去る7月25日、名古屋でノンプロ研主催のイベントが開催されました。以下、ハナさん執筆のイベントレポートとなります。
7月20日、ノンプログラマーがITスキルを学び合うコミュニティ「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」主宰の高橋さんの著書『デジタルリスキリング入門』が出版されました。
その出版を記念して、7月25日にナゴヤイノベーターズガレージにてイベント「経験を無駄にしない、付け加える新しいスキル~ペンを置こうデジタルスキルを身につけよう~」が開催されましたので、その様子をご紹介いたします。
なお、当日の様子は以下のTogetterにもまとめられておりますのでそちらもぜひご覧ください。
登壇者トークその1 高橋さん「経験に付け加える新たなスキルその最初の一歩」
1人目の登壇者は著者の高橋さん。
リスキリングを取り巻く状況と、リスキリングを始めるその最初の一日についてお話しいただきました。
日本のビジネスパーソンは諸外国と比べても自発的に学んでおらず、半数は社外学習・自己啓発を行なっていないようです。
そのため、日本のビジネスパーソンの学びは職場内でのOJTが中心となっていますが、これは職場の状況が変わらない限りは新たな学びは得られないことを意味しています。
一方でリスキリングについて理解しており、社員のリスキリングを支援している経営者はごくわずか。9割の経営者は「リスキリング」について説明できないというのが実態のようです。
ではそのような中でリスキリングをするにはどうすればいいのでしょうか。
「リスキリングの戦略を立てることが重要だ」と高橋さん。
そもそも、私たちがこれまで学校で行ってきた学習と、ビジネスにおける学習は全然違うというところから認識しなければなりません。
学校では「いつ」、「どこで」、「何を」、「どのように」学ぶかは多くの場合カリキュラムとして決められていましたが、ビジネスでの学習ではそれらを自分で決めていかなければなりません。裏を返せばなんでも自由に学んでいいということですが、正解もなく、学習したことに対して誰かから評価されないことも多いです。
また、ビジネスでの学習の目的はあくまで「職場での実践」にあるので、その目的を達するために他者の力を借りていいし、どんな道具も自由に使っていいという点も大きく異なります。
このようにビジネスでの学習は自由度が高いのですが、実際に何かを学ぼうとすると、そこには「時間」や「お金」、あるいは「モチベーション」といった様々なリソースが必要となり、またそのリソースには限りがあります。
リスキリングを始める前には、このリソースのやりくりも含めた「リスキリングの戦略」を立て、リスキリングに有利な状況を作った上で学習と実践を繰り返していくことで、より確かにスキルを獲得していくことができるというお話で締めくくられました。
登壇者トークその2 あーちゃんさん「事務職がはじめるリスキリング」
続いては『できるPower Automate for desktop』の著者あーちゃんさんがご自身のリスキリングの経験とそれによって得られた変化について語ってくださいました。
地方工場の事務職勤務で自分用のパソコンもメールアドレスも用意されてない(!)状態から独学でRPAを習得されたあーちゃんさん。
リスキリングによって得られたものとして次のようなものを挙げられていました。
- 年間600時間の自由な時間
- リモートゼロの環境からフルリモート勤務へ
- 時給換算での年収のアップ
- 旅行にもたくさん行けるようになった
「とにかく激しく仕事をすることが正」とされがちな日本企業で働いていた中で、リスキリングして転職したことによって心に余裕が生まれ、「自分の人生を取り戻せた」というあーちゃんさんの言葉が特に印象的でした。
また、リスキリングのポイントとして、
- 自分が興味を持てるスキル
- 時代が求めるスキル
- 自分のこれまでの経験
を掛け合わせたものを学ぶこと、そして同じ目的を持った仲間を見つけることをおすすめされていました。
ディスカッションコーナー
続いては参加者によるディスカッションのコーナー。
3人ほどのグループに分かれ、お題についてグループごとに話し合って発表しました。
最初のお題は「昭和企業を現代に連れてくる方法」。
私のグループでは「昭和企業ってなんだろう?」という話からディスカッションが始まり、
「昭和企業=頭が固いトップのワンマン経営で変化を極端に嫌う」というイメージかなぁということで
- トップを変える
- 自分がトップになる
- 外圧を利用する(例えば融資を受けている銀行や取引先から働きかけてもらう)
という案が出ました。
他のグループからは
- トップにITを学んでもらい、意識を変えてもらう
- 人事制度を変える
- デジタルに取り組まないといけないという空気を作っていく
- デジタル化の取り組みを目で見える形にする
などなど色んな意見が出てきました。
トップと組織全体の意識を変えていくことが必要という点はどのグループも共通していました。
登壇者のお二人からは
- 昭和企業では常套句として「仕事は我慢することが大事だ」「どこの会社でも同じだ」と言われることが多いが、でも実際は会社によって実態は全然違う。外に出て他の人と話してみないと気づかないことも多い。
- 従業員の立場でできないことまで責任を持つ必要はない。できることから始めてみることが大切。
というコメントをいただきました。
続いてのお題は「どんな学ぶ機会をどうやってつくりますか」。
こちらも自由度の高いお題でディスカッションが盛り上がりましたが、私のグループでは成果を感じてもらいやすいように
- なるべく業務に直結した内容を職場内でゆるいコミュニティを作って学ぶ
という案が出ました。
他のグループからは
- とにかく手を動かしてもらうよう教材を用意する
- 覚えたことを実務に絡める
- 触れてもらう場面(タッチポイント)をたくさん増やす
といった意見が出てきました。
実務で活かせるような内容とすることが一つのポイントとなりそうです。
登壇者のお二人からは
- 日々を過ごしながら苦なく学びの要素を加える工夫をすると良い。例えば「メルカリ」もマーケティングの勉強になる。
- いつ学ぶか、どこで学ぶかに制約を設けないことが大切
というコメントをいただきました。
最後のお題は「何も制約がなければ何を学習してみたいですか」。
- 外国語、語学留学
- 洋裁
- ボイストレーニング
- AI
- 楽器
- コーチング
- 大学院に行って学びたい
などなど、たくさんの意見が出ました。
自分も含め、本当は学びたいと思っているのに制約があってできていない方が多かったためか、このお題が一番盛り上がったように感じました。
実際には学ぼうとすると様々な制約にぶつかりますが、リスキリングのための「時間の余裕」、「お金の余裕」、「心の余裕」を生み出すのにデジタルスキルは助けになるという高橋さんの言葉でイベントは締めくくられました。
今回のようなイベントに参加したのは初めての経験でしたが、登壇者のお話に加え多くの「学びたい」という気持ちを持った方々とお話ができ、私も学びへのエネルギーをもらうことが出来ました。