『ライフピボット』著者・黒田悠介さんに聞く「65歳以上も稼げるキャリアのつくり方」

  • ブックマーク

人生100年時代といわれる今、65歳を超えても安定した収入を得たい。そう考えたとき、私たちは何ができるでしょうか。今回お話を伺ったのは、『ライフピボット』著者の黒田悠介さんです。コミュニティ主宰者、フリーランス研究家として知られる黒田さんに、「1つの正解がない時代の、キャリアの作り方」をテーマにお話を伺いました。
※この記事は、2024年1月24日(水)に「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」(ノンプロ研)内で実施されたイベントの内容をもとに執筆しました。

1つの正解がない時代、どうキャリアを築いていけばいいのか?

ーー私たちの働き方から世界情勢に至るまで、とても変化が激しい時代です。私たちが自分のスキルをどう磨いていったらいいのか、そのために必要なことを教えてください。

基本的には自分のやりたいこと(will)を整理して、できること(can)を増やしながら、社会から求められていること(need)を認識する、という3点がポイントです。とくに、時代の変化にいちばん大きい影響を受けるのは「need」ですね。わかりやすいのは生成AIで、同じ職種の人でも順調に仕事を増やしている人もいれば、生成AIに代替されてすっかり活躍の場を失っている人もいます。

当然、テクノロジーが発達しても、今あるすべての仕事がなくなるわけではありません。生成AIの普及は「水面上昇」のようなもので、水面が上昇したことで水没してしまうスキルと、変わらず生き残れるスキルの両方があります。自分が今持っている強みの中で、どれを磨けば水没せず生き残っていけるのか、考えてみましょう。

かくいう僕自身、キャリアをピボットしていく必要を感じています。例えば研究職やクリエイティブ職などの領域はAIに代替されにくいと思うので、その方向に軌道修正してみようと考えているところです。

『ライフピボット』著者の黒田悠介さん
黒田 悠介さん
2008年東京大学文学部卒業。2社のベンチャー企業を経て11年に起業、12年にスローガン株式会社にジョイン。15年に独立し、フリーランスのディスカッションパートナーに。支援した企業は約100社。17年にフリーランスコミュニティ「FreelanceNow」と、問いでつながるコミュニティ「議論メシ」を立ち上げる。議論メシは300人のメンバーを擁し、月10~20回の議論イベントを開催している。『ライフピボット』(2021年、インプレス)著者。

ーー既存の職業と生成AIの住み分けは、いまだによく議論されています。黒田さんはどう考えていますか?

生成AIは、過去のデータを蓄積し、それを基に予測してアウトプットを出す仕組みです。つまり、AIがつくるものは予測可能性が高く、癖や個性がないということ。例えばニュースや株価を伝える文章に癖は必要ありませんが、語り言葉やエッセイのように個性や持ち味によって読者を惹きつける文章は、AIには書けません。

ビジネスの現場でいえば、書類作成や報告業務は、生成AIに任せられる部分が多いでしょう。すでにAIをフル活用し、空いたリソースで若手社員に現場経験を積ませているという企業もあると聞きます。現場で起きていることを目で見て、身体で感じて、その体験値をベースにAIを使うのが大事。それが抜けていると、机上の空論になったり、AIのアウトプットをすべて受け入れてしまうリスクがあるからです。

ーー先ほどの3点でいうと、「will」と「can」はわかりやすい一方で、「need」を探るのは難しいと感じました。

今世の中に存在しているニーズは、例えばクラウドソーシングのサイトを眺めてみるとわかります。どんなスキルがどんな人たちから求められていて、具体的にどのくらいの価値がついているのか把握できるでしょう。

逆に難しいのは、そのニーズが将来増えていくのか、しぼんでいくのか見極めること。ここには一定の未来予測が必要ですから、ハードルがあって当然です。まずは市場全体を見渡し、何か変化の芽を見つけたらそこに自分を当てはめてみましょう。

