ひとり仕事のコミュニティ「結NITY」主宰・戸村涼子さんに聞く、フラットな組織の醍醐味

  • ブックマーク

ひとり仕事を楽しむコミュニティ「結NITY」(ユニティ)を運営している、税理士の戸村涼子さん。会社や学校のようなヒエラルキー型の組織とは違う、フラット型の組織に大きな魅力を感じているといいます。その中身について、タカハシノリアキとの対談で深掘りしました。

※本記事は、2024年8月31日、Voicyチャンネル「『働く』の価値を上げるスキルアップラジオ」で行われた生放送の内容から制作しています。

ITやプログラミングを学ぶのは、税理士としての戦略の1つ

タカハシ 戸村さんは税理士として8年活躍してこられました。税理士は国家資格である以上、資格を持っている人なら全員同じパフォーマンスができて当然の世界。その中で特徴を出していくのは、けっこう難しいのではないでしょうか。

戸村 本当にそうで、税理士は比較的安定した職業ですが差別化がしにくいんです。税理士の仕事にとらわれるあまり、ほかの視点が持てなくなることもあります。最近、国家資格って呪いなんじゃないかと思っているくらい(笑)。

戸村 涼子さん
戸村 涼子さん
戸村涼子税理士事務所 代表税理士。フリービズコンサルティング合同会社 代表社員。クラウド会計を使うフリーランスや中小企業の税務顧問を務めている。撮影協力:高田写真事務所

誰かと一緒に組織を組んで、その規模や価格で差別化するよりも、私は自分が心からやりたいと思うことをやっていきたいです。仕事にAIをフル活用していたり、プログラミングを勉強してITに詳しくなったりしているのは、その1つです。私の好きなことでありながら、ほかの税理士と差別化するための戦略でもあります。

そんな中で私が「結NITY」を始めたのは、私と同じようにひとり仕事をしている人たちで集まってコミュニケーションしたり、安心してアウトプットしたりできる場所をつくりたいと思ったからです。でも、いざ結NITYを立ち上げたときは周りのみんなに驚かれました。「ひとり仕事が最高と言いながら、正反対のことをやり始めるなんて!」って(笑)。

何かを学ぶには「フラットな組織」が向いている

戸村 私は、人間同士にはそれほど能力の差はないと思っているんです。だから、何かを学ぶならフラットな組織がいいんじゃないかと。講師から生徒に一方通行で教えるというよりは、それぞれが考えていることや価値観の違いを面白がりながら、みんなでフラットに学んだほうが楽しい学びになる気がしています。ヒエラルキー型の組織だと、役割がはっきりしている分、それができなくてつまらなくなります。

タカハシ そうですね。ヒエラルキー型の組織と学びは相性が悪いと思います。上下関係がはっきりしていると、上の人は下の人たちが自分の知らないことに取り組むのを嫌がりがちです。権威のベースは「情報」なので、下の人が新しい知識を身につけて強みを得ると、自分の立場が脅かされると感じる人が一定数いるようです。

タカハシノリアキ
タカハシノリアキ
一般社団法人ノンプログラマー協会 代表理事。コミュニティ「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」主宰。福岡県糸島市在住。Voicy「『働く』の価値を上げるスキルアップラジオ」パーソナリティ。ブログ「いつも隣にITのお仕事」著者。東京工芸大学大学院非常勤講師。著書に「デジタルリスキリング入門」「ChatGPTで身につけるExcel VBA」など。

戸村 私は会社員時代、業務でExcelを使っていました。ルーティン業務をVBAで効率化しようとしたら「勝手なことをしないで!」と怒られたことがあります。そうすると、怒られないように、でも効率化はしたいから、隠れてコソコソ勉強するようになるんですよね(笑)。コミュニティなら、一切の躊躇なく、自分が持っているものをみんなに分け与えることができます。

タカハシ コミュニティは上下関係がない世界なので、自分の知識を振りかざしてもただ煙たくなるだけなんですよね。フラットに知識やノウハウを分け与えやすい場所です。それに、みんなそれぞれのキャラクターや強みを持っているので、頑張って競争して擦り切れる必要もありません。

これはコミュニティに限りませんが、一般に、大人の学びは痛みを伴うものです。子どもは新しいことを次々に知って、知識をどんどん追加していく「形式的学習」。それに対して大人は、これまでやってきたやり方を捨てて新しいものを学ぶ「変容的学習」なので、必然的に痛みを伴うんです。

