VBAで人生を変えた!森本夏子さんが語る「道なき道を突破してきた」キャリアの切り拓き方

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業務効率化をする中でVBA(Visual Basic for Applications)に出会い、その魅力に夢中になった森本夏子さん。今では憧れのブレインテック企業で刺激的な毎日を過ごしているそうです。氷河期世代の真っ只中で「道なき道を切り拓いてきた」と振り返る森本さんに、キャリアチェンジの経緯や働く手応えについて聞きました。

独りよがりな「Excel職人」では組織を巻き込めない

――森本さんが、VBAに出会ったのはいつのことですか?

約20年前、派遣社員として職場を転々としていたころです。ただ、当時はVBAは挫折してしまって、Microsoft Excelの勉強にとどまっていました。

時は流れて前職のハウスメーカー時代、もう一度VBAを勉強しようと思いたちました。当時の職場では、手順やフォーマットが決まっているルーティン業務が多かったので、VBAとの相性が良くて。毎日同じ内容をデータ入力し出力するという作業が退屈だったんです。また、VBAから直接ブラウザを操作できることがわかったのも収穫でした。やればやるほどどんどん時間が浮くのが楽しくて、休日も夢中でVBAを勉強していました。

勉強した成果を資格に変えようと思って、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)やVBAエキスパートなどの資格を取りました。業務効率化の成果があるので周りも納得してくれて。会社の休み時間も本を広げて勉強していました(笑)。

勉強する中でweb検索したところ辿り着いたのが、タカハシノリアキさんのブログ「いつも隣にITのお仕事」(隣IT)でした。コードの解説一つとっても、初心者に寄り添ってくれる書き方で、すごくわかりやすいんですよ。

その中で気づいたのが「現場のいちメンバーが業務効率化すると、社内のルールとぶつかりがち」ということです。再現性が担保されずブラックボックスになったり、事故が起こったりするリスクがあるので、独りよがりの業務改善は必ずしも喜ばれないんですよね。当時の私の上司もそうでした。

例えば自分流にマクロを組んで職場のMicrosoft Excelを属人化させちゃう「Excel職人」とか、作成者が管理しきれず社内に流通しているマクロ、情報システム部門が把握できていないマクロなど、いわゆる「野良マクロ」がたまにいますよね。これらはまさに独りよがりです。ボトムアップで業務改善をしようと思ったら、プログラミングだけじゃなく、組織についての知識もないとダメなんだと気づきました。

プログラミング仲間がほしくて、ノンプロ研に入会

――長年の「隣IT」読者である森本さん。ノンプロ研(ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会)に入ったのはどんなきっかけでしたか。

私の周りには、VBAを一緒に勉強できる人がいなかったので、仲間がほしいなと思ってノンプロ研に入りました。入会した時点でVBAのスキルはわりと身についていたので、スキルアップよりも、プログラミング仲間がほしかったんです。

ノンプロ研に入ったのは2022年1月、まだ地元の名古屋に住んでいたころです。「隣IT」を読み始めたころから、かれこれ3年くらいタカハシさんをネトストしていたので(笑)、ノンプロ研というコミュニティがあることは知っていました。コロナ前は東京でノンプロ研のイベントが頻繁に開催されていたんですよね。メンバーのみんなが合宿したり飲んで仲良くなったりしているのを、名古屋から羨ましく眺めていました。

部活にもいくつか参加しています。いちばん印象深いのは「ブートキャンプ」ですね。自分で立てた目標に向かって1カ月取り組むというイベントです。これに参加したことで、当時の職場環境が私の目標達成の妨げになっているとわかりました。転職を決意できたのも、ブートキャンプがきっかけです。

コーチングや面接の練習をして、転職活動に役立てた

――ノンプロ研メンバーとのかかわりの中で、印象深かったのはどんなことですか。

転職活動を始める前、プロコーチの方にコーチングをしてもらったことです。コーチングを通して、私自身の性格の傾向や、今持っている目標が見えました。とくに、就職活動に向けたコーチングは神がかっていましたね。

私は現職であるX社が大好きで、憧れで、どうしても入りたくて面接を受けたんですが、2回も面接に落ちてしまって。心が折れそうになったときもコーチが伴走してくれて、いつも励ましていただきました。

コーチングの中では雑談もできるし、まるで懺悔室のようになんでも話せて(笑)、本当にいい経験でした。コーチからしたら、私は少しめんどくさいクライアントだと思いますが(笑)。コーチのみなさんは、うまくやってくれる度量をお持ちです。面接の準備を完璧にやり遂げて、結果的に内定をもらえたのはコーチのおかげですし、人生にかなり大きな影響を受けています。