例えばインドの人口が増えて日本は減っていくと考えて、日本企業がインドに進出する際のコンサルティングを始めるとか、音声配信が流行ると見込んでポッドキャストのプロデューサーになってみるとか。こうしたニーズの変化を見極めると、時代の波を乗りこなしやすくなりますし、うまくすればその分野で第一人者になれちゃったりします。

30代と50代でどう変わる?キャリアへの向き合い方

ーー年代によって、キャリアへの考え方や向き合い方が変化すると思います。

歳を重ねると、若い人のようにいろんな物事をスピーディーにキャッチアップすることが難しくなります。体力、気力にも衰えが見えてきますが、一方で、若手とは違う戦い方や価値の発見ができるようになると思うんです。

20代は体力もあり無理がきくので、とにかくフットワークを軽くして、経験のバリエーションを増やしておく。30代はその中から、自分の専門性を高めていく。40代になるとオリジナリティが必要になるので、スキルや経験をかけ合わせながら、自分の個性を生み出していく。といっても、特殊技能は必要ありません。他の人よりも自分のほうが苦労なくできること、息を吸うようにできることがあれば、それが強みです。

そして50代はパーソナリティの時期、つまり人格で仕事をしていく時期です。特定のスキルを売る時期は終えて、周りから「あなたが言うならやってみよう」「あなたがいるだけで、プロジェクトがうまく回るような気がする」と認めてもらえるような働き方が理想ですね。まるでお地蔵さんのよう(笑)。まとめると、人材としての価値は「doing」から「being」へと変わっていくのだと考えています。

ーー人間性や周りとの信頼関係も含め、キャリアが総力戦になっていくというイメージでしょうか。

そうですね。人間の知能には2つあって、1つは情報処理能力や直観力に代表される、新しい情報をスピーディーに処理する力です。これは「流動性知能」といって、10代後半から20代前半をピークに、以後は低下していくといわれています。もう1つは長年の経験や学習から獲得する、言語能力や洞察力、理解力など。これらは「結晶性知能」と呼ばれ、年齢を重ねても伸び、かつ安定しています。

40-50代以降は、後者の「結晶性知能」の重要性が高くなっていくでしょう。情報処理や作業の速さよりも、全体をとらえる俯瞰力や洞察の深さ、理解力などに強みを見いだせれば、十分に戦っていけます。

自分の働きぶりを知っている人が、社外に何人いる?

ーー『ライフピボット』を読み、「価値を提供できるスキルセット」「広く多様な人的ネットワーク」「経験によるリアルな自己理解」の3つを蓄積していくことで、キャリアを転換できると学びました。

「3つの蓄積」はどれも重要ですが、貯める時期が違います。スキルセットは比較的若いうちに貯めやすいものです。その後、得たスキルを使って人的ネットワークを広げていき、それと並行して自己理解を深めていくという時系列が一般的でしょうか。

働き方も、スキルを高めてそれを最大限に生かせる場所を探す形から、人的ネットワークを生かす形にだんだんシフトしていくでしょう。例えば50代以降は自己理解に沿って、自分の人生に必要な仕事を見つけ、それに絞って働くのも一手だと思います。

ーー今は、人生100年時代といわれます。30~40代にも、定年後まで継続できるキャリアを探す動きが出てきました。そのためにやっておくべきことはあるでしょうか?

所属先の会社名や肩書き、利害関係がすべて取り払われた定年後は、「それまでの自分の働きぶりを知ってくれている人」の存在がとても重要になります。そういう人が、社外に何人いるか思い浮かべてみてください。「社内にしか思いつかない……」という人も多いと思います。

僕がオススメしているのは「今、退職ブログを書いたとしたら、何人から声がかかるか?」を考えてみることです。もし、誰からも声がかからなそうならちょっとマズい状況ですね。

例えばコミュニティやNPOに入っていれば、そこの仲間から声がかかることも多いはず。30、40代のうちから、勤め先の会社や家庭の中に閉じこもらず、外の世界に居場所を持ちましょう。できれば、そのネットワークで信頼関係を築いておくといいでしょう。単純に世界が広がって楽しいし、きっと未来の自分のためになります。

  • ブックマーク

この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。