ひとり仕事を楽しむコミュニティ「結NITY」(ユニティ)を主宰している、フリービズコンサルティング合同会社・代表の戸村涼子さん。本業は税理士で、独立から8年目を迎えます。「ひとり仕事はすごく快適」と語る戸村さんが、自身でコミュニティを立ち上げた理由とは? タカハシノリアキが、その背景に迫りました。
※本記事は、2024年8月31日、Voicyチャンネル「『働く』の価値を上げるスキルアップラジオ」で行われた生放送の内容から制作しています。
ひとり仕事はすごく快適。だからこそ「摩擦」がほしくなった
タカハシ 戸村さんは「ひとり仕事」というユニークなくくりでコミュニティを運営されています。何がきっかけで、コミュニティを始めようと思ったんですか?
戸村 私は、大きな組織に所属して働くのが全然性に合わなくて(笑)。もともと一般企業や税理士法人で働いていたんですが、逃げるように退職し、税理士の資格を取って2016年4月に独立しました。てっきり、税理士は複数人で組んで事務所をつくるものだと思っていたんですが、周りを見渡せば一人でやっている人もいると気づいて、ひとり仕事をするようになりました。
これまで8年間ひとり仕事をしてきて感じるのは、とにかく快適だということ(笑)。寂しいと感じたことはありません。私の性格上、自己裁量のある状態が快適なんです。何か決めるのも実行するのもスピード感があるし、やらかしても自分の責任なので、誰かのせいにしなくていい。独立して、働くことがとてもハッピーになりました。
ただ、だんだん「人と関わるのは基本的にめんどくさいけど、その摩擦をもっと感じたい」と思うようになりました。ひとりで働くと何もかもがスムーズだけど、スムーズなだけじゃつまらないというか。ひとり仕事をしている人たち同士で集まったら、何か楽しいことができるんじゃないかなと思いました。
タカハシ ひとり仕事の良さはよくわかります。僕も組織で働くのが苦手で、2015年に独立してからずっと、基本的に1人で仕事しています。逆に、組織に属しているからこそ大きな仕事ができるというメリットもありますね。1人だと、リソースが足りなくて仕事を受けられないこともあります。それに、コミュニケーションや人間関係の摩擦を乗り越えた時の達成感とか、1人では味わえないものがあると思います。
戸村 そうなんです。なので、コミュニティをつくってみたいなと思ったのがきっかけでした。どんな場所にしようかと考えた結果、税理士としてフリーランスや士業の方々からよく聞く、「気持ちをアウトプットできる場所がない」「相談相手がいない」という課題を解決できる場所にしたいと思いました。
誰かを雇ったり契約を結んだりすると、どうしても私の苦手な縦型・ヒエラルキー型の組織になっちゃう。そうじゃなくて、コミュニティ的な横のつながり、循環するかたちにしたいなと考えて、2024年4月に「結NITY」を立ち上げました。
タカハシ 結NITYが「結」の漢字を使っているのはそういう理由なんですね。
戸村 はい。そして立ち上げのときに思ったのは「SNSとの違いをはっきり打ち出したい」ということです。なのでコミュニティのメンバーは、私が3〜4年ほどお送りしてきたメルマガの読者さん限定としました。立ち上げた当時に参加してくれたメンバーは21人、今は少し広がって30名ほどになっています。
コミット度は人それぞれ。「ひとり仕事」という広いくくりで集まる
タカハシ 結NITYでは、具体的にどんな活動をしているんでしょうか?
戸村 1つのテーマに絞らず、「ひとり仕事」という広いくくりでいろんな勉強会を開いています。「習慣力」「発信力」などをテーマに座談会したり、「私の開業日記」と銘打って独立前から現在にいたるまでの体験談をシェアしたり、自分の強みを知るためにストレングスファインダーテストをしたり。スキル面では、Webデザイナーの方にHPづくりを解説してもらったこともあります。
私は、アイデアを出すのが好きで、ストレングスファインダーテストでも「着想」が1位でした。だからやってみたいことはいろいろと思い浮かぶんですが、それを形にする実行力が足りなくて、試行錯誤しています。
タカハシ コミュニティを立ち上げて、まず大事なのが雰囲気づくりですよね。メンバー同士のコミュニケーションはどういうふうに進めていますか?
