プログラミング学習で知った「実践型コミュニティ」の面白さ|ノンプロ研という第三の居場所で得たもの

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桝尾健人

ANAエアポートサービスで、運航支援者として規程の管理やオペレーション関連の調整などを担当している桝尾健人さん。ノンプロ研の越境学習プロジェクトに挑戦した桝尾さんがプログラミングの知識以上に得たものは、「実践型コミュニティのおもしろさ」だったといいます。その真意に迫りました。

本質的なデータ活用を狙い、デジタル人材の育成に着手

ーー越境学習プロジェクトに参加された経緯、決め手となったことについて教えてください。

上司から「社内DXの旗振り役として、ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会(ノンプロ研)の越境学習プロジェクトに参加してみないか?」と声をかけてもらったことです。社内のプラットフォームがGoogle WorkSpaceなので、普段同僚と話す中で何度もGAS(Google Apps Script)を見ていましたし、僕自身も少し学習したことがありました。簡単なコードなら読める状態で、もっと深く学習してみたいと思っていたので、その場で参加を決めました。

ただ、コミュニティに入るのは初めて。ノンプロ研がどういう雰囲気なのか想像がつきませんでした。新卒で入社して10年近く経ってから、新しいコミュニティに踏み出すのは勇気がいります。僕は社内異動も経験していないのでなおさら、期待と不安が半分ずつでしたね。

ーー組織としてもリスキリングが課題だったのでしょうか?

航空業界はコロナで大打撃を受け、組織として生まれ変わらなければならないという危機感がありました。生産性を向上させるという目的のほか、今まで以上にデータを活用して意思決定を進めるなど、社内にデジタル人材を育てようという機運が高まっています。

また人手不足もあり、業務効率化は会社の一大テーマです。例えば、僕のようなバックオフィスはデータ活用が業務の根幹にありますが、せっかく集めたデータを活用しきれていないという課題がありました。その時々で必要なデータを各担当者の肌感覚や経験、勘、ひらめきをベースに取り出すという状態で。業務標準化のためにも、必要なときに必要なデータを誰もがすぐ取り出せる状態にしたいという構想があったんです。

ノンプロ研独自の「ゆるさ、やわらかさ」が居心地よかった

バイクが趣味という桝尾さん。プライべートでは、大型バイク「スーパースポーツ」に乗ってツーリングを楽しんでいるそう。

ーー越境学習プロジェクトに参加する前、どんな準備をしましたか?

コーディネーターとの面談では、そのていねいさに驚きました。僕の目標設定や学習の方向性など、かなり長い時間を割いて会話しながら、数カ月のプロジェクトを過ごす軸をつくっていきました。ノンプロ研の運営側から目標を与えられるのではなく、一緒につくっていくという姿勢や、とにかくフォローが手厚いというのが第一印象でしたね。講座はいろいろ用意されている中で、「GAS初級講座」「GAS中級講座」「はじめてのコミュニティ活用講座」の3つに参加しようと決めました。

ーー講座を受けてみて、どうでしたか?

GASを体系的に学んだことで、原理原則を知ることができ、それまで独学で得ていた細切れの知識がきれいに整理されてとても有意義でした。僕の知識のここは合っていてここは間違っているな、と一つひとつ明らかにしていきました。講座と名前がついていますが、僕は「初級GAS」というコミュニティに参加したという感覚です。問いに対して、模範解答はあっても正解は1つじゃないと教えてもらいました。

衝撃的だったのは、講師から「コードがわからなければChatGPTで調べてもいいですよ」と言われたことです。普通プログラミングの学習といえば、テキストを何度も読み返してトライアンドエラーするものだと思っていたので……。ノンプロ研は、具体的なツールをつくってアウトプットすることに重きが置かれていて、その目的を達成するためならいろいろな手段をとれます。そのゆるさや柔軟さがとても僕にフィットしました。

また、せっかくなら講座の内容以上の成果を得たいと思ったので、書籍の輪読会や定例のイベントごとにも参加しました。無理ない範囲で、気楽に参加できてありがたかったです。

