ぶ意欲も高まるし、確実に習得しないといけないというプレッシャーもかかります。

かつ発表を、現場の方も見られるのであれば、経営幹部がアウトプットをしていることで、自分たちももうやらざるを得ないという状況が作られるんです。

ITが好きな若手をコミュニティ化した

ただ、やはりいきなりのアプリ開発は大変なので、LIXILはもう一手打っているんです。

事前に、各部門からITが好きな若手を集めて、「チャンピオン」と称してコミュニティ化してたんですね。Google AppSheetの集中トレーニングを事前に行っていたのです。

彼らを経営幹部の学習するサポーターとしてつけたわけなんです。

サポーターとしてつけられたチャンピオンたちは、『役員から質問を受けてもいいが、アプリを実際に作るところは一切手伝ってはならぬ』と指示されていましたので、質問されて回答するという関係性でした。

これによって、経営幹部のできたてほやほやのコミュニティと、現場のIT好きな若者によるチャンピオン集団のコミュニティとを用意して、それを接続することになったんです。

上層部と現場とのフラットなつながりができて、距離が近づくという別の大きなメリットも生み出すわけです。

そのやりとりの前提となっているのが、2018年に既に導入していたチャットツール「Workplace」、これはMeta(旧Facebook)が提供するものですが、これが経営陣とチャンピオンたちがフラットに会話するためのインフラとして活躍しました。

AppSheetを全社へ展開した

経営幹部が全員アプリ開発して、全員発表したところで、全社展開を開始するわけなんです。

その後の展開としては、8人から成る「No-Code CoE(Center of Excellence)」と250人のノーコードチャンピオンの体制で全社展開をしました。

CoE(Center of Excellence)は何をするかというと、

  • 標準化、ガイドライン・ルールの策定
  • 開発・技術支援、システム基盤運用
  • ナレッジマネジメント
  • 教育・トレーニング

をします。

目的として、全社のアプリの品質が一定水準以上に保たれ、部門間に重複が起きないように、全体のナレッジやスキルが向上していくように、野良アプリが発生しないようにするということを担うチームです。

実際の部門の展開は、ノーコードチャンピオンが行うという体制です。

これによってAppSheetの全社への展開ができたというわけです。

今回の事例で言うと、トップのコミットの次に、全経営幹部に展開して、彼らに実際に開発、そして発表をさせたことがとても大きなステップだったと思います。

これで全社の腹落ちは、ほぼ強制的になされるように思います。

そうなると、社内でいうと全てAppSheetモードなので、他部署への連携が上手くいかないという事例もほぼなくなるし、簡単に連携はとりやすいわけです。

さらに、現場にチャンピオンがいて、彼らが幹部を教えるということが大きなポイントだと思います。

教えることは2度学ぶことで、自分たちもスキルは整うし、部署への展開はそれに比べたら容易なことが多いだろうし、上下の壁が取り除かれて、社内の風通しもよくなるというメリットが生まれるわけです。

中小企業はどう行動するべきか

これは大企業の例ですが、中小企業であれば、トップさえしっかりしていれば経営幹部への根回しはできるでしょうと。

「業務が忙しくてできない」という言い訳が出てくる可能性があるんですけれど、それは経営者ががんばるべきポイントです。

なぜなら「忙しかったらできない」を許すのであれば、全社員に対してもその言い訳を許すことになります。それは現場もわかりきっていると思います。

その差別をして進める限り、全社員への腹落ちは基本的には起きないだろうと思います。

なので、経営幹部全員がやるということはものすごく強いメッセージです。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「なぜLIXILは4000人もの従業員がアプリ開発できるようになったのか」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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