去る2022年11月9日に一般社団法人ノンプログラマー協会(以下ノンプロ協会)主催のセミナー「越境学習×学習コミュニティ~小さな越境からはじめるVUCA時代の人材育成~」が開催されました。
前回の記事では、前半の石山先生パートの内容をレポートしました。
本記事では後半のノンプロ協会代表 高橋さんの発表内容をご紹介します。
多様な越境学習支援サービスと、選び方のポイント
高橋さんからは、越境学習には様々な形があるなかで、企業主導で行う上での注意点や越境学習支援サービスの紹介などのお話がありました。
事業者で提供している越境学習支援サービスは様々あり、大企業からベンチャーにレンタル移籍をしたり、 NPO 法人や自治体などに行ってボランティア活動を中心にしていくなどのもの、またノンプロ研のようなコミュニティに参加して活動するというものまであります。
ノンプロ協会で提供している越境学習支援サービスは、コミュニティ(ノンプロ研)に参加してもらって終わり、というものではなく、アウェイのコミュニティであるノンプロ研とのマッチングを行いスムーズにコミュニティに馴染めるようサポートしたり、越境学習プロセスの支援や伴走、そしてホーム職場に持ち帰った時のに越境学習者が活躍できるようなホームの整備をサポートしています。
具体的には、コミュニティに足を踏み入れた時に衝撃を受けてしまい、一言も発しないままに退会してしまうノンプロ研メンバーも実際にいるため、ステップを踏みながらノンプロ研に馴染んでもらうようにしたり、 プログラミング学習のプロセスで躓かず前進できるような学習のサポートをしたり、ホーム側では学習者とどのように向き合い接するべきか、などのアドバイスやコーチングを行うなど、越境学習全体をサポートしています。
そして、企業が越境学習を導入する際に選ぶべきポイントとして、以下の4つに留意する必要があるとのことでした。
ノンプロ研だと表面的にはプログラミングやITの力がついたり、お互いに教えあうこともあるので教える力やプレゼン能力が身についたり、メンバー間の交流(ネットワーク構築)で仕事の取引が始まったりというケースもあるそう。
もちろん、培ったスキルで業務改善をしたり、変革を起こそうとしたりすることもたくさん起こっているそうです。
そんな身につけられるスキルや力の中でも、ノンプロ研で主に学べるITやプログラミングの力をつければ、 定形型の業務をより短時間で遂行することができ、より創造的な業務に時間を多く割くことができます。
現在日本の DX の成功率は 3〜16%という低い数字が出ているそうですが、その主な原因は人材不足と言われています。現業務の効率化を実現したり、創造型の時間を増やして学習時間を確保することで、人材の底上げができるのではないでしょうか。
越境学習参加企業の成果と、成果を出せるための条件とは
ノンプロ研では今年の3月から4社13名が越境学習に参加し、プログラミングスキルを習得するほか、業務改善意識が高まったり、学ぶ習慣がついたりという成果が出ています。
越境学習に参加した学習者が組織に帰ったあとも、自身でツールを開発して業務改善をしたり、参加していないメンバーとも互いに学んだり助け合う文化が醸成される、というような好循環も生まれているそうです。
具体的にどんな活動がされたかというと、GASやPythonなどのプログラミング講座を受講するだけでなく、勉強会や、業務ツールを開発するためのペアプロ(2人でプログラミングするイベント)に参加したり、反対に勉強会の運営側にまわって主催したり、教える側のTAを務めたり、といったことなど盛りだくさんでした。
ただ、越境学習が効果を発揮するのにはいくつか条件があるそうです。
越境学習論では「アウェイとホームで2度死ぬ」と表現される学習者の葛藤や苦しみが生じるのですが、そこに高橋さんは「ノンプロ研ではプログラミング学習による痛みや葛藤で『 三度』死ぬ」という表現を追加しています。
これはプログラミングの学習は初学者にはかなりの負荷をかけることにもなるため、「自発的であること」や「参加目的を明確にしておくこと」そして「学習時間が確保できるように時間的余裕があること」、「学んだことをホームで実践できるようにしておくこと」が必要だということでした。
そして、特にホームでの実践をより加速させるには「リーダーから越境学習を始める」のが良いということも強調しています。上層部の方の理解がないと、ボトムアップからの改善が進まないこともあるからです。
また、会社として越境学習者をサポートする体制を作り、業務改善が歓迎され、改善の余地が生まれるような組織風土にしておくことも大切だそうです。
なお、ノンプロ協会としてはIT学習を継続するノンプログラマーがどんどん活躍するような社会を作りたいと考えているということで、越境学習を通して出た実績や成果もどんどん広報をしていく予定だそう。越境学習に参加される企業さんにとってもPRになるかもしれません。
以上、高橋さんの発表をご紹介しました。
次の記事では参加者からの質問と、それに対する石山先生、高橋さんの回答をご紹介します。
なお、こちらの定例会の様子はYouTubeにもアップされています。
当日の実況ツイートもまとめられていますので、合わせてご是非ご覧くださいね。