「なぜ9割の組織はDXに失敗するのか?『DX適正診断』をもとにその原因を探る」イベントレポ#2

  • ブックマーク

本記事は前記事に引き続き、2022年11月17日に開催された「なぜ9割の組織はDXに失敗するのか?『DX適正診断』をもとにその原因を探る」(ノンプロ研定例会)のイベントレポートをお届けします。

組織のアジリティを高めるための効果的な考え方

前の記事では、アジャイルなソフトウェアのように、組織もアジリティを高めていけばDXによる組織変容がスムーズにいくのではないか、ということをお伝えしました。

では、組織のアジリティを高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。

ここで具体的な手法として、迅速で柔軟な意思決定を実現する考え方の理論「OODAループ」が紹介されました。OODAループはPDCAに比べ、収集した情報の中から適切に判断し、素早く行動を起こしていくために効果的な考え方とされています。

OODAループは「観察」「状況判断」「意思決定」「行動」の四つの要素からなるループです。

観察(Observe)では多様な情報を集めて組織で共有されるようにする、そして状況判断(Orient)においてその集めた情報から課題を発見し方向づけをする、その方向づけをもとに意思決定(Decide)をし行動(Act)する、という循環で組織のアジリティをも高めることができるのではと高橋さんは考えています。

それぞれのポイントですが、観察(Observe)では多様な情報を集める必要があるため、組織において情報が入ってくるのは上司だけという状況よりも、上司から部下へ情報が共有されたり、部下が外から得た情報をメンバー間で共有されるほうが、状況判断において好ましくなるという場合があります。

そのような情報共有のためには、組織の心理的安全性の高さや、オープンなコミュニケーションがなされるような土壌があるほうがよいとされています。 また情報を見える化する仕組みなどがあると良いでしょう。

次に状況判断(Orient)においては世界観(VSAM)があると、集めた情報から状況を判断しやすいといわれています。

ビジョンがあると、現状から見たビジョンまでの差を課題として捉え、これを乗り越えようとするエネルギーが生じやすいそうです。

ビジョンは設定しておいた方がいいとはいえ、設定しただけで終わりとなっている組織も多くあります。「ひとりビジョン」の押し付けではなかなか進まないことが多くあるため、繰り返し共有したり実践をすることが大切です。また、個人でも各々のビジョンをはっきり持ち、組織が個人のビジョンを後押しすることで個人のモチベーションが高まるということがあるそうです。

また組織にある強固なメンタルモデル、例えば「 IT 人材がいないと DX は着手できない」や「上司の仕事は部下を管理監督すること」などの固定観念や暗黙の前提が存在し、これが状況判断に大きな影響を与えるそう。

このメンタルモデルに対処するためには、内省を流したり、メンバー間の率直な対話が有効だそうです。

次に意思決定(Decide)におけるポイントですが、組織では意思決定に関わる関係者が多いとなかなか決められないという問題が生じることがあります。そういう場合は関係を断ち切り、役割を明確にして裁量を渡していくことが大切です。

また失敗を奨励して行動を促したり、リーダーが自ら学習をすることで意思決定のスピードや組織の併用が促されるそうです。

この結合度、凝集度の考え方はソフトウェア設計と類似しています。

次に行動(Act)におけるポイントですが、組織では自身だけではなく、関係者に行動を起こしてもらう必要がある場合も往々にしてあります。例えば人事制度を変更したり基幹システムを刷新する場合などです。

そのような場合は自身がまずリーダーシップをとって動くこと,手本になることや丁寧な説明をして小さな成功を積み上げていくことで組織全体の行動を促すことができるようになるといいます。

DXの国内成功事例

最後に、DX の成功事例の紹介もありました。

マツモトプレシジョン株式会社では社長が越境学習を行いながら社内システムの導入を検討し、新しいシステムを2年かけて説得しながら導入して行ったそうです。

小柳建設株式会社では基幹システムをフルクラウド化することや。経営理念を刷新し役員を総入れ替えすることもされたそう。

ノンプロ研の越境学習参加企業でもあるフロント・ワークスでは社長が自らノンプロ研に越境し、社内側もGAS化で効率化を実施。情シス部門を設けずに部長が全員情シス担当として システムに精通させるようにしたり、業務のマニュアル化を徹底することや、社員の学習をサポートする制度などを取り入れているそうです。

いずれの事例もリーダーが先頭で学び、時間をかけて説得をしながら改革を進めていく、という点がOODAループの行動(Act)のポイントに類似していますね。

DX適正診断の活用とこれからの提供サービス

今回、高橋さんはこの定例会に備えて「DX 適性診断」という組織のDX適正度をはかるツールを開発しています(現在はα版)。今回の定例会で話題となった「ドメイン駆動設計」のソフトウェア設計のノウハウ・考え方やOODAループ、「学習する組織」などをもとに作られたそうです。

当日は、参加者に回答してもらい、それぞれ組織についての結果も公開されていました。OODAループの各ポイントで出ていた、ビジョンの浸透度や、組織トップのリーダーシップに関する質問がありました。

今後この DX適正診断をさらにブラッシュアップし、2023年には DX推進のコーチングやディスカッションパートナーとして伴走するサービスを提供開始予定だそうです。

以上、「なぜ9割の組織はDXに失敗するのか?『DX適正診断』をもとにその原因を探る」のイベントレポートでした。


なお、こちらの定例会の様子はYouTubeにもアップされています。

当日の実況ツイートもまとめられていますので、合わせてご是非ご覧くださいね。

  • ブックマーク

この記事を書いた人

あやか

ノンプロ研在籍の二児ワーママ。ITベンチャー数社経験し、現在はフリーランス。GAS、Python学習中。趣味は読書です♪