1つのテーマでゆるく広くつながる、コミュニティの面白さ

ーーノンプロ研独自の、コミュニティとしての価値も感じられたということですね。

「プログラミング」という1つのテーマでゆるく広くつながって、社内とはまったく違うメンバー同士でいろんなアイデアや個性に触れあう。その刺激的な体験をさせてもらったのが、いちばんの収穫でした。越境学習の成果を職場に持って帰ってもネガティブな反応ばかりだとか、リスキリングをすると職場で浮いてしまうとか、ざっくばらんな話や悩みごともたくさん聞けて参考になりました。

特定のテーマに関する関心や課題、熱意などを共有して、メンバー同士の交流を通じてスキルや考えを深めていく集団を「実践コミュニティ」といいます。ノンプロ研はまさにこの典型的なものですよね。家庭とも会社とも違う、第三の居場所を持つことの価値を知りました。

ーー会社とは違うコミュニティだからこそ、おおっぴらにできる話もありますね。

講座の回数を重ねていくうちに、プログラミングに限らず、リスキリングやDX、組織づくりなど仲間同士の共通言語が広がっていきます。てっきり、技術的な学習をする場所だと思って入ったノンプロ研でしたが、実際は組織についての考えやリスキリングについてなど、いろんなアイデアがあふれていました。プログラミングを超えて、いつの間にか大量のお土産をもらっていた感覚です。

また、僕は会社員という立場ですが、ノンプロ研には経営者もいて、経営側の視点や組織論を聞く機会もありました。組織規模も事業形態もそれぞれバラバラだからこそ共通項が際立って、「なるほど!」と思わされることが何度もありました。

こうしてみなさんからインプットした考え方やノウハウを僕なりに咀嚼して、自分の頭の中の引き出しに加えていきました。「僕の職場に落とし込んだら、この引き出しとあの引き出しがうまくマッチするかも」とアイデアが広がっていき、すごくワクワクしました!

ーー越境学習を終えられた今、どんな展開を考えていらっしゃいますか?

実践コミュニティを、社内でもやりたいと考えています。業務領域も職場環境も目の前にある課題も、人によりさまざまですが、学び続けて知識をアップグレードしていくことは誰にだって必要なはず。コミュニティのやり方を職場に取り入れれば、新しい学びのかたちをつくれると思うんです。

もちろん、コミュニティはそこにいる人たちが自然につくっていくものですから、ノンプロ研の環境をそっくりそのまま職場に持ち込むのは難しいでしょう。ただ、僕が得た経験を細分化して、ノウハウとして持ち帰って、職場に落とし込むことはできるはず。まずは身近な、日常業務の困りごとを解決するフェーズから始め、種を蒔いていきたいです。

共感力と、学習への熱量が高い仲間たち

ーーノンプロ研で、知識だけでなくいろいろな学びを得られましたね。ノンプロ研にいる仲間たちの特徴として感じたことはありますか?

いちばんは「共感力」です。航空業界が直面しているDXの課題を話したら、みんなに共感してもらえて。業種や職種の違いを超えて悩みをシェアでき、心強かったです。ほかの職場の話も同様で、例えば中小規模の職場では、業務改善のアイデアをすぐに実行に移したり、個人が裁量をもって機動的に働いたりできます。その当事者から話を聞けたのは、ノンプロ研ならではの経験でしたね。

それから「学習への熱量」です。とくにインプット欲とアウトプット欲がともに強く、モチベーションが高い方ばかり。学習に対する積極的な姿勢が、一緒に学ぶ仲間として心地よかったです。

ーー今後は、どうやって学習を続けていきますか?

2023年の夏から越境学習プロジェクトに参加して、集中的にインプットし続けてきたので、ここでいったん咀嚼タイムを設けたいと思います。僕のPCにはGASのパーツがたくさん転がっているので(笑)、それらを客観的に見て、日常業務にどう生かしていくか考えたいですね。僕の職場からの越境学習者も、これから増えていくといいなと思います。

また、DXに向けた具体的な工夫は、今後もどんどん探っていきたいです。例えばGASなら、ライブラリを活用して誰でも簡単に使える環境を整えて、裾野を広げていきたいですね。意思決定をデータドリブンで行えるようになるまでは、正直まだ距離があります。僕のような現場の人間が、学びを継続していくことが大事だと考えています。

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。