人事本部にいながらITやAIに関する勉強会や社内コミュニティの活動が評価され、社内表彰でクラウド推進者に選ばれたazumiさん。「ノンプロ研」(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)での活動がベースとなり、自分でコミュニティ運営をする機会が増えたのだといいます。azumiさんが考える、コミュニティ活動の面白さとは?
居心地がいいから、スキルアップをし終えてもノンプロ研にい続ける
ーーノンプロ研には、どんなきっかけで入会したんですか?
きっかけは、Excelのマクロの言語「VBA(Visual Basic for Applications)」について相談できる相手がほしいと思ったことです。当時は、社内で営業部にいて、日常的にExcelを使っていました。もっと便利に使いたいと思ってVBAを学び始めましたが、完全に独学だったので、わからないことがあったときに相談できる相手が社内にはいなかったんです。
とりあえず「VBA」で検索したところ、タカハシさんのブログ「隣IT」が出てきて。それでノンプロ研の存在を知り、2019年6月に入会しました。いざ入ってみたら、オフラインでの活動がたくさんあって楽しかったです。代々木や神田の会議室で、月に1回の定例会や、2週間に一度の「リアルもくもく会」などが開かれていました。参加者の年齢層も仕事もバラバラだけど、なぜかみんなと波長が合って、すぐハマりましたね。
モチベーションはやっぱり「自分でプログラミングを勉強して、業務で楽をしたい」ということ(笑)。私は人に何か教えるのも好きなので、質問チャンネルでほかの人の質問に回答したり、手を挙げれば講師役をできるシステムもぴったりでした。何かをするたびにみんなが褒めてくれるので、とにかく居心地がよくて、入り浸っていましたね。
ーーノンプロ研で、最初に受けた講座は何でしたか?
Pythonの講座でした。会議室にみんなでパソコンを持ち込んで講座をやっていましたが、会社とはどこか違う独特の雰囲気だったのが印象的です。みんな優しいし、かわいがってもらえました。しがらみのない環境ってすばらしいなと思ったのを覚えています。最初はExcelしかできなかった私でしたが、PythonやVBAもできるようになり、そのうちGAS(Google Apps Script)にも手をつけました。
プログラミング以外のことも充実しています。ノンプロ研には部活もあるので、データアナリティクス部に入ってデータサイエンスをかじってみたり、RPAの仕組みを理解できるようになったり、コーチングという手法の存在を知ったり。ノンプロ研のおかげでずいぶん世界が広がったなと感じます。
ノンプロ研のメンバーは、年齢も職業も住んでいる場所もバラバラです。私のような会社員だけでなく、個人事業主の方や中小企業の経営者の方などもいます。業界も多様なので、仕事の進め方が全然違うんですよね。知らない世界を教えてもらって、新しいことをどんどん知っていける楽しさがありますね。
私は今もノンプロ研に所属していますが、ノンプログラマーが最低限知っておく必要があるようなプログラミングの基本的なスキルは身につけたので、スキルアップの目的は正直薄いです。ノンプロ研のメンバーが参加しているSlackを眺めて面白い情報をキャッチしたり、もくもく会に参加したり、オフラインの集まりに行ったりするのが楽しくて続けています。
文章を書いた経験はなかったけど、同人誌制作にチャレンジ
ーーノンプロ研では、毎年2回開かれる「技術書典」で同人誌を発売するメンバーがいます。azumiさんも2023、24年と、2年連続で同人誌をつくったそうですね。
ノンプロ研入会以前から、技術書典には何度か行っていて、私も同人誌をつくってみたいなと思っていました。2023年には、これまで仕事でやってきたことを1冊にまとめたいと思って企画を立て、初めて同人誌「ExcelでBIツール風」を書きました。
それまで私は、まとまった文章を書く機会があまりなくて。ブログさえ書いたことがありませんでした。企画書はすんなりできたものの、いざ本文を書き始めると「あれも入れたい、これも入れたい」となって、最終的に120ページ超えの大作ができあがりました(笑)。せっかく同人誌をつくるなら、全部伝えたいという使命感に駆られたんですよね。
周りのみなさんはわりと早く書き上げていたのに、私だけ締め切りギリギリまでかかりました。価格はなんと2,000円。同人誌にしてはなかなか攻めた値段ですよね(笑)。今振り返っても、初めてにしてはクオリティの高いものをつくれたと思います。理由があってBIツールを導入できない会社の方にはぜひ読んでいただきたいです!
