うかつな社内チャットで退職、そしてテレワーク禁止訴訟へ

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うかつな社内チャットで退職、そしてテレワーク禁止訴訟へ

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、うかつな社内チャットで退職、そしてテレワーク禁止訴訟へです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

うかつな社内チャットで訴訟にまで至ってしまった事件

今日は何日か前のニュースなんですが、日経新聞の記事を紹介します。タイトルは「うかつな社内チャット、愚痴で退職 テレワーク禁止訴訟」です。

タイトルから見ると、うかつな社内チャットで愚痴をしましたよと、それによって訴訟にまで至ってしまったということが読んでとれます。

ダイレクトメッセージで同僚に不満を吐露していた

どんな事件だったかということをもう少し詳しく説明していきます。

この会社は従業員300人ほどの会社です。

ある女性従業員はフルリモートでデザイナー職として働いていました。

ただ、会社への不満・愚痴があったらしく、それを同僚に吐露していたわけです。その方法は社内向けコミュニケーションツールSlackのダイレクトメッセージで、やりとりしている同僚以外は見られないクローズドなチャンネルで愚痴を投稿していました。

その内容としては、「有休消化という概念はこの会社にはないんですかね」「育て方、下手ですよね」といったものでした。

つまり会社の勤務状況とか人材育成に関してのルールや文化にどうやら不満があったというわけです。

チャットには「馬鹿なの」とか人の悪口のようなテキストが含まれていました。

本来Slackのダイレクトメッセージは秘匿性が高い

Slackというコミュニケーションツールは非常に従業員に優しくできていまして、例えばこのダイレクトメッセージという仕組みは会社の管理者であっても簡単に見られるものではありません。

管理者がそれを見たいというときにはいくつか条件がありまして、ひとつはプラスプランという、プランの中で上から2つめに高いもの以上に登録する必要があります。

もうひとつは、なんと、あるメッセージを見たいというときにはSlack社に申請をする必要があって、しかもその承認を得なければならないという段取りを取る必要がありますので、例え管理者であったとしても、ダイレクトメッセージの内容を見るというのは。そうそう簡単なものではないということです。

今回のケースは偶然社長が目にした

しかし今回のケースでいうと、そのメッセージのやり取りが社長の目に触れてしまうということになります。

その理由はどういったことかというと、その愚痴・不満のやり取りをしていた同僚が退職し、パソコンを会社に返却したんです。それでそのメッセージのやり取りをたまたま社長が目にしてしまったということなんです。

会社は従業員にテレワークを禁じた

それでその会社がどうしたかというと、その日の夜、さっそく「管理監督」を理由にテレワークを禁じて、オフィス勤務を命じる通知文が女性従業員に届けることになります。

女性からすると、自宅からオフィスまで、電車で片道1時間半かかるので命令を拒んだということなんです。現実には不可能ではないにせよかなり負担が大きくなるわけです。さらに勤務してから数年間オフィスに勤務したのはわずか2回ですのでオフィス勤務の命令を拒んだのです。

それを受けて会社側は無断欠勤が続いたとして、女性を退職扱いにします。

訴訟の応酬になった

女性側は、それに関して出社命令は無効だと賃金払いを求めて提訴しますが、一方で会社側も在宅期間の勤務時間の報告に虚偽があったとして給料の一部返還を求めて反訴をしました。

理由はどういったものかというと、パソコンの操作記録などをもとに調査をした結果、給料を払いすぎたということで一部返還を求めたのです。

このような会社への不満や愚痴、チャットへの書き込みを元に完全に対立して争うといったことにまで発展してしまったということなんです。

東京地裁は女性の訴えを支持

この争いがどうなったかというと、東京地裁は女性側の訴えを支持する結論を導きました。出社命令は業務上の必要性がなかったとしました。さらに、デザイナーは常に打ち込みをしているわけではなく、スケッチをしたり考えを巡らしたりする時間もあるということなんですね。

それを受けて会社側は控訴するわけなんですが、東京高裁のほうで和解が成立して裁判が終わりました。

どうすればこのような諍いは避けられたか

今回の事件なんですけれど、リスナーのみなさんだったら、会社側、従業員側それぞれに立ってみて、どうすればこのような諍いは避けられたか考えてみていただきたいと思います。

