大手通信会社の人事で働くazumiさん。ノンプログラマーでありながら、プログラミングにまつわる勉強会や社内コミュニティの運営を手がけています。2024年には、クラウドの推進に尽力した人を表彰する社内制度でクラウドの推進者に選出されました。非エンジニア部署から初めての受賞とあって、大きく注目されているazumiさん。活動の中身についてインタビューしました。
「ガチエンジニアからIT初心者まで」間口の広い活動が評価された
――ノンプログラマーながら、複数のプログラミング言語をマスターしているazumiさん。プログラミングとの出会いは何でしたか。
新卒で入社後、営業部に配属されてExcelを使うようになりました。最初は関数すら知りませんでしたが、そのうちにVLOOKUP関数を知ってあまりの便利さに感動し、マクロにハマったのが最初です。マクロを駆使して書類の作成ツールをつくり、社内に展開したら周りから好評で、そこから業務に役立つ便利ツールをいろいろ作りました。
ツールを使ってくれた人のフィードバックを受けて改良することを繰り返していたら、ある日業務品質を継続的に向上させていくことに対する取り組みが社内表彰され、社長向けプレゼンまで行うことに。自分では「ボタンひとつで仕事を終わらせたい!」という気持ちがモチベーションだったんですが(笑)、それが周りのみんなの仕事にも役立つんだと知って、すごくうれしかったです。
2020年に社内公募で人事部に異動して、今は人事データ分析基盤の構築や人事データの可視化、業務改善などを担当しています。日常業務のほかにもITの勉強会を開催したり、社内コミュニティをつくったりと、応援してくださる人々に支えられながら好きに活動させてもらっています!
――azumiさんのご活躍は社内でも認められ、クラウドの推進者に選ばれました。初出場ながら、圧倒的な得票数で選出されたそうですね。
はい、本当にうれしかったです。この賞は、社内のクラウド推進を目的に、2021年から始まったものです。全部で1800人超の投票で決まるので、それだけの方に認めてもらえたのは感激でした。21年は、「AWS HEROES」と呼ばれる、Amazon Web Services(AWS)の公式にも認められたガチ勢も受賞しています。それに続く受賞者が私だなんて……! という気持ちです。
具体的には、2023年から始めた、AItやCopilotの勉強会と、Power Platform活用コミュニティの活動を高く評価してもらったのだと思います。私が開催している勉強会やコミュニティ活動は間口が広くて、ガチエンジニアからITの初心者まで幅広い参加者がいるのが特徴です。
最近のノーコード・ローコードツールは、プロのプログラマーじゃなくても、コーディングの専門知識がなくても、興味をもって少し触ってみるだけで誰でも成果を出せるんですよね。その面白さや便利さがウケて、いろんな層の方が参加してくれているんだと思います。
――勉強会に参加している方々は、どういうモチベーションで来ているのでしょうか?
「プログラミングを勉強しよう!」「資格を取りたい!」と意気込んでいる人は少ないです。参加者の方に直接聞くと、だいたいみんな「なんとなく」「雰囲気が楽しそうだから来てみました」と言います(笑)。きっと、業務効率化は誰もが気になるテーマで、それを会社にいる時間内で解決できる実用的な会なのも魅力の1つなんですよね。
勉強会は、平日のランチタイムに開催しています。ランチタイムにスキルアップしようという声がけをしてきました。2022年頃から、社内でコミュニティ活動がいくつか始まっていたので、会社の中でコミュニティの存在が市民権を得て、カルチャーの1つになってきていたと思います。現在は20以上のコミュニティで累計1万人以上が参加していると聞いています。
Power Platformのコミュニティは、半年で参加者が250人→2,200人へ
――Power Platform活用コミュニティはどんなふうに始まったんですか?
