「なぜ9割の組織はDXに失敗するのか?『DX適正診断』をもとにその原因を探る」イベントレポ#1

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DXの必要性が叫ばれて久しいですが、「日本のDXは9割失敗している」という残念な結果が出ています。DX化に成功する組織と失敗する組織では何が違うのか。成功するためにはどのようなポイントに気をつける必要があるのか。その一端を探ることができるイベント「なぜ9割の組織はDXに失敗するのか?『DX適正診断』をもとにその原因を探る」(ノンプロ研定例会)が 2022年11月17日に開催されました。

このイベントでは,「複雑さに立ち向かう技術」であるソフトウェア設計の視点から、組織がDXできない理由を紐解きつつ、DXによる組織変容を支援しているノンプロ協会が考案する『DX適正診断』により、その組織がDXをどれだけ実現可能かを判断する手法について考察しました。

本記事では、イベントレポートとして2記事にわたり当日の内容をご紹介します。

日本のDX成功率の低さと越境学習の可能性

人口減による国内市場の縮小や労働力不足に備え、デジタルの力を使って生産性を向上させようという動きや、新規事業創出の拡大を狙って、DX推進の必要性が叫ばれています。

しかしながら、日本のDX成功率は軒並み低いという結果が。

デジタル化推進の課題として企業が最も多くあげている理由は「人材不足」だそうですが、「人材不足」といっても、人がいれば良い、というわけではないですし、どんな人材がいたらできるというのは場合によってあやふやだったり、定まっていなかったりと、人材不足というワードだけで思考停止してしまっている状況ではないか、と高橋さんは感じているそう。

「人がいなければ育れば良い」という考えのもと、ノンプログラマーでもプログラミングを身につけて活躍できるようにコミュニティ(ノンプロ研)を提供する、本を執筆されるなど人材育成の活動をずっとされていますが、特に、今春からノンプロ協会で提供を始めた「越境学習」はDX人材の育成に効果的だ、と感じているとのこと。

越境学習はホームとアウェイをぐるぐる巡り、新たな知識を学ぶと同時に自己の価値観やあり方を探求、自ら冒険する力が身につき、イノベーションを起こす人材を育成できるとされている学習方法です。

ノンプロ協会で提供している越境学習では、ノンプロ研へ越境をしてもらうためプログラミングやIT技術を身につけることはもちろんできます。

それに加え、学習者がホームに帰ったあと、学んだことを活かして非効率とされていた業務の改善が行われたり、ホームにいるメンバーに対して勉強会を開催したりと個人の変容だけでなく、ホームの組織自体にも良い変化を与えていることから、組織の変容も期待できる学習手法であるということがわかったそうです。

実際に4社から13名の参加の実績があり、それぞれの学習者が スキルを身につけただけでなく、各々の組織の中で良い効果を発揮しているという成果が出ているといいます。

越境学習効果の差から見える、組織の柔軟さの違い

しかしながら、組織の変容の度合いは人によって大きな差があったそうです。

越境学習によって、どの学習者もそれぞれ課題発見能力が高まるということはわかったそうですが、この「発見した課題を組織で解決できるか」という点は、所属する職場の権限や裁量に依存してしまう、と高橋さんは見ています。

例えば組織自体が改善に対して後ろ向きだと、メンバーが改善を提案してもなかなか実現に至らなかった、というケースもあるのだそうです。

複雑さに立ち向かう、ソフトウェア設計の思想

DX を進められるかというのはその人がいる会社とその人のポジション(権限や裁量)によるーー

では、どんな組織であれば DX 化や DX の改革がうまくいくのだろうか…を探求している中で、高橋さんはエリック・エヴァンスの「ドメイン駆動設計」を思い出します。

この「ドメイン駆動設計」とはソフトウェア設計の本で、ソフトウェアはドメインを焦点において開発しよう、ということが書かれています。

ドメインとはソフトウェアの対象領域のことで、例えば会計ソフトウェアであればドメインは会計になります。

ソフトウェアは複雑ですが、そもそも複雑になるのはドメイン自体が深い知識が必要であり、大変複雑だからなのです。この複雑さに立ち向かうアプローチが、「ドメイン駆動設計」に書かれています。

また、現在はVUCA時代と言われているように常識は通用せず想定外のことが頻発し、変化が激しい時代。そのような時代の中で求められるソフトウェアは、新しい情報を素早くキャッチし、それを素早く判断し、素早く変更していく、アジリティ(=俊敏性)の高いソフトウェアといえます。

初期に設計をがっちりと決めて開発する「ウォーターフォール型」 に対して、アジリティーを高く、途中途中で変化を加えながら開発していくのが「アジャイル型」。

ソフトウェア設計のアジリティを上げるためにこれまで様々な知見が蓄積されてきているそうですが、例えば以下のような点が挙げられています。

のちのち変更を加えやすくするために、ソフトウェアの部品(モジュール)は関連性の高いものだけを含めるようにする、それぞれの要素の名前は分かりやすくする、コードは読みやすくする、などです。

プログラミングの世界では「 組織がデザインするシステムは、 その組織のコミュニケーションの構造とそっくりになる」 というコン・ウェイ法則にもあるように、「ソフトウェアだけでなく組織もアジャイルな組織が良いのではないか」

この考えでいくと、日本のDX成功率の低さは「日本の組織はアジリティが低いのかもしれない」という仮説も出てきます。

組織が変容しやすくなるためには、アジリティを高めればよいのではないか。DXを推進する上では、DX初期にて「組織のアジリティをチェックする」「レバレッジポイントを見つけて改善し、アジリティを高める」ことで、DXによる組織変容がスムーズに行くかもしれません。

では、組織のアジリティを高めるにはどのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。

次の記事に続きます。


なお、こちらの定例会の様子はYouTubeにもアップされています。

当日の実況ツイートもまとめられていますので、合わせてご是非ご覧くださいね。

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この記事を書いた人

あやか

ノンプロ研在籍の二児ワーママ。ITベンチャー数社経験し、現在はフリーランス。GAS、Python学習中。趣味は読書です♪