オフィスとテレワークで不満に差があるかどうか

たとえば、「有休消化という概念はこの会社にはないんですかね」「育て方、下手ですよね」こういう不満は、オフィス勤務だったらなかったのか?という問いがあります。

おそらく、こういった不満や愚痴はオフィスだろうと、テレワークだろうと、あっただろうと想像されるわけです。

実際僕もサラリーマン時代の上司がイケてない行動を取った時には、それについて居酒屋さんで愚痴を聞いてもらうということはありましたし、他の人もたくさん愚痴を言っていました。

あとはまさに給湯室やトイレなどで愚痴は言っていただろうと想像されるわけです。

ただテレワークになった時点でそういう場がテキストコミュニケーションになって、それが良くも悪くも記録に残ってしまうということなんですね。

Slackを使っていてダイレクトメッセージがあまり見られない仕組みになっているからといってじゃあ平気で書いていいかというとそれは別の話かなと思います。

多くの日本の会社はハイコンテクストなコミュニケーションが中心

では、テレワークのほうが不満や愚痴が溜まりやすいのか?という話があります。

これはおそらくあるだろうと予想されます。

ここから先は僕の予想なんですが、前提として日本の多くの会社、オフィスでの従来の働き方でいうとハイコンテクストなコミュニケーションが中心だったというのがひとつのポイントとしてあるかなと思います。

つまり統制型コントロール組織であって、しかも上からのメッセージの発し方でいうと目で見て覚えなさいとか、空気を読みなさいとか、従業員の皆さんはそれを察してくださいということです。

会社の雰囲気や上司の行動を見て、察して、行動を起こすという従業員の察する能力にかなり依存したコミュニケーションの状況だったのではないかと想像されるわけです。

会社の空気感はネット回線を通じてなかなか伝わらない

しかし、それがコロナ禍でテレワークをせざるを得なくなったんです。

そうなると会社の空気感はネット回線を通じてなかなか伝わりませんし、上司や同僚の行動を見て学ぶこともできない、つまり雰囲気を察してもらうこともできなくなってしまいました。

そうすると、その分、お互いに言語でメッセージを伝えるしかなくなります。

ただ、今まで言語によるコミュニケーションをやってこなかったので、とくに上の立場の人たちがアクティブなメッセージの言語化、しかも記録に残るテキストコミュニケーションに慣れていないと、コミュニケーション自体が成立しなくなってしまいます。

お互い何を考えているかわからなくなる

そうすると、お互い何を考えているかわからないといった不信感が溜まっていき、今回のような大きな問題になるまでに至ってしまったということです。

今回のケースでも、有休って取れませんかとか、人材育成ってどうなの?という従業員の素朴な疑問をオープンな場で発言できて、議論をするようなコミュニケーションがとれていたのであれば、ここまで大きな問題にはならなかったのだろうと思うんです。

むしろ、そういった問題が小さいうちに、従業員の小さな疑問を拾うことで、カイゼンして会社が前に進むためのヒントとして活用できたかも知れません。

心理的安全性の中でコミュニケーションを取るべき

このような小さなことでも率直に言い合える環境を心理的安全性があると言われるわけですが、これはオフィスだろうがテレワークだろうが当然あったほうがいいわけです。

しかしそういった心理的安全性が無く従業員に空気を察して動いてほしいといったやり方を続けるのであれば、それはなかなかテレワークでは成立しないという話なんです。

なぜなら空気を察することができないからです。

結論としては、テレワークに移行するのであれば空気を察するやり方から言語化するやり方へコミュニケーションのあり方を変えていかないと上手く行かないという話なのかなと思っています。

そして今、コロナ禍が終わってしばらく経っているんですが、多くの会社がオフィス回帰しているのは、言語によるコミュニケーションに移行がしきれなかったからというのがその理由としてあるのではないかと僕は踏んでいます。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「うかつな社内チャットで退職、そしてテレワーク禁止訴訟へ」をお届けしました。

もちろんダイレクトメッセージだからといって愚痴や悪口を書き込むべきではないということは大前提としてあるんですけれど、そういうことはどうしても従業員が言ってしまいたくなるような不信感を会社に持ってしまうというのも問題だと思います。

僕が良く知っていて上手く従業員とコミュニケーションが取れているなという会社はトップからのメッセージ量がハンパないんです。

社内チャットで毎週のようにメッセージを送り、経営会議のビデオも全員が見られるようにする、Voicyの社内報というツールを使って音声でメッセージを届ける、そういったあの手この手で自社の想いとかやり方を理解してもらえるように努力しているんです。

そういったところの努力が欠けている中で、従業員に察してくれとか文句を言ってくれるなというのは、さすがにちょっと従業員の皆さんに期待しすぎなんじゃないかと僕は思います。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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