みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。
こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!
今回のテーマは、定年制の廃止はなぜ進まないのかを考えるです。
なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!
では、よろしくお願いいたします!
定年制を考える
日本では当たり前の習慣になっている定年制ですが、世界の視点で言うと、実は特殊な制度みたいなんです。
日本では、労働力がどんどん減っていくと予測されてまして、それで言うと、定年制の廃止は良い打ち手のように見えるわけです。
今日は、この定年制について一緒に考えていきたいと思っています。まずはニュースを紹介します。
日経記事「日本に定年制廃止を提言OECD、働き手の確保を促す」
日経の記事なんですが、そのタイトルは「日本に定年制廃止を提言OECD、働き手の確保を促す」です。
経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。
記事の導入部分をには、このように書いてあります。
このOECDという機関なんですが、経済協力開発機構ということで、ヨーロッパ諸国を中心に日米を含め38カ国の先進国が加盟している国際機関です。
経済的な協力と政策調整を促進することを目的としていると言われています。
で、そのOECDが、2年に1度、日本に対して経済審査をしてくれて、その報告書を作ってくれたという話なんです。
OECDからの報告書で定年制の廃止を提言
報告書には、マクロ経済とか脱炭素とか、いくつかの項目があるですが、その1つとして、労働力不足、働き手の確保が見られていて、今回の日経の記事はその部分をフォーカスした記事となっています。
この記事の内容に沿って、定年制に関して、色々と考えていきたいと思います。
まず、日本の就業者数なんですが、2023年で言うと、外国人も含めて6600万人程度と言われています。
それが、だいぶあとの話にはなるんですが2100年には、なんと3200万人ということで、もう半減してしまうと予測されているんです。
それに対して、今回のOECDの提案、改革案を実現すれば、高齢者とか女性、外国人の就労底上げが実現できて4100万人の働き手を確保できると見込む、このように伝えられています。
その高齢者向けの具体策として1つ挙げられていたのが、定年制の廃止ということになります。
この定年制なんですが、OECDの加盟国38か国のうち、60歳での定年を企業に容認しているのは、なんと日本と韓国だけだそうなんです。
米国や欧州の一部では、むしろ、定年制を設けることを年齢差別とみなしていて認められていないわけです。
日本型雇用と密接に関わる定年制
日本における定年制の普及状況で言うと、2022年の厚生労働省の調査によると、94%の日本企業が定年を設けているということなんです。
政府は65歳までの雇用確保を義務付けていて、2021年度からは70歳までの就業機会の提供を努力義務にしています。
ここまでわかるように、世界から見るとこの定年制を導入していることはかなり特殊な状況ではあるんですが、日本での普及で言うと94%ということで、それがかなり当たり前の状態になっているといえます。
定年制という単独の制度だけ見るとそういう見方になるんですが、やはりここは、日本型雇用と呼ばれる制度、慣習と大きく密接に関わっています。一括採用、年功序列、終身雇用と定年制がセットになっているというです。
つまり、一括採用で働き手を囲い込みしたい。その代わりに、暗黙の長期雇用を約束しているんです。
そうなると、年功序列と終身雇用がセットになってくるわけですが、そのままだと永遠に皆さん働き続けてしまいますので、それを交代をさせる必要があります。
その世代交代をするタイミングとして定年制が用意されているということなんです。
定年制廃止を考える
とはいえ、OECDが指摘する通りに、今後の日本では労働人口はどんどん減っていきますので、定年制で辞めさせてしまうのはすごくもったいないという風にも見えます。
OECDとしては、その定年制があることで働き続ける意欲が失われてしまっている、このようにも指摘しています。
さらに、今で言うと、人生100年時代と言われていますから、60歳や65歳で定年退職した後の収入だったり、その人生をいかに満足に過ごしていくかを考えると、働く機会というのはシニアにとって非常に重要なわけです。
実際、パーソル総合研究所の2021年の調査では、70歳以上まで働き続けたいと希望する60代従業員は4割以上いるそうです。かなり皆さん就労意欲があるということがわかるわけです。
そう考えると、定年制廃止するというのはどんどんやったらいいんじゃないか、そんな風にも見えるんですが、実際のところ定年制廃止がどこまで進んでいるのか、ちょっと見ていきたいと思います。
高年齢者雇用状況等報告~定年制の廃止企業は少数
