組織をまたぐと、世界が変わる。フロント・ワークス代表・江藤 大さんに聞く、越境学習の真価

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組織をまたぐと、世界が変わる。フロント・ワークス代表・江藤 大さんに聞く、越境学習の真価

フロント・ワークス社の代表でありながら、情報システム部門の業務も担当している江藤大さん。「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」(通称、ノンプロ研)の “最古参”の1人として、日々精力的に活動中です。「昔は、スキルアップしたい、人材としての価値を高めたいなんて、思ったこともありませんでした」と振り返る江藤さんが、200名を超えるノンプロ研の仲間にもまれ、得たものとは?

<フロント・ワークス社>
BPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング、外部委託) サービスを提供している。具体的には、光学メディア特化のコールセンターおよび事前検証業務が事業の柱。映画をはじめとする映像コンテンツの、パッケージとしての互換性や、動作、ノイズ、字幕などの検証も行う。さらに各種ソフトウェアのサポート、CSチャンネルのカスタマーサポートなども手掛け、事業の幅を拡大している。

「育児のために仕事を効率化したい」思いがきっかけ

――江藤さんがプログラミングに興味を持たれた理由を教えてください。

娘が生まれ、育児のために仕事を効率化したいと考えたことがきっかけです。仕事でGmailやGoogle ドキュメントなどGoogleのサービスを使っている一方で、情報の管理や整理をExcelやWordで行うのは煩雑だと気づいて。単純作業を自動化できないかと考え、それまで縁がなかったプログラミングを勉強してみようと思い立ちました。

――ご自分の仕事を効率化したい、というアイデアから始まったんですね。

はい。調べたところ、「GAS(Google Apps Script)」という言語を使えば、アプリ同士で連携して複雑な処理を自動化できるとわかりました。Googleのサービスは基本的にすべて、GASで操作できます。Slackなどの外部アプリとも連携できるとあって、素人目にもその利便性はよくわかりました。

例えば報告書なら、フォーマットを選んで必要事項を記入するだけで、見栄えのいいものをつくれます。備品の購入も、決裁者はボタンを1つ押すだけで作業が完了します。人間は誰だってミスをする可能性がありますから、単純作業を機械に置き換える工夫をすることで、ミスを防げることにも魅力を感じました。

――江藤さんは、1人でGASの勉強をしていたんですか?

そうです。やるべきことは山ほどあって、最初は何を学ぶにも時間がかかりました。手探りで勉強を進める中で、見つけたのが高橋さんのブログ『いつも隣にITのお仕事』(『隣IT』)でした。一度読めばわかりますが、『隣IT』の記事はどれも懇切丁寧に書かれていて、超初心者にもわかりやすいんです。

『隣IT』を味方につけて勉強を進めていたある日、「ノンプロ研を立ち上げます!」というお知らせを目にしまして。これはもう入るしかないなと(笑)。即決で入会しました。2017年12月のことです。

新しいコミュニティで仲間が増えるうれしさ

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――実際にノンプロ研に入ってみて、どうでしたか?

社会人になると、新しいコミュニティに飛び込んでいく機会がほとんどなくなりますよね。ノンプロ研では、プログラミングという共通項を通して、普段は知り合えない人たちと知り合い、どんどん仲間が増えていくことが何よりもうれしいです。自由度が高い集まりなので、仲間と一緒にコミュニティをつくりあげていく面白さもあります。

居場所としては、何かに挑戦したいと思ったとき、誰からも「NO」を突きつけられることなく進められる環境がとても心地いいです。何か成果を発表したり発言したりすれば、必ず誰かがコメントをくれて、次はもっとこうしよう! とアイデアが生まれます。フロント・ワークスの仕事で大失敗するわけにはいきませんが、社外活動であるノンプロ研なら、多少のリスクをとってもやりたいことにチャレンジできますね。

――プログラミングの勉強そのものは、いかがですか?

かなり手応えを感じています。コードを書いて1つプログラムを作れば、それを横展開することで作業の手間が減り、時間が空いて、また新しいことを勉強できる……というサイクルができあがっています。

――ノンプロ研の仲間は、どんな人が多いのでしょうか。

みなさん熱量が高く、とにかく勉強熱心。ですから、仲間と一緒にやっていれば、自然とスキルアップしていけます。200人以上の大人が集まって、毎日自主的に勉強し続けるって、冷静に考えればちょっと変わっていますよね(笑)。

――ノンプロ研に参加されてから、江藤さんの中で変化したことはありますか?

