ノンプロ研定例会「1年間の越境学習による病院DXの成果」イベントレポ#1「病院DX」

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2022年から始まった越境学習プロジェクト。多種多様な業界、職種の学習者がアウェイであるノンプロ研で学び、各自ホームでも活躍しています。その中でも、イムス富士見総合病院では個人・部署のアップデートだけでなく、病院全体のDXにつながるような目覚ましい成果を遂げてきました。

2023年4月ノンプロ研定例会では、鈴木院長ほか越境学習支援プロジェクトに参加された吉田さん、戸田さんに、1年間の越境学習による病院DXの成果について、またその取り組む際の秘訣、今後の展望についてお話いただきました。

このイベントレポートは3記事にわたり、当日の様子をお伝え致します。今回は鈴木院長の発表です。

越境学習プロジェクトに参加してからの変化

昨年から越境学習プロジェクトに参加し、院内のDXを推進しているイムス富士見総合病院では、越境学習者の実践のもと様々な改革が進められています。

一例として、GoogleWorkSpaceを導入して情報共有のための共有フォルダを作ったり、会議ではペーパーレス化を実施。また、文章をベースにしたコミュニケーション推進を呼びかけて情報を共有・記録を残すようにしたり。

これにより情報の共有が進んだり、日常業務である計画策定に良い影響があったり、進捗管理がしやすくなったり、という効果があったそうです。

「普通の会社だと当たり前のことだけれども」と鈴木院長は仰っていましたが、病院としては画期的ともいえる変革を着実に推進されています。

ちなみに、昨年DX関連費用としてかけられた予算はこちら。越境学習は他の投資と比べると安価にはなりますが、大きな効果を感じており、今年も投資は継続する予定だそうです。

病院DX開始宣言

さらに今年は、スローガンとして「病院DX開始」を院内外へ宣言しています。

この宣言の背景には、「DXをやるなら、本当の意味で患者さんによりよい体験を提供したい」「病院を受信する体験自体をもっと良いものにしたい」という思いがあります。

院長自身、「昨年、患者として自身の病院で入院をしたけれど、残念だなと思う点があった」という経験もあり、「患者さんは本当に我慢強くて良い人。だからこそ、我々医療者はそこに甘えているのではないか」と常々感じられていたそうです。

「決して病院のみんながサボっているとか、いい加減な気持ちでやっているとというわけではないんです。(患者さんが)治ってよかった、だけでなく本当の意味で病院で治療を受けてよかったな、と思えるような体験を提供できているかというと、まだ至らないのではないか」(鈴木院長)

「来院された患者さんにより良い体験をしてもらう」

これを実現するための院内DXを、鈴木院長は2段階で考えています。

第1段階は「内部最適化」、第2段階は「新患者体験」です。「内部最適化」とは院内メンバーがチームで医療を提供していくために、患者の情報を整えたり、院内業務を最適化すること。そして「内部最適化」の先に目指しているのが、より良い「患者体験」となります。

第一段階「内部最適化」でいま、力点を置いていること

では、これらは実際どのような指針で進められているのでしょうか。

まず院内の業務として、「診療」とそれを支える「事務」の2つのドメインがあり、バックヤードである「事務」の改善は前述の通り少し進んだとのことでしたが、コアドメインである「診療」ではまだまだ葛藤状態だそう。

そのような中でも「診療」をさらに改善するために、まずは「正しいカルテ」「病院アクセス」「初期化問題」の3つに力点を置くよう進められているそうです。

「正しいカルテ」とは患者や医療行為の情報をより精度高く記録し、医療提供するチーム内での情報共有をスムーズにして、より良い医療を提供していこうとするもの。

「病院アクセス」とはコロナ禍でなかなか病院に電話しても繋がらない、という事態が起こったため患者さんが病院にアクセスしやすいように、電話以外のツールを導入したり、アクセスポイントを増やしたりするということ。

