【第2弾】ノンプロ研主宰・タカハシノリアキさん×Waris共同代表・田中美和さんの特別対談「業務の課題から逆算して、必要なスキルを見つけよう」

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ノンプロ研主宰・タカハシノリアキさん×Waris共同代表・田中美和さん

「人生100年時代、幸せに働き続けるためには?」ーーなかなか答えの出ないこの問いを、ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)主宰のタカハシノリアキさんと、Waris共同代表・田中美和さんによる対談で明らかにしていきます。そろそろ何かスキルアップしたい人、「リスキリング」が気になっている人、必読です。

<田中美和さん>
国家資格キャリアコンサルタント。2013年よりWaris共同代表、2017年より一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。Voicyパーソナリティとして「自分らしいキャリア100のヒント」を定期的に配信している。Twitterアカウントはこちら。

人生の突破口として見つけたのが「プログラミング」だった

田中 ノンプログラマーの方がプログラミングを学ぶコミュニティ「ノンプロ研」を立ち上げたタカハシさん。エンジニアとしてのキャリアをお持ちなのかと思いきや、なんとタカハシさんご自身がノンプログラマーだったんですね。ノンプロ研を立ち上げたきっかけは何だったんでしょうか。

タカハシ 僕が30代前半のころ勤めていた会社が、いわゆるブラック企業で。パワハラと長時間労働が当たり前という環境でした。何のために働いているのかわからないまま、ひたすら上司の怒声に耐えながら毎日深夜まで働いていたんです。当時は「転職、35歳限界説」があり、30代半ばだった僕は「もう次のキャリアなんてないから、このブラックな職場に定年までいなきゃいけないのか」と絶望的な気持ちになりつつあったある日、僕なりの突破口として目をつけたのが、プログラミングでした。

田中 壮絶なご経験をお持ちなんですね……! 需要の多いIT人材は、年齢が高くてもたくさんのチャンスが回ってくると思います。タカハシさんはそれから、どうやってプログラミングの勉強を始めたんですか?

タカハシ 当時やっていた業務を改めて棚卸しすると、Excel上のデータをコピペする単純作業や、簡単な資料作りがたくさんありました。もしかして、ITの力をうまく使えば業務を効率化できて、辛い就業時間を少しでも減らせるんじゃないかと考えたんです。そこで、とりあえずプログラミングの初歩を見よう見まねで使ってみると、仕事が劇的に早く終わりました。それまで2日かかっていた作業が、10分で終わるなんてことも! これが広まれば社会が大きく変わるだろうし、その支援をライフワークにしたいと考えたんです。今思えば、まさにリスキリングですね。

ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)主宰のタカハシノリアキさん
ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)主宰のタカハシノリアキさん

田中 リスキリングは今すごくホットですね。Warisもリスキリングプログラムの事業を手がけているので、共鳴するポイントがいくつもあります。

タカハシ 政府が「5年で1兆円を投資する」と発表してから、リスキリングは本当によく話題に上がるようになりました。もともと日本は大人が勉強しない国で、企業も人材教育に投資する意識が低いんです。今の日本に元気がない原因の1つは、大人が勉強しないことなんじゃないかと思っています。

田中 とはいえ、プログラミングを独学で身につけるなんて大変そうです。

タカハシ 本当にそうなんです。僕自身が経験してつくづく感じましたが、ノンプログラマーの独学ってすごく大変なんですよ。学習時間は200〜300時間ほど必要ですね。さらに、周りに仲間がいないと独学になり、挫折しやすくなる。そこに、ノンプロ研のようなコミュニティの価値が出てきます。ノンプロ研に入会してくださる方には、最初に「長期戦になるのは覚悟してお越しください」と伝えています。

キャリアへの不安、疑問を持ってコミュニティに入る人が多い

田中 ノンプログラマーがITスキルを身につけたいと思ったとき、ノンプロ研のようなコミュニティに入って仲間を作るのが近道なんですね。ノンプロ研は、今どうやって活動しているんでしょうか。

タカハシ 現在約200人のメンバーがいて、Slackでのテキストコミュニケーションと、Zoomで講座を受けたり交流したりするという2つが基本です。男女はほぼ半々で、年齢層は30〜40代、特に40代が多いですね。10代も60代もいます。地域は北海道から沖縄、台湾までさまざまですが、比率は首都圏が8割ほどです。

田中 人口比率を考えると、地方には特に展開の余地がありそうですね。皆さん、何をきっかけに参加されているんでしょう。

Waris共同代表・田中美和さん
Waris共同代表・田中美和さん

タカハシ 今のキャリアに漠然とした不安があり、「このまま働き続けていいのかな?」「今の会社でスキルアップできるのかな?」と疑問を持ったという方が多いです。ITスキルを持ちたいと思いつつ、何から、どうやって始めていいかわからないという。

田中 独学では挫折しやすいので、一緒に学ぶ仲間を求めてコミュニティにいらっしゃるという流れはすごくよくわかります。タカハシさんご自身もプログラミングを独学された経験があって、コミュニティの価値を実感されていたわけですね。