令和4年の高年齢者雇用状況等報告によると、調査の対象になった23万5000社のうち、定年制を廃止したのは9,248社で、全体で3.9%だったそうです。
内訳で言うと、中小企業では4.2%、大企業ではなんと、0.6%にとどまっているそうです。
定年制廃止のメリット・デメリット
ではなぜ定年制廃止が進まないのか、メリット、デメリットの観点で見ていきたいと思います。
定年制廃止のメリット
企業にとってもかなりはっきりとしたメリットがあると言えるんじゃないかと思います。
まず、業務遂行を維持することができるということです。
定年退職をしてしまうと、その方の仕事を別の方に回す必要があるんですが、その方が継続して雇用されているのであれば、それを止める必要はないということです。
さらに、定年して辞める方がいる代わりに新しい方を採用しなきゃいけないわけです。その採用コストを削減することができるということも1つ挙げられます。
また、厚生労働省からの65歳超雇用推進助成金というのがありまして、高齢者の雇用を継続することによって様々な助成を受けることができます。
定年制廃止のデメリット
では一方で、デメリットの方を見ていきたいと思います。
まず、人件費が増えるというのがありますね。
年功序列を採用している場合に起きる話なんですが、定年を上げてしまうと、それだけ高額な給与を支払わなきゃいけない期間が伸びてしまいます。その人件費が重くのしかかってしまうというのはあるということです。
別のデメリットとしては、社員の体力や状況に合わせた業務調整が必要になる可能性が高くなるということです。
もう1つは、組織の硬直化です。
ただ、これらのデメリットに関して言うと、マネージメントや配置転換、もしくは制度の変更などでうまく対処できそうな気がします。
定年制には別の目的もある
つまり、定年制の廃止が進まないのは、もう1つ裏の目的というか、そういったものがあるように見受けられるんです。それは、辞めさせたい人を綺麗に辞めさせられるということです。終身雇用、年功序列の罪の部分といえると思います。
ちゃんと働いてくれるシニアの従業員はもちろんいるんですが、残念ながらそうではなく、高給ながらもお荷物になってしまっているシニア従業員もいるわけです。
定年というのは、そもそも任意で企業ごとに定めるもので、法律上定める必要がありません。ただ、定年を廃止するのであれば、その従業員との契約は期間の定めのない労働契約になるわけです。
さらに日本の労働法で言うと、解雇はしづらいような仕組みになっていますので、そういった高給ながらもお荷物になっている従業員をなんとかする方法がなくなってしまうんです。
そうなると、定年制の廃止に関しはふんぎりがつかない、というのが実際のところなんじゃないかなと思います。
特に大企業は、やはり従業員数も多いですしこういった側面が色濃く出やすいので、定年制廃止の比率が非常に少ないというのは、ここに現れているのかなと思います。
定年制の廃止は簡単ではない
ということで定年制に関して言うと、数字だけ見た限りの労働力をなんとかしようと、世界の常識からするとどんどん進めたらいいと思いがちなんですが、そんなに簡単な話ではないと言えるんじゃないかと思います。
まず1つ言えることは、中小企業に関しては小回りもききやすいですし、個々の従業員ごとに、その能力とか特性を見極めやすいというところがあります。
特に労働力不足に困りそうな業界、会社に関して言うと、もっと積極的に議論して定年制の廃止を導入していってもいいんじゃないかなと思います。
一方で従業員の立場からすると、定年制がすぐに廃止されるといった期待はなかなかできなそうな雰囲気なので、自分のキャリア、特に定年前と定年後は変化が激しそうなポイントですので、そこを見据えてしっかり準備しておくのがいいんじゃないかなと思います。
参考図書「定年前と定年後の働き方」
これに関しては、法政大学大学院の石山 恒貴先生の著書「定年前と定年後の働き方」がものすごく参考になるんじゃないかなと思います。
これについては第457回の放送から何回かにわたって話をしていますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
457回 書評「定年前と定年後の働き方」その1 エイジズムの罠
458回 書評「定年前と定年後の働き方」その2: シニアの幸福度と仕事への熱意
459回 書評「定年前と定年後の働き方」その3: ジョブ・クラフティングとは
460回 書評「定年前と定年後の働き方」その4 モザイク型就労という働き方
今から始めても遅くないことはたくさんあるので、小さな一歩からでいいかなと思いますので、ぜひ、未来を見据えた準備をしておくといいんじゃないかなと思います。
まとめ
ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「定年制の廃止はなぜ進まないのかを考える」をお届けしました。
タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。
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では、また。