この記事では前回に引き続き、ノンプロ研定例会「業界DXを目指す!『関西建設業界合同勉強会』のつくり方」のイベントレポートです。前回の記事では加藤さんの発表の様子をお伝えしました。
今回は後半の江畑さんの発表の様子をお伝えします。江畑さんからは「勉強会を開いてGAS仲間を増やそう〜事務パートタイマーがGASをはじめたら いろいろ楽しくなった話」をテーマにお話いただきました。
勉強開催までの道のり
江畑さんは三和建設株式会社情報企画グループに所属されていて、ノンプロ研歴は約1年。
2015年に事務パートタイマーとして入社し、工事現場事務所でコピーや入力業務に従事されていました。昨年、コピペを何百回と繰り替えすのに疲れ、GASに目をつけて挑戦することに。結果、15時間のコピペ作業をゼロにでき、このことをきっかけに業務効率化のツールづくりが始まりました。
江畑さんは、「それまでは「転写型事務」でしたが、GASと出会ってからは「創造型事務」へと変化できたのでは」と振り返られていました。 もちろん「転写型事務」には人間にしかできないものも数多くありますが、転写型事務のまま行くのは厳しいだろう、頭打ちになるだろうと以前から考えていたそうです。 手遅れになる前に何か手を打ちたいと思っていた江畑さんにとって、GASは良い転機になったそうです。
そして 昨年8月にノンプロ家に入会。GAS 中級を受講してスキル面ではコードのクオリティーをぐんとアップさせることができ、また関西合同勉強会を一緒に企画した加藤さんとの出会いもありました。
その後、今年4月にパートタイマーから派遣社員に。同じくのタイミングでGAS中級同期だった加藤さんにひっぱっていただき、勉強会の計画が発足。そして今年7月に勉強会開催に至りました。
なお、江畑さんご自身が「なぜこの勉強会が必要だと思っていたか」については以下のように語っています。
江畑さんはツールを作り始めてからしばらくの間、「ひとりノンプロ」の悩みを抱えていたそうです。「ノンプロ」とは「プログラミングを専門職とせず、自分の業務効率化のためにプログラミングを使う人」のこと。このノンプロは江畑さんの会社では、江畑さんひとりしかいませんでした。
それゆえ、「(ツールの)依頼件数に作成が追いつかない」「メンテンスできる人が自分しかいない」という悩みがあったそうです。
そのため、「GASを扱える仲間がほしい!」と思っていたそうですが、その道筋がわからなかったそう。
そこで江畑さんはできるところから草の根運動を始めます。
例えば、「他人が読みやすいコードを書くこと」や「日報でGASの便利さと楽しさをアピール」されたり。江畑さんの会社には情報共有できる日報システムがあったので、GASの楽しさを発信していくうちに、えばたさんが新しいことを始めたらしい…と言う話がじわじわと広がっていったそうです。
勉強会プロジェクト発足!
勉強会の企画が立上り、加藤さんと話を重ねていたある日、然るべき手順を踏んで、社長と加藤さん、江畑さんで 勉強会の意義や目的を伝える機会を得ることができました。その後、えばたさんは部長会議で勉強会の企画プレゼンの場を得て、現状の課題と勉強会の狙いをアピールし、賛同を得られることに。
この結果、勉強会のプロジェクトに、DX推進担当者が入ることにもなり、「GASが仲間がほしい」という江畑さんの希望が社内でも展開されることになったそうです。
「GAS仲間がほしい」と思っていた江畑さんの希望が、あれよあれよという間に実現へと進み出した時でした。
勉強会の概要
続いて勉強会の内容について詳しくお話しいただきました。勉強会はこのような内容で実施されました。
今回の勉強会では「GASの実装」までは踏み込まず、「GASで何ができるか」「スプレッドシート関数」「構造化データ」までを扱いましたが、次のステップではGASのプログラミングや「ノーコード・ローコード」まで扱いたいと考えているそうです。
準備にはこれだけの時間をかけられたそうです。
初めての取り組みなのでかなり時間がかかったとおっしゃっているように、入念に準備を重ねた様子が伝わってきます。
その影で、江畑さんは「社内に向けた広報活動」や「応援の呼びかけ」などの草の根活動も行っていたそうです。例えば、日報で取り組みをアピールしたり、企画運営会議の録画を上層部と共有したり。
「応援の呼びかけ」では、 受講生が良い取り組みをしたら上司に応援してもらえるよう、その投稿slackリンクを上司へ送り(操作説明のキャプチャも合わせて)「今ここに応援スタンプをしてください」と 起こして欲しいアクションを具体的に伝えるようにもしていたそう。
これらの草の根活動に対するリアクションはゼロではありませんでしたがとても少なく、それはまるで真っ暗な観客席の前で一人芝居を続けているような孤独な作業だったそうです。しかし、勉強会の成功のためにやったほうがよいと思ったことはすべてやりたい、と思い努力したそうです。
もともと「いちパートタイマーが何かやり始めた」という浮いた存在だったので、いっそ開き直って浮いたことを自分の強みにしよう、 と江畑さんは考えるようにして草の根活動を続けました。
勉強会の成果は?