電卓からExcel、ExcelからVBA、と新しいことを学んで自分の技術が進化するにつれて、古いやり方を捨てていく必要がある。つまり過去の自分を否定することになるので、相当辛いのですが、これができない人は学習できません。

外に出ることで、自分のコミュニティを客観的に見られる

戸村 結NITYは今のところ、30名ほどのメンバーでワイワイ楽しく活動しています。たまにはほかのコミュニティに越境したり、情報交換したりして、いろんなやり方を知ってみたいなと思って、2024年11月16日(土)に行われるイベント「学習コミュニティフォーラム」に参加することにしました。

普段はコミュニティを主宰している立場ですが、外のコミュニティと関わり合うことで、自分たちを客観的に見られるんじゃないかなと。実行委員という立場で、各コミュニティから集まったみなさんと一緒にイベントをつくり上げるのは初めてなので新鮮で、すごく刺激的です。

学習コミュニティフォーラムに参加するにあたって、結NITYの特徴はなんだろうと考えました。やっぱり、ひとり仕事をしている人が集まっているので、情報収集も活動の取捨選択もブランディングも全部、自分ごととして考えている人ばかりなのが特徴です。1人だから、自分で日々考えて決めていかないと前に進めないんです。せっかくなので、ほかのコミュニティの方にも結NITYのことをお話して、何かしら参考や議論のきっかけにしてもらえたらいいなと思います。

タカハシ 僕が主宰しているノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)も、おかげさまでたくさんの方に参加していただいています。たまに外に出かけると、自分のコミュニティのことをいつもと全然違った視点で見られますよね。僕は2023年6月から、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」に入っています。「ノンプロ研ならどうしようかな」と考えたり、いいなと思ったものを取り入れたり、逆に輸出したりといろんな楽しみ方ができます。

戸村 私も「flier book labo」メンバーです。結NITY以外のコミュニティに参加したのは初めてで、全然知らない人たちの中に放り込まれるという斬新な体験をしました。一般的なセミナーや講座では、講師か聴衆のどちらかの立場に属します。でもコミュニティでは、学びの材料を与える人がいて、そこからメンバーみんなが交流しながら考えていくので、能動的に学べるなと思いました。

また、メンバーの皆さんに迎え入れてもらって、時間をかけて心地よくなっていく感じも面白いなと。まさに、これが「越境」ですね。例えば、私がAIサービスにたくさん課金していると話したら、みんなからすごく驚かれて(笑)。そのとき初めて「あ、これって珍しいんだ」と気づきました。

箱ができるよりも先に人が集まり、だんだんコミュニティができていく

タカハシ 誰かが「やってみたい!」と思ったら、突発的にでも実行できるのがコミュニティらしさですよね。そういう経験が蓄積されて、だんだんコミュニティとしてできあがっていくんだと思います。

一般企業は営利目的が第一にあるので、目的やそれを達成する方法がある程度決まった状態でメンバーを募ります。でもコミュニティは順番が逆で、メンバーありきで進んでいくのが面白いところ。必ずしも、いつどこで誰がどう実現するか決まっていないし、当初のコンセプトや目的からよほど大きく外れていない限り、やりたいことにはどんどん踏み込んでいけます。逆に、参加を強要されることもありません。

戸村 ある意味、目的はないのかもしれません。大きな箱ができるよりも前に人が集まって、みんなでわちゃわちゃとやっているうちにだんだんコミュニティができあがっていきます。そして何より大事なのが、メンバー同士の関係性ですね。

タカハシ コミュニティ内の関係性が0の状態で物事を先に進めようとすると、あまりうまくいきませんよね。MIT組織学習センター共同創始者のダニエル・キムさんが提唱した「成功の循環」というモデルがあります。「関係の質、思考の質、行動の質、結果の質」は循環しているというもので、つまり関係性がよくないと思考も行動も、その結果もすべて質が悪くなってしまいます。

学習コミュニティフォーラムも、企画を進めるうちに、だんだん実行委員同士のコミュニケーションも深くなってきました。それぞれの役割もできて、成功の循環モデルに乗ってきたなという実感があります。いつものコミュニティとは一味違った面白さを、ぜひ味わっていただけたらと思います。

>【2024年11月16日(土)】学習コミュティ同士がつながり、学び合い、共創するイベント「学習コミュニティフォーラム2024」の詳細はこちら。リモート参加もあり、現在ご参加受付中です!

  • ブックマーク

この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。