「初期化問題」とは入院時に患者の情報を収集する必要があるのですが、それが集まりきれていなかったり、不十分な状態で進まなければならないことも起こっており、これをデジタルの力で解決していきたいとのことでした。

病院DXを進める人材育成について

病院DXを進めていく上で、院長は「医療者の特性をうまく掴みながら、(改革を実行する)人材を育成していく必要がある」と考えています。

医療者は職務の専門性が高いゆえに、学んだことやOJTで身につけたあと、仕事の仕方・やり方を深く深掘りすることは容易なものの、他者との共同作業をしたり、情報を共有すること、専門を超えた横断的な業務は不得手だそう。

院内のDXのように、新しいことに取り組みながら新しいものを生み出していくには「課題を解消できる解決策を探すのではなく、課題の発生元である根本原因を突き止めて改善でき、自身の専門分野だけでなく他部署を横断しながら、解決に向けて進めることのできる人材」が必要になります。

これには、医療従事者が得意とする専門性を追求する「深化」だけではなく、横断的に動くことができる「探索」できる人材も求められます。

改革を進める上で必要な、「枠組みを超えて、新しい枠組みを創り自ら行動する」力、この「探索する力」を育てる必要がありました。

越境学習者の奮闘

イムス富士見総合病院では、昨年から越境学習プロジェクトを通して院内のメンバーの人材育成に取り組んでいます。

越境学習は、院内の改革に求められている、まさに「探索」できる人材を育成する学習手法です。

越境学習プロジェクトについての詳細はこちら

越境学習者は「アウェイ」と「ホーム」で葛藤が生じ「二度死ぬ」と言われていたもの、昨年参加されていた時点では、管理職メンバーには葛藤が見られていませんでした。

誰もが経験すると言われている「二度死ぬ」ことは無く、むしろ「固定観念が打破できる自身に気づき、ワクワクしている状態」があったそうです。

<昨年の越境学習での成果でもその様子が語られています(リンク)>

しかし、2023年の今現在に至っては管理職のメンバーでも葛藤が生じ、壁にぶち当たっている状態だそうです。

その様子は院長から見ると「(なかなか意見を通すことのできない)ボスキャラが登場」、「自己防衛反応が作動」、「(ひとりでなんとかしようとする)地下に潜伏」する状態が生じていた様子だったそうです。

組織文化の醸成も今年の課題

鈴木院長が「この葛藤の本質はなんだろう?」と探っていくと、「組織の信頼関係が不足しているのでは」という仮説にたどり着きました。

組織内の信頼関係が不足していると、「敬意」は実は上辺だけ、誰かの「挑戦」は「無謀」に見えたり、「寛容」は無関心と紙一重にと、ネガティブな感情に傾きがちです。

一方で、ときに厳しさもあり、ときに優しさも併せ持っている組織では、敬意や寛容さ(ゆとり)、挑戦も受容し、心理的安全性も確保されています。

「熟考して正しい答えを出せる組織」にするためには、この厳しさと優しさを併せ持つ組織文化でありたい。

そのような文化を醸成するためには、メンバーみんなが共通して抱いている「(体も心も)健康でありたい」「成長したい」「患者さんに良いことをしたい」という価値を実践しするしかないのでは、と院長は考えています。

そんな組織文化を創り、価値を実践するためにも、それぞれの立場におけるルールも定められています。

例えば、「管理層は、(メンバーからの起案に対して)ゼロ回答はなし。少しでも合意できたら実行しやりながら考えること」。経営層は「関心は示すが、管理層メンバーを信頼して関与はしない、任せる」など。

院内DXと並行して、今年はこのような組織文化の醸成もテーマにして取り組みたい、と抱負を述べて発表を締めくくられていました。


次回はリハビリテーション科吉田さんの発表の様子をお伝えします。

本定例会はTwitterにも実況ツイートがまとめられていますので、合わせてご覧くださいね。

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この記事を書いた人

あやか

ノンプロ研在籍の二児ワーママ。ITベンチャー数社経験し、現在はフリーランス。GAS、Python学習中。趣味は読書です♪