「幸せな食卓で未来を明るくする」自然派ワインのインポーター・藤木潤さんがプログラミングで掴んだ手応え

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自然派ワインのインポーター・藤木潤さん

有機栽培のぶどうから造られた「自然派ワイン」のインポーター・藤木潤さん。必ず造り手と関係性を築き、ワインが生まれる背景までを飲み手に伝えることを使命としています。2年ほど前から、ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)のメンバーとしてプログラミングを学び、業務効率化を進めてきました。最近では「毎日欠かさず音声配信」という新たな挑戦も! その手応えのほどを聞きました。

コアな仕事に多くのリソースを割ける環境を作りたい

――藤木さんは、どんなワインを扱っているんですか?

フランスの自然派ワインや、スイスのシードル(りんご酒)です。必ず造り手のもとを訪れて、関係性を築いてから輸入するのが特徴です。ワインの味わいに加えて、「どんな人がどこでどんなことを考えながら造ったワインか」も含めて、日本の飲み手の方々に伝えるのがポリシー。それによって、ワインをもっと味わい深く楽しんでもらえると思うんです。

また私の妻が、日本全国から仕入れた無農薬・無肥料の野菜を扱う事業をしています。似た部分が多いので、二人三脚で経営している状況です。

――ワインを届けるだけではなく、「伝える」ことが重要なんですね。藤木さんは、なぜプログラミングに興味を持ったのでしょうか?

以前は10年ほどワインの輸入会社に勤めていましたが、その頃から、事務作業を工夫して効率的にこなすことに興味があったんです。僕にとっていちばん大事な仕事は、造り手の思いや背景を飲み手に伝えること。ここに多くのリソースをかけるために、ルーティンワークは効率化したいと考えていました。

とくに、3年半ほど前に独立して「be a good friend」を立ち上げてからは、事務仕事の量が激増。僕はとにかく忘れっぽい性格で、定期的に発生する仕事が大の苦手なんです(笑)。経費処理や伝票の作成、データ入力などの事務作業をいかに効率よく処理するかが、仕事のクオリティを上げるための肝だと確信するようになりました。

そして、それを実現するための1つの策として、Google スプレッドシートやExcelを有効活用しようと思いたちました。その流れでプログラミングに興味を持つようになったんです。

情報発信を長く続けている高橋さんに、誠実さを感じた

自然派ワインのインポーター・藤木潤さん
海を越えてワインの造り手に会いに行くのが、関係性をつくる第一歩。

――プログラミングの勉強はどうやって始めたのでしょうか?

書籍を買って読んだり、オンラインの無料トレーニングをやったりしましたが、どれもあまり身につかずじまいで……。そんな2020年4月ごろ、Twitterを見ていたら、高橋さんが『Google Apps Script完全入門』の出版に向けてクラウドファンディングをしているのを見かけました。

調べると、高橋さんのブログ『いつも隣にITのお仕事』(『隣IT』)が出てきて。1つのテーマで、情報発信を長く続けられている点に誠実さを感じました。僕もワインや造り手について「伝える」ことを仕事の一部にしてきましたので、発信し続けることの難しさはよくわかります。高橋さんが主催しているコミュニティがあるから、ちょっと覗いてみよう! と思ったのが、ノンプロ研に入ったきっかけです。

――いざ入ってみて、どうでしたか?

当時はSlackでのやりとりを見ているだけでしたが、みなさんのコミュニケーション量と学習意欲の高さに圧倒されました。こういう方々がいる限り日本の未来は明るいなと、本気で思わされましたよ(笑)。

最初に受けたのは、GASの初級講座です。簡単なツールでも自力で作れると単純にうれしくて。勉強したことで日常業務が少し楽になるという成功体験を積み重ねるにつれ、加速度的にやりがいが増していきました。教わった内容の100%を身につけられたわけではありませんが、講座についていくことには苦労しませんでした。

周りとの仲間意識が強まり、今では教える立場にも

自然派ワインのインポーター・藤木潤さん

――仲間と一緒に学ぶ感覚はありましたか?

GAS中級講座では、仲間とのつながりを強く感じました。GAS初級講座を受けていた仲間とほぼ同じでメンバーだったこともあり、仲間意識が生まれたのだと思います。「みんながいるから頑張れる!」というモチベーションは強いものだと改めて感じました。これこそ、コミュニティの価値ですね。

――GAS以外の講座も受けましたか?