次に成果についてお話してくださいました。
受講生からは講座アンケートでこんな声をいただいています。
見学者からもこんな声が。
そして、江畑さんからみた達成できたことはこちらです。
「自ら調べ、使う人を増やす」ところは、「期待以上にできた」とおっしゃっていました。
例えば、 もともとSUM関数すら使っていなかった方が、講座では扱わなかったクエリ関数を使うようになったり、GASを先んじて触ってみる人も現れたそう。また、実務でもvlook関数や条件付き書式を使ったり、「社内のデータを構造化します!」と言ってくださる方もいたそうです。
江畑さん自身の変化としては「 自分が何を話したいかではなく相手が何が聞きたいかを考えるようになった」ことを強く感じているそう。勉強会の前に、ノンプロ研イントラインストラクション講座を受講して、この考え方を学び、理論と実践を通して勉強会を運営できたことが大きかった、とおっしゃっていました。
一方で達成できなかったこともあるそうです。
まず「学習共同体の形成」はできなかったなぁと振り返られました。学習共同体とは会話を通して互いに影響しあいながら学ぶコミュニティで、このコミュニティがあることで学習者は主体的で深い学びを得ることができます。ノンプロ研ではこの学習共同体が形成されていますが、勉強会では「ノンプロ研のようには簡単にはいかないな」と感じられたそうです。例として、講座中のリアクションが少なかったり、スラックの投稿も必要最低限しかなかったり。コミュニティが生まれた様子は見られなかったそうです。
この原因については勉強会の回数が少ないほか、以下のように分析されていました。
まず「双方向の学習スタイルがなじまない」ということ。そして、 20代から30代の女性が多くいたことで、目立ちたくないと言う心理が働いていたのではないか。 今回は「属性が似通っていた」が次回は年齢層にばらつきを持たせてもいいかなと考えているそうです。
また、「応援の文化がもともと薄い」ことも強調されていました。 江畑さんは「この応援の文化は企業にもあった方が、もっとみんな楽しくやれるのに」とのこと。江畑さんは「ノンプロ研には強烈な応援の文化があることで私はいろんなことに挑戦できた。だから企業にももっと応援の文化があるといいな」とおっしゃっていました。この課題については継続することで、より良い変化を起こしたいとのことでした。
今後の課題について
今後の課題についての話が続きます。「2期以降は参加企業をどうするか」「何を持ってPJ終了とするのか」は決めきれていなかったので、目下検討中だそうです。
また、江畑さん自身が一番課題と感じているのは「勉強時間の確保」について。
これはプログラミング学習には約200〜300時間必要と言われている学習時間をどう捻出するか、ということです。例えば、1日に1時間だと7〜11ヶ月かかってダレて挫折してしまう可能性がありますので、週に14時間程度、4〜6ヶ月で習得できるのが理想的ではないか、とのことでした。ちなみに、江畑さんは短期集中コースでプログラミングを習得されたそう。
しかし、江畑さんのように自主的にやっているのであれば、夜間や土日も学習時間に充てられますが、会社主導では学習を強制するわけにはいきません。また業務時間中に学習するにも無理がある場合も。
ここに会社主導プロジェクトゆえのジレンマを感じているそうですが、 これについてはあれこれ考えてもどうしようもないのでとにかく前進してみようと思っているそうです。
最後にこれから社内勉強会を立ち上げる方へのメッセージがありました。
江畑さんからは「地道に発信を続けよう」とのこと。そして「 見てくれている人の存在を信じる」「発信の場がなければ会社に求める」というアドバイスも。
江畑さんは「孤独な道のりだけど、その分仲間が見つかったときの喜びが大きいはず」と締めくくられていました。
以上、江畑さんの発表をお伝えしました。江畑さんの行動力、とても魅力的でした!皆さんも是非身近で勉強会を企画される際は江畑さんの道のりを参考にされてみてください。
なお、こちらの定例会の様子はYouTubeにもアップされています。
当日の実況ツイートもまとめていますので、是非合わせてご覧くださいね。