人手不足の保育業界でどうやって保育士の数を2倍にしたのか

  • ブックマーク
人手不足の保育業界でどうやって保育士の数を2倍にしたのか

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、人手不足の保育業界でどうやって保育士の数を2倍にしたのかです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

人手不足の保育業界でどうやって保育士の数を2倍にしたのか

今日は、東京都杉並区で認可保育園6園を運営する社会福祉法人風の森「Picoナーサリ保育園」の事例を紹介します。

こちら、DX事例というよりは、どちらかというと働き方改革事例といったほうがよいのですが、組織変革として学びが多いのでご紹介します。

保育業界が抱える問題

保育業界でいうと、人材に関しては特殊な課題が多いんです。

  • 子ども達から目を離せない、ずっと気を張って過ごす仕事、休憩が取りづらい
  • その場にいることが原則、柔軟性をもたせづらいない
  • 「女性が多い職場」妊娠や出産というライフイベントが多い
  • 連絡帳、午睡チェック、行事記録などありとあらゆる書類提出が求められる事務仕事が膨大
  • 保育業界は賃金が安いという問題

なので、保育士登録をしていながら働いていない“潜在保育士”といわれる人が、資格保持者全体の3分の2もいるんです。

保育士できる人はいっぱいいるんだけど、あまりなりたくない人が多いということで、人材不足に陥りやすい業界です。

どのようにして改革・改善をしていったかということを見ていきます。

何度か放送でお伝えしている通り、DXには

  • 組織全体で腹落ちをしてもらうセンスメイキング
  • 変更容易性を高める組織改革

のステップが改革前に必要なのではないかと考えています。

その視点で、「Picoナーサリ保育園」の事例を見ていきます。

待機児童の問題を受けて7年前から統括の野上ミキさんが保育園運営を2015年に開始しました。

2園開いて、夫の巌さんが外資系IT企業から経営に参画しました。

どのようにして進めたかというと大きく2つあって、人数を増やしたのと、IT化を進めました。

保育士の人数を増やした

人数は、保育士の人数を国基準の1.5倍まで引き上げて、60分の休憩がとれるようになり、残業をしなくて済むようになりました。

国の基準は案外低くて、子どもの安全がなんとか守られるというレベルのもので、保育士が残業したり、仕事を持ち帰ったり、休憩を十分に取らないことで成り立つ配置基準となっています。

IT化を進めた

IT化についても並行して行っていたんですが、手書きによる事務作業をPC、タブレット、スマホで入力するように変えました。2016年頃から、連絡帳アプリを導入しました。

さらに、どうしても保育士さん達のITのリテラシーを一度に上げるのは難しいので、専門の事務職員を配置して、難しい作業についてはシフトしました。それによって皆さんの働き方が良くなったわけです。

変更する場合には、どうしても抵抗意見がありました。たとえば、

  • 休憩を入れずに自分のペースで仕事をしたい
  • じっくり時間をかけて、クオリティーの高いものを作りたい

その点に関してはきちんと話し合いを行い、「持続可能な働き方をしてもらうには、決められた勤務時間内に仕事を終えるカルチャーを作らないといけない、なぜなら子育てや家事、介護で早く帰らなければならない職員が出てくるから」といったことを説明して改革を進めていきました。

給与を十分に魅力的にする

保育士の人数を引き上げたのは、先生同士の話し合いの時間を増やすためで、国基準の2倍まで引き上げました。

人件費についてはどうしているのかといいますと、

  • ICT化で事務作業のコストを圧縮
  • 自治体の補助金を活用
  • プラスアルファで事業をやっていくことと、それによるさらなる補助金

さらに賃金も他業界に負けない十分に魅力的な給料になっています。

新卒でいえば、月給24万円+家賃補助8万2000円(東京)+ボーナス3ヶ月分を出しています。他の業界の新卒に全く負けない魅力的な金額です。

これによって、2022年の採用倍率は、新卒が7.4倍という実績につながっています。

ライフイベントの産休・育休後の復職率は2年連続100%となっています。

このように皆さんの働き方を改革して、持続的に良いサービスを提供しています。

全体として、進め方としては、働き方改革とICT導入を並行して進めてきたわけです。

重要なのは職員の働き方を持続的な視点で良くしていき、それによって子どもたちへのサービスが良くなることを本質的に追い求めています。その一点が徹底しています。

まず、その方向性に抵抗する理由があまりないんです。ここがセンスメイキング、腹落ちに効いていたのではと思います。

組織の変更容易性については、僕の勝手な予想ですが、保育園の組織図は、一般的な企業に比べると階層が少なくて、かなりシンプルなのではないかと思っています。比較的トップダウンで進めやすい気がします。

間違っているかもしれませんが、そのあたり詳しい方がいたら教えていただきたいです。

何も手を打たないと人材不足になるのは間違いない

保育業界でこのような事例があることはとても素晴らしいことです。

フィールドワーク系は働き方が整ってない一方で、賃金が安いというイメージがどうしてもあるわけなんです。

デスクワークに関しては働き方がどんどん良くなっていて、それなりに賃金を払っていかないと人が入ってこないので、どんどん改革が進むんですが、フィールドワーク系は遅れがちです。

ただし、そういったところで何も手を打たないと、働き方、賃金を良くしていかないと、ゆくゆくは人材不足になるのは間違いないわけです。

これについては先日紹介した建設業界も同じ悩みを抱えています。

そういった業界でこういった改善の事例が出ることは非常に価値のあることだと思っています。

本質的に価値が残る仕事

個人的には、保育のように人に関わる仕事はITへの置き換えが進まず、本質的に価値が残る仕事だと思っています。

コピペとかルーチン作業やっている人たちとか、無駄な会議で時間多く費やしている人たちが、プログラミングとかITで何かを改善するとかの創造的な仕事に行くというのも一つの手だと思います。

ただ、一方でIT技術を上げていくのに苦手な人や不向きな人もいるわけです。

その中には、子どもたちとか人にふれることで力を発揮できる人もいるんじゃないかと思います。

そういった人達に対して、働き方や賃金を魅力あるものに整えることで、そういう人の移動を実現していくのもよいことかなと思いました。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「人手不足の保育業界でどうやって保育士の数を2倍にしたのか」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

チャンネルのフォロー、コメント、SNSでのシェアなどなど、楽しみにお待ちしております。

では、また。

  • ブックマーク

この記事を書いた人