課題ばかりの建設業界DXをどのように実現したのか

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株式会社小柳建設のDX成功事例について紹介します。課題ばかりの建設業界で、どのように組織を変更し、業務を見直し、働き方改革へとつなげていったのか、そのステップについて、組織での腹落ちを実現するために何が必要だったかを語ります。

みなさん、おはようございます!タカハシ(@ntakahashi0505)です。

こちらの記事は、タカハシが音声メディアVoicyの「スキルアップラジオ」にて放送した内容から、ピックアップしてお届けします!

今回のテーマは、課題ばかりの建設業界DXをどのように実現したのかです。

なお、以下で実際にお聴きいただくこともできます!

では、よろしくお願いいたします!

課題ばかりの建設業界DXをどのように実現したのか

今日は、新潟県三条市に本社を置くゼネコン、小柳建設株式会社のDX事例について紹介していきたいと思います。

現CEOの小柳氏による「建設業界 DX革命」という書籍に沿って紹介します。

建設業界ならではの問題

DXという観点でいうと建設業界ならではの難しい問題があるんですね。

  • ITはもとより、3Kのイメージがあり激しい人材不足
  • データとの連携がしづらい紙ベースの役所仕事
  • 安全と品質の確保が第一、業務を変えることによるリスクと抵抗感が高い
  • 現場をこなした数が売上に直結、長時間労働が美徳という考えも根強い

なのでデジタルを導入して何かを変えていくというのは非常に難しい業界だと言われています。

小柳建設は、まずは全社をフルクラウド化して、日本建設業界初のホロストラクション技術を導入して外販しているわけです。まさにDXを実現しています。

2020年度実績で、ひと月の平均残業時間はわずか2.6時間になったんですね。

土日を含めた連休の取得を奨励しているリフレッシュ休暇制度を設けており、他の業界と遜色のない、むしろ魅力的な働き方を実現しています。

これをどうやって実現したかをご紹介していきます。

何度か放送でお伝えしている通り、DXには

  • 組織全体で腹落ちをしてもらうセンスメイキング
  • 変更容易性を高める組織改革

のステップが必要なのではないかと思っています。

その視点で、小柳建設の事例を見ていきます。

現CEOは三代目です。

先代二代目が営業三人を従えて年間100億を叩き出していたわけなんです。ただしこれは先代に何かあったらできないわけです。

複雑な世の中になりつつありますし、慢性的な人材不足、属人化から仕組み化へ変えていく強い課題意識がありました。

アメーバ経営を導入

まず着手したのがアメーバ経営です。これは、先日惜しまれながら亡くなられた、京セラ名誉会長・稲盛和夫氏が考案した管理会計手法です。

これはどういうことかというと、組織を小集団組織に分割して、採算管理を行います。KPIを例えば営業利益1本にしてシンプルにして小さなユニットで機動的に柔軟に改善していこうというやりかたです。

小さなユニットをアメーバと呼んでいるのでアメーバ経営と呼ばれています。組織を小さく、アジャイルにしていく、まさに変更容易性を高める組織改革といえます。

アメーバ経営を実現するためには、フィロソフィが必要。経営理念が必要です。小柳氏も経営理念の言語化に着手します。

ネットフリックスの事例でコンテキストと呼ばれていた部分で、アメーバが何かを判断するときに共通の拠り所になります。

多くの企業では、ここはミッション・ビジョン・バリューを使っていると思います。

その後、人事制度の改革へ着手します。公平でチャレンジを評価するような制度に変更しましたが、かなり大変で何年もかかったとおっしゃられています。

役員の総入れ替えを行った

次にトライしたのが、基幹システムのフルクラウド化です。

クラウドに載せるアプリケーションを、今までの業務をそのままシステム化したいという意向が強いメンバーが多かったんです。

そこでCEO小柳氏がどうしたかというと、役員の総入れ替えを行うという血をみる改革をしたわけです。それによって役員の平均年齢は60歳強から平均年齢41歳になりました。

ホロストラクション技術の開発へ

ここからようやくDXの話になって、日本初のホロストラクション技術の開発・外販に入っていきます。

建設業界で言うと、社員が現場に足を運ぶ手間やリスクが多いわけです。

自社の会議室に現場をホロレンズによって「持ってくる」ことができ、この手間とコストを大幅に削減できます。

ここが建設業界のDXのコアと判断して、ここの技術開発に長年注力し外販まで漕ぎつけます。

DXを実現したステップ

順番としては

  1. 経営理念を固める
  2. 経営スタイルを変えアメーバ経営を導入
  3. 人事制度を見直し
  4. フルクラウド化(デジタイゼーション、デジタライゼーション)
  5. 役員を刷新
  6. ホロストラクション技術の開発と外販

書籍ではここまでになっていますが、それ以降、働き方の改革もどんどん進められています。

10年前までは技術者のキャパシティいっぱいに仕事を取っていたわけです。

なぜなら、建設業はどうしても技術者数・現場の数によって売上が変わってくるので、どんどん取りに行くと、どうしてもたくさん働いた方が売上が良くなります。

ただし、何かあると現場に必要な人数が配置できなくなり、結果的に慢性的に長時間労働になって、休みが取れないが当たり前になってしまいます。

そもそも、休ませることのできないのはおかしいわけです。

とくに今はコロナウイルス感染のリスクもあります。

なので、社員を守る方向にシフトしていきました。どうしたかというと、これ以上売上を取りに行かないというラインを決めたんです。

会社売上が100億あったときに比べ、現在の売上は25~30パーセントぐらい下がりましたが、何が良かったかというと、生産性を上げたことにより利益が当時より高くなったことです。

その利益は、社員に還元しました。平均年収をこの2~3年で30~40万増額したと伝えられています。

さらに働き方を改善したことで、女性初の現場職員が誕生したり、採用が倍増したりを実現できているんです。人材不足でもっとかっこいい働き方をしたいという思いが実現したわけです。

腹落ちをするために重要なこと

まとめますと、まずはアメーバ経営で、ユニットを疎結合にしたことで、アジャイルで機動的になって変更容易性が高くなったこと、シンプルなKPIを設定して、拠り所としての経営理念を整えたことが強く寄与しています。

腹落ちに関してはけっこう苦労したものと見受けられたのですが、フルクラウド化のときに幹部の刷新をするという決断により、それを実現しているわけです。

もしかするとこの役員の総入れ替えをもっと早い段階でできていればアメーバ経営の導入と人事制度の改革はもっとスピーディにいったのではないか?と個人的には予想しています。

腹落ちの前提として、今回の事例もLIXILの事例でも、経営幹部は非常に重要な気がします。

そこをすっ飛ばしてしまうと、腹落ち感が一気に失われて、推進力が出ないんじゃないかと思います。

そこをクリア出来れば、DXとしてはコアを見極めて、ホロレンズに注力できたということにつながります。

まとめ

ということで、今日はVoicy「スキルアップラジオ」の放送から「課題ばかりの建設業界DXをどのように実現したのか」をお届けしました。

タカハシのVoicyの放送はこちらからお聴きいただけます。

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では、また。

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