Power Platform活用コミュニティは、もともとPower Platformの全社導入と同時に情報システム部門の有志の方々がつくったものでした。2022年の夏ごろから、社内でPower Platformの利用が解禁されていたんですが、正直あまり活発には使われていませんでした。
Power Platform活用コミュニティも、参加者は250人いるのに誰も発言しない状況で、だいぶ過疎っていました。せっかくなのにもったいないし、私は仲間を集めてもっといろいろ勉強したいなと思って、2024年4月から勝手に一人で、月に1回イベントを開催するようにしました。
やり始めるとどんどん人が集まってきて、今では2,200人ほどいます。
Power Platformの魅力はやっぱり、自分の小さな日常業務から効率化できるところだと思います。専門的な勉強をしなくても、ノーコードで直感的にツールをつくれるんですよね。
例えば「ファイルが添付されたメールがきたら、その添付ファイルをどこか指定の場所に保存する」「イベントの申し込みフォームに入力すると、自分のカレンダーに自動的にその予定が入る」みたいな自動化ができます。また自分のための小さなアプリを作ったり、Excelでは表現しきれないリッチなビジュアルでデータの可視化を行ったりすることだってできます。
――社外の方とのコラボもしているそうですね。
外部の勉強会で知り合った他社の方をスカウトして、Power Platform活用コミュニティのイベントの一環として、いろいろ教えていただく機会を設けています。私自身が勉強になるし、集まってくれるみんなのモチベーションアップにもつながると思うんです。
個人的には、できれば社内のメンバーに危機感を持ってもらえたらいいなと思っています。社内しか知らないと、どうしても見えない部分やわからないことがたくさん生まれるので、コミュニティを通じて他社の施策を知ったり、自分の部署の遅れている部分を感じ取ったりしてほしいなと。
そういう危機感があってこそ、もう少し深く勉強してみようとか、業務を見直してみようというモチベーションにつながるんじゃないかなと思います。
コミュニティマネージャーのみんなとつながれる喜び
――コミュニティの運営や社内表彰をきっかけに、他部署の方とのつながりは広がりましたか?
日常業務で関わりがない人とも、コミュニティをきっかけに知り合い、仲良くなれました。社内表彰もそうです。憧れの社内の方々と直接話せる日が来るなんて、まったく思っていませんでした!
社内にはいっぱいコミュニティがあって、AIに関する情報を追うもの、データ分析や自動化に関するもの、クラウドに関するもの、Pythonのガチ勢が集まるもの、エンジニアのもの、「Kaggle」でコンペに挑戦するもの、テック系のテーマで広く集まるものなど、いろいろあります。コミュニティの運営をやると、そういうコミュニティマネージャーたちとつながって、会話する機会が増えるんです。
コミュニティの運営で何か相談したいことがあったときも、みんなに聞けます。ジャンルは違っても、同じベクトルを向いているパワフルな仲間がいるというのは心強いです。ほかのコミュニティのイベントに招待してもらうことも多く、コミュニティから会社の動きを知れたり、学びの幅が広がったなと感じます。
業務に直結していることもたくさんあります。たとえば、私は業務でクラウド上にデータ基盤をつくっています。データ基盤系のコミュニティで、先進的な使い方をしている人たちから具体的な使い方の事例を聞けるのが本当にありがたく、いつも参考にしています。
人事部門は全部で200人ほどいますが、その製品について知っているのは私だけ。以前は社内に相談できる人がいなくて不安でしたが、今は社内に仲間が増えました。
――2024年12月には、社内コミュニティを集めた豪華なコミュニティフェスも行われたそうですね。
そうなんです。平日の日中にカフェテリアを貸し切ってオフラインで実施しましたが、なんと140人ほどが参加してくれました。コミュニティが自分にどんな影響を与えたか参加者同士で話したり、社内外でコミュニティ活動をやっている精力的な方々の話を聞いたりするコンテンツがメインでした。
外部からも、コミュニティ運営の先駆者の超特別ゲストに、コミュニティ参加者のエンゲージメントが上がるような講話をしていただきました。私も登壇して、コミュニティを始めたきっかけや、社外のコミュニティで得たものを話したりして、いい経験になりました!
ノンプロ研で経験を積み、人前で喋るのが楽しくなった
――azumiさんの活躍は、企業の枠を超えて、社外での活動にも広がっているそうですね。
外部に向けて情報発信する機会はすごく増えましたね。2024年には、Microsoftのセミナーで、ユーザーとしてCopilotについてお話ししました。社内でCopilotを使ってみた感想を話すというもので、もはや社内副業というか、趣味の一部のような感覚です(笑)。ほかにも自社のセミナーやお客様からもご指名で登壇の依頼をいただいています。ありがたいことに、理解ある上司に恵まれていて、部署のみんなも後押ししてくれています。
情報発信したり、社外の講演で喋ったりするのは面白くて好きです。感動したことを自分の言葉で伝えるのも、誰かに便利なことを教えるのも好きですね。つい3年前くらいは資料も作れなかったし、人前に出ることもほとんどなくもともとあまり得意じゃありませんでした。場数を踏むうちにできるようになっていきました。
人前で喋るスキルでいうと、社外で参加しているコミュニティ「ノンプロ研」(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)でたくさん経験を積ませてもらったのが大きかったと思います。ノンプロ研では講座を受けると、必ず最後にLT(ライトニングトーク)として学習の成果を発表することになっています。私にとっては、それが人前で喋るほぼ初めての経験でした。
最初は、発表用の資料をつくるのに何日もかかっていました(笑)。そのうちにどんどん場数を踏むことになり、資料は一瞬で用意できるようになりました。今では、聴衆が何百人いても緊張しません!