戸村 コミュニケーションのメインはSlackを、資料やコミュニティのルールまとめなどはNotionを使って管理しています。猛者ばかりのガチガチな雰囲気にはしていないので、参加するハードルは低めだと思います。Slackでは毎日、いろんなチャンネルでみんなが発言したりスタンプを押し合ったりしています。私は全員公開のチャンネルに毎朝何かしら投稿したり、質問コーナーで発言したりと、参加しやすい雰囲気をつくっているつもりです。
1つのコミュニティでも、コミット具合いは人それぞれ。メンバーによってグラデーションがあっていいと思うんです。積極的に発言する人もいれば、Slackは読んでるだけという人もいて、その両方を強要も排除もしない場所でありたいと思っています。
タカハシ 一般的に、子どもが通う学校はヒエラルキー型の組織ですし、大人になっても企業に就職して、ヒエラルキー型の組織に所属する人が多いです。だからこそ、コミュニティのようなフラット型の組織に足を踏み入れたときの違和感は大きいと思います。最初はドキドキしますが、だんだん「これでいいんだ」とわかって、仲間になっていきます。
資本主義経済とは違う価値観を実現するのがコミュニティ
戸村 結NITYを長く運営していくにあたっては、たぶん、主宰者である私が疲れちゃうのがいちばんよくないなと。私自身が無理なく楽しめることをいちばんに運営しているし、実際私がいちばん楽しんでいると思います(笑)。
タカハシ 主宰者として思うのは、コミュニティはビジネスとは違う立ち位置であるということ。とくに結NITYやノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)のような循環型のコミュニティは、お金と何かを交換する資本主義経済に馴染みません。参加者が増えたからといってすごく儲かるわけじゃないし。きっと、資本主義の枠組みの中ではうまくいかない世界をつくれるのがコミュニティという場なんじゃないかなと思います。
戸村 お金が儲かるかどうかでいえば、1人のカリスマがいてその人の話をみんなが聞く、オンラインサロンのほうがよほどうまくいくと思います(笑)。私はそうじゃなくて、みんなが有機的に繋がるコミュニティをつくりたいので。規模が大きければいいとも限らないし、縦の関係はつくりたくないんです。
タカハシ そうですね。例えば、お金という強力な通貨以外にも、コミュニティの中で使えるリソースや得られるリターンはたくさんあるはず。どのリソースをどう流通させてどんなリターンを生み出すかはコミュニティによって全然違うので、どう設計するかが面白いところですよね。
戸村 正直、コミュニティが将来的にどうなっていくかまで具体的に想像できないままスタートして、半年ほど経ってようやくコミュニティの本当の意義がわかってきた気がしています。でも、コミュニティの価値って言語化しづらいものなのかもしれません。
タカハシ 逆に、はっきり言語化できちゃったらコミュニティの良さが消えてしまう気もしますね。コミュニティに入れば集合知的にいろんな情報が手に入りますが、明文化されていないノウハウや、メンバーたち本人が気づかないうちに溜まっている知識、情報もたくさんあるはずです。必ずしも言語化できることばかりじゃないのが、面白いところだと思います。
コミュニティの文化は、主宰者にもコントロール不可能
戸村 コミュニティについて話すとき、ルールや文化の話を避けて通れないなと思います。例えば質問コーナーで「こういう質問はダメ」「質問するならこの規定に沿って」と細かいルールを決めるのは、やっぱり違和感があるんです。組織みたいになっちゃって、コミュニティの良さがなくなってしまう気がして……。結NITYでは、最低限のふわっとしたルールしか決めていません。
タカハシ ルールは人の行動を制限するためにつくるものなので、コミュニティとの相性はよくないように思います。一度ルールをつくるとどんどん増えていくと思うので、つくらずに済むならそのほうがいいなと。ちなみにノンプロ研は、行動を制限するルールは今のところ1つもないと思います。推奨される行動はいくつかありますが。
ルールにまつわる文化って、暗黙知と似ています。コミュニティメンバーたちのふるまいが型となってどんどん新メンバーにも伝播して、継承されていくんです。もちろん経年で少しずつ変わっていく部分もありますが、大事なことほど変わりません。長い時間をかけてつくられるものなので、ある意味、コントロール不能ですね。
戸村 時間をかけて、コミュニティの文化ができていくんですね。最初からガチガチに固めるのではなく、だんだんつくり上げていくというのも1つの魅力です。結NITYの文化がこれからどう育っていくのか、楽しみです!
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