もっと広い範囲でプログラミングを扱えるようになりたいという思いで「Python講座」と、技術書の執筆をゴールとする「技術ライティング講座」を受けました。

そして2021年秋にGASとfreee APIの連携講座を受けてから、freeeとGoogle スプレッドシートをつなげて、手作業を一部自動化できるようになりました。これで、驚くほど仕事が楽になりましたね。講座修了後、freeeのほかにもいろいろなAPIをGASと連携できるようになり、ぐっと生産性が上がりました。

この講座は僕の転機でもあって。僕が体感したこの便利さをノンプロ研のみなさんに伝え、API連携のメリットを感じてほしい! そうしてノンプロ研に貢献したい! という思いで、TA(Teaching Assistant)を経て、講師も担当させていただきました。

――教えることに戸惑いはありませんでしたか?

プロフェッショナルではない分野で、誰かにものを教える責務に対して、最初はかなり緊張しました。僕は教えるプロでもプログラミングのプロでもありませんが、講師ですから当然、テーマについて誰よりも深く理解していないといけません。

僕なりに工夫した点としては、単に技術を教えるだけじゃなく、受講生1人ひとりに対して「どうすれば興味を持ち続けてもらえるか、モチベーションを維持しながら進んでもらえるか、そのためにどう支援すべきか」を日々考えることでした。最適な方法は、受講生によって違いますから。今振り返っても、貴重な経験をさせてもらったと思います。

「タスクを覚えておく」という義務から開放された

自然派ワインのインポーター・藤木潤さん

――数々の講座で成果を得られた藤木さん。日常業務で変わったことはありますか?

「タスクを覚えておく」という義務から開放されました! 例えばお客様から注文メールをいただくと、まずは返信した後、在庫確認、商品の手配、出荷連絡、納品書の送付、と数珠つなぎでタスクが生まれます。プログラミングを使えば、これらにかかる手間が減る上、対応するべきタイミングにリマインドしてもらえます。タスクを覚えておく必要がなくなる分、ほかの仕事に没頭できるので、業務効率化につながっています。

また、妻が行っている野菜販売の事業でも多数の事務作業が発生するので、そこにプログラミングを活用しています。例えば、お客様からのご連絡をSlackに自動転送するツールを作って、確認漏れを防いでいます。

――今後は、どんなことにチャレンジしますか?

ローコードツールやGASを使って、自分自身の業務内容に特化したツールを作りたいです。例えばワインの在庫管理サービスは、まだそれほど多くありません。ニッチな分野ですから、工夫の余地が残されていると思います!

ノンプロ研の仲間と一緒に、音声配信にチャレンジ!

自然派ワインのインポーター・藤木潤さん
造り手の思いやストーリーがわかると、ワインの味わいがさらに深くなります。

――新しい挑戦として、Podcastで音声配信もスタートされたそうですね。

これまでテキストベースでの情報発信をたくさん行ってきて、「不特定多数の方にまとまった文章を読んでもらうこと」のハードルの高さをつくづく感じていました。僕は文章を書くのも読むのも好きなので苦になりませんが……みんな忙しい中で、目を止めてもらうのはかなり難しい。

でも音声配信を使えば、聞き手の手と目が埋まっている状況でも、耳から情報を届けられる。これでもっと多くの方に伝えられる! と気づき、音声配信への挑戦を決めたんです。そういえば僕自身、オーディオブックを聞いて情報を得てきた体験があるなと。

挑戦してみようかとぼんやり考え始めた頃、高橋さんから「やるなら、毎日配信するべき!」とアドバイスをもらいました。でも、僕は習慣化して長く続けていく自信がなかったので(笑)、ペースメーカーとして仲間を巻き込み、一緒に始めることにしたんです。

――毎日いろんな切り口から、ワインについて語られていますね。

とりあえず2〜3週間やってみたら、意外と習慣化できました。僕は、ワインや食の話は無限にできますので。1回の配信は10分程度を目処にしています。これくらいの時間でも、しゃべった内容を文字に起こすと7000文字程度になり、結構なボリュームですよね。

ワインの世界は、なぜか敷居が高い、かっこつけた世界だと誤解されがちです。僕の配信によって、ワインはカジュアルに楽しめる身近なものなんだと、多くの人に知ってもらえたらと思います。

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。