2023年9月、ノンプロ件主催のイベントが開催されました。以下はakiさん執筆のイベントレポートとなります。
7月20日、ノンプログラマーがITスキルを学び合うコミュニティ「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」主宰の高橋さんの著書『デジタルリスキリング入門』が出版されました。
その出版を記念して、9月29日に「医療従事者のリスキリング」というタイトルでイベントが開催されましたので、その様子をご紹介いたします。
当日の様子は以下のTogetterにもまとめられておりますのでそちらもぜひご覧ください。
医療×DX~リスキリングと越境学習による実例
まずはタカハシさんの講演です。
イムス富士見総合病院の事例をもとにどのように病院がDXしていくのか、病院にかかわっている人がどのようにスキルアップや成長しているのかを中心にお話いただきました。
2019年、イムス富士見総合病院の鈴木院長がノンプロ研に入会し、プログラミング学習を開始しました。その理由は、日報を集計するのに時間がかかっているので何とかしたいと思っていたからです。
その一方で、病院の状況としては悪くなることが想定されていました。
慢性的な人手不足や医療の複雑化により業務量が増加しているが、何とかしたいと思っていても、そもそも忙しいので、業務を改善したり新しいことをしようとする発想にならない。
そんな中、院長がノンプロ研に入会し学びはじめたのでした。そして、3名の若手職員がノンプロ研に入会しました。
翌年の2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、新型コロナウイルス診療に本格参入するという決断をします。
その中で活躍したのがGoogle Workspaceです。
クラウド上でデータを共有できるので、隔離された状態でもやりとりすることができ非常に有効でした。そして、このシステムのベースを作ったのが院長を中心としたノンプロ研で学んでいる若手職員と組んだ対策チームです。その結果、環境を整えて乗り越えることができました。
2022年になると、さらに4名がノンプロ研に参加します。
半年間ノンプロ研で学び、その成果を現場で活かすという活動をした結果、情報共有を行うためのLINEボットを作ったり、デジタル化するため自分の部署の中で勉強会を行ったり、Webのデータを取得するツールを作成したりしました。さらに、部門間連携の強化やコミュニケーションや情報のデジタル化が進みました。
そして2023年、DXを院内全体に活用しようとするのですがここで問題が起こります。ノンプロ研に参加していない一部の部署のリーダーから反発が起きたのです。
しばらくその状態が続いたのですが、対話の機会を作ったり、一緒にやってみることで壁を乗り越えることができました。そして今では、病院が次のステージに行ける・治療に影響を及ぼせるようになっていきたいと考えるようになったそうです。
病院の例をもとに、DXの成功のポイントは3つあるとタカハシさんは説明します。
まず1つめはリーダーから越境・リスキリングすることです。リーダーから新しいことをどんどんやろうとすることが大切です。
2つめは部門ごとにDXを行うことです。権限をわたすことにより変革を早く起こせます。
3つめは対話と共通体験です。対話をしながら一緒にやりましょうというスタンスが大事です。
このポイントを押さえながら医療の現場でも実践していくことをおすすめされていました。
医療従事者のリスキリング 〜あなたはいつはじめるのか?
次は山口さんの講演です。
コロナ禍において、フリーランスの感染症専門医として病院や保健所で活動された山口さんが、混乱した医療現場を振り返るところからはじまりした。
保健所では普段の業務が100倍くらいになり、何が問題かも把握できない状況でただひたすらみんな大変だったそうです。情報の優先順位がつけられておらず、何度も電話連絡をする必要があったり、クリニック・保健所・病院でデータが共有されていないので同じデータを取り直す必要が生じました。
そして、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システムはデジタル化できずに終わったそうです。
ここから、AI-Ready(AIを使える)病院にすることについて説明します。
AI-Readyな病院にするには、今いる職員を教育しITリテラシーを向上させていく、かつ、外部の専門家と連携しながらAIに対応できる職場に変えていくことが重要と山口さんは説明します。
では実際に自分たちで中から変えていくにはどうしたら良いのでしょうか。それには次の3つがあげらるようです。
1つめは日常業務のデジタル化です。Excel等の関数を利用することにより集計作業が早くなります。
2つめはスタッフの教育です。まずIT化を始めるという説明からはじめ、職員の中からやる気のある人を集めて、Word・Excelの基本や関数の使い方のワークショップを行います。そしてさらにやる気のある人にはプログラミングなどの学習を行います。
3つめはDX推進チームの創設です。システム情報部と各部門のパソコンの得意な職員とで推進チームを作ります。そして、各部署に一人はITリテラシーの高い人がいるという状況を作り、なるべく現場でDXを行えるようにします。
その後、実際に山口さんは次のようなシステムを作りました。
- 福岡県のすべてのコロナ病床を管理するシステム
- 前日の患者データを集計するシステム
- コロナの流行状況の可視化するシステム
- スタッフの出退勤を確認するシステム
- シフト表を作成するシステム
デジタルリスキリングというと大変そうなイメージを持つかもしれませんが、全然そんなことはなく、このようなシステムはノンプロ研に入って3か月もすればできるレベルです。
一番重要なのはこの仕事を効率化したいという意欲です。これが推進力になるので「なんとか改善したい」という人をピックアップして、デジタルリスキリングをすると職場全体・組織全体に広がって改革ができます。
ちょっとしたデジタル化や自動化で大幅な効率化が可能なのでコロナ対策に割いていたリソースをDXに使いませんかという話で締めくくられました。
Q&A ディスカッション
最後は質疑応答です。
電子カルテからデータを取得する方法やDXを組織全体に広げた事例について質疑応答が行われました。
私は医療従事者ではないのですが、参考にできることが多く、とても勉強になるイベントでした。
実際の事例を参考に実際にどのようにDXを進めていくか、どのような問題が生じてどのように解決するかという話を伺えたのがとても学びになりました。
今回のお話を今後デジタル化等を社内で進めていくときに活かしたいと思います。