マインドとしては、スキルアップの意識が高くなりました。それまでは、自分の人材としての価値を高めようなんて考えたこともなかったんです。ノンプロ研には「今の自分に何を足したら、人材としての価値が高まるか?」という視点を持っている方が多い。そういう考え方を知ることができて、世界が広がりました。

プログラミングついでに、プレゼンの場数を踏ませてもらっています。ノンプロ研では勉強の成果を発表する機会が多いんです。フロント・ワークスの仕事では、プレゼンをする機会は年に1回あるかどうか。新しいスキルが身についてきたと感じます。

越境学習によって、意外な「自分の強み」が見えてくる

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ノンプロ研で学んだことを生かして、日々の仕事にVRを活用している江藤さん。会議もVRでできます!

――フロント・ワークスには、江藤さん以外にもノンプロ研メンバーがいらっしゃるそうですね。

全従業員と役員25名のうち、ノンプロ研の経験者は5名です。当社は完全なる成果主義・能力主義で、年齢と役職はまったく関係ありません。それもあって、ノンプロ研を通して社員の積極性・自主性をもっと伸ばしたいと思っています。少しくらい失敗してもいいから、新しいことにチャレンジしてほしいんです。

組織論では一般に、組織変革の実行者が17%を超えると、一気にイノベーションが進むといわれます。当社は25人中5人がノンプロ研経験者ですから、すでに17%を超えていますね。

――ノンプロ研の「越境学習支援プロジェクト」のトライアルにも参加されていると伺いました。

この取り組みは、2022年3月にスタートしたばかりです。会社のメンバーにももっとノンプロ研のよさを知ってほしくて参加しました。もちろん、どこまでコミットするかは本人次第ですが、飛び込むチャンスは与えたいなと。短期的な効果は狙っていませんから、いずれ手応えを感じられればと思っています。

――越境学習を体験し、今どんなことを感じられていますか?

コミュニティが変われば、人の立場はもちろん、能力やスキルへの評価も、すべてがガラッと変わるということです。会社での評価と、ノンプロ研での評価は、違って当然。空間が変われば、他人も自分も変わります。

組織に根付いている「文化」や「習慣」もそうで、違うコミュニティでは思いもよらず高い評価を受けることがあります。細かいことでいえば、ボイスチャットの活用やマニュアルの作成は、当社では当たり前のこと。それをノンプロ研に“逆輸入”したところ、他の方々にとっては新しい発見だったようで、意外にも高い需要があることを知りました。

――本人が自覚していない強みや文化の特徴が、越境学習によって浮き彫りになるということですね。

はい。逆に、自己評価にはあまり意味がないと思います。自分のよさは、周りに見つけてもらうもの。ほかの人が苦手としているけど、自分はサラリとこなせることってありますよね。例え自覚がなくても、それは大きな強みです。周りからの評価が、そのコミュニティにおける自分そのものなのだと、僕は越境学習によって知りました。

「焦る」ことが自分の糧になる

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「VR飲み会」で盛り上がる、フロント・ワークスのメンバー。

――プログラミングのスキルも、すでに高いレベルに達している江藤さん。なぜ、ノンプロ研に参加し続けるんですか?

勉強熱心なみなさんの熱に日々晒されて、僕はこのままでいいのか? と焦ることが、自分の糧になると思うからです。例えば今ある肩書や立場を外れて、世間に1人、ポンと放り出されたとしたら……。自分の力で戦って生きていける能力と自信を身につけたいんです。キツイことはないですよ。好きなことならいくらでも掘り下げていけますし、勉強するのって楽しいですから。

――ノンプロ研では、プログラミング以外の活動も活発だそうですね。

僕はノンプロ研で「コーチング」を受けて、見事にハマりました(笑)。今は資格を取るべく勉強中です。フロント・ワークスの仕事でも、1on1の場にコーチングを生かしたり、社員の方向性を把握したり、といったメリットがあるはず。

――今後の展望について教えてください。

会社全体に変化を起こすためのツールとして、これからもノンプロ研そして「越境学習支援プロジェクト」の場を活用していきます。全社員を代わる代わる送り込んでいこうと思案中ですが、1シーズンあたり最大3〜4名が限度ですね。あまり多すぎるとノンプロ研がホームになって、「越境」じゃなくなってしまうので(笑)。

>>ノンプロ研に興味がある方は、こちらから!

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。