タカハシ そうですね。ノンプロ研を作ろうと思ったのは、僕自身が勉強していてわからないことがあったりつまずいたりした時に、誰にも質問できない不便さを身をもって感じていたから。困っている人同士を集めればお互いに助け合えて、それぞれの問題を解決できるんじゃないかと思ったんです。いざ始めてみると、「頑張ろう!」という積極性やモチベーションは周りにも伝染するとわかりました。メンバーからは「独学していた頃は憂鬱だったけど、ノンプロ研ではみんなが楽しくプログラミングの話をしているから元気になれる」という声も。学習する環境って大事ですね。

田中 メンバー同士が教え合ったり励まし合ったりする仕組みがあるからこそ、長く学び続けられるんだろうと思います。仲間の存在が支えになっているという。その仕組みができているのはすばらしいことですよね。

タカハシ ノンプロ研のSlackでは、毎日誰かが質問をして、ほかの誰かが回答しています。回答するのはただの”give”で、何も報酬はありません。みんな「自分がお世話になったから、今度は困っている人のためになりたい」「コミュニティに貢献したい!」という気持ちでやっていることです。でも、回答者にとっては自分の知識を整理して、アウトプットするいいチャンスになっているんですよね。これこそ、コミュニティのパワーです。

「やりたいけど、スキルがなくてできないこと」が狙い目

田中 せっかくリスキリングを始めても、挫折してしまったりモチベーションが続かなかったり、うまく生かせない人もいます。成功させるためのポイントはありますか?

タカハシ 2つあって、まずは「つながりを活用する」ことです。子どもの頃の学校教育は、先生がみんなに向かって1から教え、1人ひとりが机に向かってコツコツ繰り返し勉強するスタイルでしたよね。社会人のリスキリングでは、仲間で集まって、集合知をうまく使いながら学ぶほうがうまくいきます。

そしてもう1つは「実務で使う」こと。英会話を習っても日常生活で使わないとすぐに忘れてしまうのと同じです。実務の中に困りごとを見つけて、その解消を明確な目標にする。そのためのスキルをピンポイントで学んで、なるべく早くに成功体験を味わうのが成功の秘訣だと思います。

デジタルリスキリング入門
タカハシさんの著書「デジタルリスキリング入門――時代を超えて学び続けるための戦略と実践」(技術評論社)は2023年7月20日発売!

田中 学ぶ目的を明確にしておくと、道筋を見失わずに済みますね。よく「自分に合うリスキリングをどう見つければいいかわからない」という方がいます。自分の好きなことや得意なことから逆算しようとして、具体的なスキルが思い付かずに止まってしまうようです。

タカハシ そういう方は、身近な業務の中に「やりたいけど、スキルがないから実現できないこと」を見つけましょう。そこから逆算して、必要なスキルを身につけるのが理想的です。例えば「長時間労働」「単純な反復作業」などの課題があれば、プログラミングがぴったりハマると思います。スキルによって補えることって、意外と多いんですよ。

個人のスキルを「マネジメントする側」の能力開発も必要

田中 わかりやすいですね。具体的な課題から逆算して、必要なスキルを特定するという順序なら、失敗することが少なくなりそうです。

Warisが10周年を記念して行ったイベント。いろいろな形で情報を発信しています!

タカハシ 自分の好きなことをスキルに変えて、伸ばしていくやり方もあると思います。例えばYouTuberはそれにあたるでしょう。でもライバルが多かったり、必要な能力が多岐に渡っていたりして、うまくいかない人が多いと思います。むしろ逆の発想で、「実際に困っていることを解決するために、スキルを身につける」考え方のほうがわかりやすいはず。僕が今年7月に発売する書籍『デジタルリスキリング入門』では、スキルをどう選べばいいのか、成功確率をどう上げていくのか、などを解説しています。

田中 リスキリングをした後には、どんな課題があるんでしょうか。

タカハシ いざスキルを身につけても、職場でうまく使いこなせないケースが本当に多いです。例えばプログラミングを勉強して、ツールを作れるようになっても、それが活用されないどころか「新しいものはよくわからないから、元に戻しておいて」と言われるなんてことも……。だから、個人のスキルアップに加えて、能力をマネジメントする側の能力も上げていかないといけないし、個人と組織のミスマッチをどうなくすかが課題です。

田中 企業側の意識改革も必要ですね。DXがブームになって数年経ちますが、とくに零細・中小企業は全然進んでいないということが往々にしてあるようで。問題はなかなか根深いなと思います。

タカハシ 「勉強」という言葉に身構えたり、不安になったりしてしまう人もいます。でも、始めてみれば楽しさがわかっていただけるはず。いくつになっても能力は伸ばせるし、さらに仲間と一緒に学べるのはとても幸せなことだと思います。みなさんがIT分野に限らずリスキリングを通して、もっと幸せに働ける社会になればと思います。

田中 勇気付けられるメッセージを、どうもありがとうございました!

※この記事は、2023年2月14日のVoicy配信を元に構成しました。タカハシノリアキさんのVoicy「『働く』の価値を上げるスキルアップラジオ」はこちら田中美和さんの「自分らしいキャリア100のヒント」はこちら。

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。