ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)主宰のタカハシノリアキさん。自身もパラレルキャリアの一環として、働く女性たちを応援するWebメディア「パラナビ」の編集長として活躍する岡部のぞみさんとの対談が実現しました。全く違う切り口から、人々の「働く」を応援している2人の、意外な共通点とは?
得意分野を生かして周りに貢献することが、自分の幸せになる
――ノンプロ研は、発足から丸5年が経ちました。
タカハシ 12人で始まったノンプロ研ですが、今では190人超のコミュニティに育ちました。プログラミングを本職としない“ノンプログラマー”を集めて、仲間と一緒に学習できる環境を整えようと思ったのがそもそものきっかけです。最近は周りの成長を目の当たりにして感動したり、仲間と学習を応援し合って連帯感が生まれたりと、人間関係がベースになった新しい価値も生まれています。こういう部分こそコミュニティの面白さだと、実感しているところです。
岡部 私もつい最近ノンプロ研に参加させていただきましたが、190名もいるとはすごいですね! コミュニティの仕組み上、スキルを「教える側」と「教わる側」がいますが、違う分野では役割が逆転するのも面白いところですよね。みんなが自分の得意分野を生かしてコミュニティに貢献しながら、仲間を応援するという仕組み。とてもすばらしいと感じました。
タカハシ 周りに貢献すること自体が、自分の幸せにもなるんですよね。僕自身、ノンプロ研の運営をする中で身をもって学びました。
――ノンプロ研の活動は、プログラミングの学習以外にも部活動などいろんなものがありますね。
タカハシ その中には、僕が思いついた企画もあれば、メンバーのみなさんから「これをやってみたい!」とアイデアをもらって始まったものもたくさんあります。その意味では、かなり多くのメンバーが自主的に、ノンプロ研の運営に関わってくれている状況です(笑)。それに伴って、コミュニティとしてやれることも広がってきました。
岡部 パラナビでこれまでやってきた企画を振り返って感じるのが、ある程度、参加しているメンバーの自主性に任せるのが大事だということです。運営側が手厚く準備してトップダウンして、「お客様扱い」すればいいわけではないのが、難しいところですよね。タカハシさんが、ノンプロ研の運営において工夫されていることはありますか?
タカハシ いちばんは、「運営をガラス張りにする」ことです。コミュニティの方向性からイベントの企画、事務連絡まで、原則的にすべてSlackのオープンな場所で行っています。誰でもいつでもその内容や経緯を見られることで、信頼してもらいやすくなっていると思います。
岡部 ノンプロ研のSlackは、会話の数も熱量もものすごいですよね(笑)。これぞ、自走しているコミュニティの姿だなあと感じます。パラナビ編集部も毎日のようにチャットで会話して、企画のタネを探しています。
タカハシ コロナ禍でオンラインベースに切り替えたとき、メンバーの熱量が落ちてしまうかも? と心配したこともありました。が、蓋を開けてみれば完全に杞憂でした。むしろ、地方から参加しているメンバーたちが水を得た魚のように生き生きとしてくれて(笑)。
岡部 オンラインでも活動できるコミュニティは、地方と相性がいいですね。パラナビでも、東北に住んでいるメンバーが参加したりしています。パラナビをローンチして3年3カ月ほど経ちますが、地方とパラレルキャリアの相性のよさは、始めた当初から感じていました!
生き様が、まるごとコンテンツになる
タカハシ そもそも、パラナビはどんなきっかけで始まったんですか?
岡部 スイスの高級時計ブランド「ウブロ(HUBLOT)」が開催していた、女性向けビジネスコンテストに出場したのがきっかけです。当時は「副業」という言葉が世に出始めたころで、「30代 女性 副業」で検索するといわゆるナイトワークばかり並んでいた状況。もっといろんな選択肢があるんだよ! と世の女性たちに伝えたくて、パラナビを立ち上げました。今パラナビの事業責任者をしている飯田安紗美さんたちと企画を立てて、内容を練り上げて、プレゼンの練習をした日々はいい思い出です。実は、それまでに決勝まで進みながら優勝を逃すという悔しい思いを2回も味わっているんです。もうやめようと何度も思いましたが、3回目でようやく優勝し、事業化する運びになりました。
タカハシ メンバーのみなさんが感じた社会課題や、思いがベースになっているんですね。ノンプロ研でもメンバーのインタビュー記事を作っていますが、メンバー本人はもちろんのこと、その周りの方々にも喜ばれます。いち個人のストーリーをかたちにして発信できるのは、メディアならではのやりがいですよね。
岡部 はい、自分や周りの生き様を丸ごとコンテンツにできるのは、編集者の魅力だと思います。最近では、卵子凍結に挑戦したメンバーの“卵子凍結、やってみたレポ”を記事にしたり、20〜30代の多くが抱えているお金への不安を解消する連載を始めたりしています。リアル感があるからか、大きな反響があります!
タカハシ 実は僕も、自分自身がコンテンツになっている部分があるんです。僕の仕事は、他の人がやっていないことにチャレンジする、いわば手付かずの森を開拓していくイメージ。森の奥で果実を見つけたら、そこまでの道筋をつくって、後から来た人が辿り着きやすくするのが僕の流儀。みんなが果実を取れるような仕組みをつくれば、もっと大きな結果を得られる。これを延々と繰り返しています。ノンプロ研のようなコミュニティの魅力は、ここにもあると思います。
全員がそれぞれ特別な存在、主役であると実感してほしい
――ノンプロ研とパラナビ、形態は違っても「いろいろな立場の人が集まる場所」を作っているお二人。運営の軸にしていることはありますか?
タカハシ 自覚しているかどうかはさておき、ほとんどの人が「自分は組織の主役じゃない」と勘違いしているように思います。一握りの目立つメンバーが主役で、自分は脇役だと。でも、決してそんなことはありません。小さい努力を積み重ねてスキルを上げていけば、コミュニティに貢献できるようになりますし、それを他の経験と掛け合わせれば「自分にしかないスキルの組み合わせ」が出来上がります。気づいていないだけで全員がそれぞれ特別だし、いかようにも活躍できるということを、皆さん自身に知っていただけたらと思います!
岡部 パラナビも同じ考えで、メディアのスタンスとして“身近さ”を意識しています。みなさんに、ヨガやジムに通うようなカジュアルな気持ちでパラレルキャリアを始めてみてほしいので、一部の成功者たちが上から目線で語るようなメディアにはしたくないなと。パラナビを通じて「近くにいる身近な人たちが、実はこんなに素敵な生き方をしているんだよ」って見せたいんです。
タカハシ いちコミュニティの規模だからこそ、こうしたことが伝わりやすくなりますよね。SNSは人が多すぎるし、フォロワーやいいねの数など数値がつきまとうので、どうしても劣等感を感じがちです。コミュニティというちょうどいい規模の組織だからこそ、自分のよさに気づきやすくなると思います。
岡部 今は、「幸せの正解」が1つじゃない時代。だからこそ、読者のみなさんが不要な劣等感を抱かずに済むように情報を発信していきたいです。「すごい人がいるんだなあ」じゃなくて「私もやってみよう!」「読んでよかった」と思ってもらえるようなメディア作りを続けていきたいです!
――お二人に通じる部分がたくさん見つかりました! どうもありがとうございました。