『ちゃんと成果を上げる社内研修のつくりかた』イベントレポ#1 研修の実際とインストラクショナルデザインとは

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2022/07/21に ノンプロ研定例会第66回「ノンプロ研インストラクション講座から学ぶ~ちゃんと成果を上げる社内研修のつくりかた」が開催されました。当日はノンプロ協会の高橋さんが登壇し、効果的な社内研修作りのコツや考え方を、ノンプロ研講座「インストラクション講座」から凝縮してお伝えしました。

イベントレポートとして2記事に渡り、当日の内容をご紹介します!
※本定例会はノンプロ研メンバーだけでなく、非メンバーの参加も可のイベントとなりました。

研修の実際と、ノンプロ研での実績

「『この研修は失敗だったな』という研修に参加したことはありますか?」という質問からスタートした定例会。参加者の皆さん誰もが少なくとも一度は「失敗だな」と思う研修への参加経験があるようでした。

「学んだことをすっかり忘れてしまった」や「実務に役立てることができない」「全くついていけない」などなど…。

実際、国内外の研究論文でも「研修で人材開発に投資がされていても、学んだスキルはほとんど失われている」「研修で学んだことの多くが現場で実践されていない」ということが報告されているようです。

さらに人材への投資に着目すると、他国との比較では、日本は企業の人材への投資額(OJT以外)が低いうえ、社外学習や自己啓発を行っていない人の割合が高いという結果も出ているそう。

人材投資が少ないうえ、研修も効果を上げられていないという、残念な現状がありました。

一方、ノンプロ研に目を向けてみると、これまで述べ62講座561名の受講者の実績があり、メンバーが日々共に学びあう環境があります。ノンプロ研の講座では受講者が必ず講座最終日に卒業LTを行わなければ修了証がもらえないのですが、のべ428枚(※発表した講師陣にも授与)も修了証を発行した実績もあります。

「教えることは2度学ぶこと」をコミュニティの共通理念にしているので、かつて受講者だった方がTAや講師へも成長を遂げています。

前述の研究報告と比べると、ノンプロ研の講座はうまくいっていそうです。

高橋さんは、良いレシピがあれば、誰もが美味しい料理を作れるように、研修でも誰もが成果をあげられるような「教える」ことのレシピがノンプロ研にはあるのでは…と、ノンプロ研の講座の設計を振り返ってみたところ、どうやらノンプロ研の講座は『インストラクショナルデザイン』という誰もが効果的に教えることができる手法を使っていたんだ、と『インストラクショナルデザイン』へと行き着いたのだそうです。

インストラクショナルデザインとは

インストラクショナルデザイン(ID)は、「教育活動の効果・効率・魅力を高めるための手法を集大成したモデル・研究を応用して学習支援環境を実現するプロセス(鈴木克明2006)」とされています。

教育工学や心理学がベースのモデル・研究によって培われた手法の集大成で構築されているため、再現性があり、「誰もが効果的に教える」ことを可能にします

また、インストラクショナルデザインは「システム思考」をベースにしている点も大きな特徴です。

例えば、研修の成果が芳しくなかった場合、「講師の教え方が悪かったから」「熱量が足りなかったから」と「教える側」の責任を問うたり、「学ぶ努力が足りなかったから」「理解力がなかったから」と「学ぶ側」のせいにしたりと、どこかに責任を求めようとしがちです。

一方、インストラクショナルデザインの場合は自責・他責思考ではなく、「システム思考」で学びの場、教える活動全体をシステムと捉え、そのシステムを取り巻くあらゆる要素の構成・しくみにフォーカスしていくのです。

先の例で言えば、研修の環境は「講師」「講師以外の運営」「受講者」「受講者の周囲(上司や同僚も)」がいます。態度の悪い「受講者」がいた場合、「受講者の周囲」にも何らか影響を与えているはずなので、「講師」は一人の「受講者」だけでなく、他の「受講者」や「受講者の周囲」など学ぶ環境全体へ、どのようなアプローチをすればよいかを考えて行動する必要があるそうです。

また、インストラクショナルデザインの定義に「学習支援環境を実現するプロセス」とありますが、この「学習支援環境」とは、研修の前後や職場環境も含んでいて、それら全体を含めた上で研修づくりを考える必要があるとのことです。

例えば研究によると、研修にかけるべき労力は、ついつい研修の当日ばかりに目が向きがちですが、研修前が40%、研修当日が20%、研修後が40%だそう。また、研修効果を上げるためには職場での実践もとても大切だそうです。

研修を成功させるためには、研修当日の教室の中だけでなく、研修の事前事後や職場環境全体も考慮して考える考える必要があるということです。

「誰もが効果的に教える」を可能にするインストラクショナルデザインは、教える場をシステムと捉え、研修の場を取り巻く全体からアプローチし、設計していくことが重要なんですね。

次の記事では、そんなIDのノウハウを詰め込んだ「インストラクション講座の紹介」、「インストラクション講座の先に目指すこと」について、イベントの続きをご紹介します!

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この記事を書いた人

あやか

ノンプロ研在籍の二児ワーママ。ITベンチャー数社経験し、現在はフリーランス。GAS、Python学習中。趣味は読書です♪