2024年は、Copilotの同人誌「無課⾦のCopilotで普通のサラリーマンがしごでき⾵になる⽅法」を書きました。Copilotをテーマに選んだのは、社内で推進していて個人的にホットなテーマだったからです。去年の反省を踏まえて、なるべく端的にまとめて、薄くしました(笑)。
同人誌全体の構成から全部自分でつくり、企画書の段階で章立ても決めていたので、1年目よりも手応えがありつつ、苦労は少なかったですね。書きたいものがちゃんと明確になっていれば、意外とすんなり進められるんだなと思いました。
最近は外部の方に情報発信したりプレゼンしたりする活動が多くて、アウトプットすることに慣れてきていたこともあって、すんなり書き終えられました。ChatGPTもかなり精度が上がったので、校正作業にもガンガン使いました。
ターゲットである生成AIにあまり触れたことがない方や、Copilotに触れたことがない方にもリーチすることができて、個人的には大成功です。
過疎っていた社内コミュニティを活性化させた、広報の手腕
ーーノンプロ研で長年活動されているazumiさんですが、社内では「Power Platform活用コミュニティ」を運営されているそうですね。
社内でもおととしから利用が解禁されましたが、力を入れて推進している部署もないし、皆が学習するきっかけもなく、「Power Platform活用コミュニティ」ができたものの、ずっと過疎っていたんです。みんな、興味本位でコミュニティに入ってみたけど、とくに広がりがなかったのだと思います。
せっかくだから活性化させようと思って勝手に一人で運営を始め、まずは広報に力を入れました。本気で戦略を練って集客したら、初回は900名が参加してくれて、イベントは広報が大事だと実感しました。その後もだいたい300〜500名前後、活動が落ち着いた今でも毎回100〜200名で推移しています。
イベントの中身としては、例えば事例共有会や「ハンズオンをやってみる会」を開催しました。ハンズオンでは何かしらのアウトプットを、今から1時間でつくってみましょうと。自分にチャットが届く簡単な自動化フローを作ったり、タイマーアプリを他社の方と一緒に作ったりなどしました。
参加者は950人! Copilotの学習コミュニティを運営
ーーさらに、社外では「なんでもCopilot」というコミュニティを運営されていると伺いました。
社内でCopilotの推進を担当している中で、かつてExcelで感じたのと同じ「誰にも相談できない」状態に陥りました。推進チームの仲間はいても、他社がどう活用しているのか、どんな効果が出ているのかが見えない状況で。もっと外に出て、新しい情報を得たいと思うようになりました。
そこで立ち上げたのが、Copilotについて学び合うオンラインコミュニティ「なんでもCopilot」です。これまで参加者は950人以上いて、隔週でCopilotを学べるあらゆるイベントを開催しています。最初は私ともう一人で始めたコミュニティでしたが、今では4名で運営しています。たとえば「使ってみた」事例の発表や、新作発表時の情報共有をやってきました。
それから、Microsoftでは製品やサービスに詳しい有識者たちを「Microsoft MVP (Most Valuable Professional)」として認定する制度があるので、各分野のMVPに語ってもらっています。登壇してくださる皆さんのフットワークの軽さと知識量にいつも圧倒されています。ありがたいことに、“Microsoft大好き界隈”みたいな方々に声をかけると参加してくれるんです。
せっかくなので、ぜひみんなに参加してもらいたいと思って、会社でも周知しました。業務外で、平日の夜にわざわざオンラインでコミュニティに参加する人はだいぶ限られていますが、徐々に増えてきている状況です。
驚いたのは、こういう活動を、Microsoft社の方がちゃんと見てくれていることです。先日、Copilotユーザーとして、本国の開発者の方とディスカッションする機会をいただきました。日本のユーザー目線からリアルな声を伝えることができて、すごく貴重な経験でした。
ノンプロ研に浸かって、人との関わり方がガラッと変わった
ーーコミュニティに参加しながら、自分でも運営しているパワフルなazumiさん。運営していて大変だったことはありますか?
大変さや苦労を感じたことは、実はとくにないんです。全部が順調に進んでいて。やっぱり私は、人と関わるのが楽しいんですよね。ずっと会社にいて、同じメンバーとばかり話しているよりも、他部署の方や外に目を向けていろんな人と出会うのが楽しいです。
でも、振り返ると、もともとはそういうタイプじゃなかったんです(笑)。人前で緊張せずにしゃべれるようになったのはごく最近のこと。ノンプロ研では、本来だったら仕事で関わることのない人たちと出会えるし、自分の意見を言ったり成果を発表したりする機会が多くあります。そういう環境に5年も浸かると、性格が変わりますね。
昔営業部門にいたとき、「ちょっとデータ分析をやってみようかな」と思えたのも、その後人事部門に異動したいと思ったのも、コミュニティ活動をやってみようと思ったのも、実は全部ノンプロ研のおかげです。プログラミングの学習だけじゃなく、私の人生や性格にも、かなり大きな影響を受けています。