また、「転職チャンネル」という部活に入って、面接の練習をしました。転職チャンネルには転職活動中のメンバーが集まっているので、みんなで練習できるんですよ。最終面接に持っていくスライドを発表しあうイベントも面白かったですね。「X社のここが好き!」をいう想いをスライドに込めて、「以前よりX社のファンです!」「人間と機械が融合する未来を熱望しています」と伝えました。

最初はプログラミングの仲間がほしくて入会したノンプロ研ですが、今はもうプログラミングそっちのけで部活をエンジョイしています(笑)。でも、ノンプロ研メンバーは「プログラミングを勉強したい」というベースが共通しているなとたびたび感じます。プログラミングと関係ない話をしていても、どこか、考え方や話の通じ方が共通しているというか。私が参加している以外にもいろんな部活があって、賑わっていますよね。

もがいても、もがいても足りない。毎日が緊張感とプレッシャー

――家庭や職場を「ホーム」、ノンプロ研のようなコミュニティを「アウェイ」と捉える人が多いですが、森本さんはどうですか。

たしかに越境学習の観点では、ノンプロ研を「アウェイ」とすることになっていますが、私にとっては完全にホームですね(笑)。職場でも家庭でもない、居心地のいい場所を「サードプレイス」と呼ぶそうで、私にとってノンプロ研はまさにサードプレイスです。

X社に転職して1年弱経ちますが、最近ようやく職場が自分のホームになってきたと感じます。スタートアップで人数が少ない中、周りがとても優秀なメンバーばかりなので、少し努力しても突き抜けられません。もがいても、もがいても足りない感じ。前職に比べて私の行動一つひとつの重みが増したようにも感じますし、毎日かなり緊張感とプレッシャーがあります。

X社では、ポジションに社歴や年齢は関係なく、完全に実力主義の環境です。余計なノイズを気にせず働けるので、気が引き締まりますね。レガシー企業によくある、社内調整のための社内調整がいらない分、仕事の意思決定が早いのもすばらしいし、本当にいい環境だなと思います。

昔から、好きなことに向かって猛進していく性分

――憧れのX社に転職して、すばらしい環境を手に入れた森本さん。転職する前は、どんなキャリアを歩んでいたんですか。

私は、いわゆる氷河期世代のど真ん中です。学校を出てからしばらく主婦をしていて、あるタイミングで派遣社員として営業事務を始めたのがファーストキャリアです。当時は、正社員になっても途中で派遣社員に切り替わることが普通にありましたし、「派遣社員でも、職にありつけたらラッキー」くらいの時代でしたね。それから、いろんな職場を渡り歩きました。

2010年ごろ、趣味が高じて(笑)、アミューズメント業界に就職しました。昔から、好きなことに向かって猛進していく性分なんです(笑)。ただ、あるタイミングで会社環境が大きく変わったことを受け、会社を辞め、地元の名古屋に帰ることにしました。

名古屋で新しい職場を探すも、キャリアがボロボロのつぎはぎ状態だったので、働き口は全然見つかりませんでした。なんとか見つけたのが、前職である大手ハウスメーカーの派遣社員枠です。売り上げや工期、建築スケジュールなどのデータをつくって集計する担当でした。Excelのスキルを生かせるかなと思い、そこで働くことを決めました。

そこで毎日山積みの仕事を片付ける中で、「VBAを使えばいろんな業務を自動化できるんじゃないか」と気づきました。それからはVBAにどハマりして、休日も夢中でコードを書く日々。とにかく楽しくて、どんどん自動化を進めていったんです。

あるタイミングで契約社員、そして正社員になれたのも、実はVBAがきっかけです。私がやっていた業務効率化について「森本さんに頼めば、すぐやってくれる」と評価してもらえて、契約社員になれました。ずっと派遣社員として不安定なキャリアだったので、心からうれしかったですね。

ただ、契約社員として入ったのは、正社員登用の受験資格がない部署でした。そもそも、グループ会社外の派遣社員から契約社員になるのも異例だったようです。でも、変わらずVBAで業務効率化を進め、周りの業務も巻き取るくらい頑張っているうちに、「正社員になりたい」という希望を聞き入れてもらえるようになりました。そして正社員登用の受験資格のある職種に転換できたんです。

我ながら、道なき道を突破してきた

――キャリアアップには高いハードルがある中、実力で勝ち取ってきたんですね。

当時は、契約社員になってから3年以内に正社員試験を突破しないとクビになるルールでした。職種転換をした時点で、すでに契約社員になってから1年半ほど経っていたので、あわてて正社員試験を受けることに。急いで簿記2級を取ったり社内の試験対策を準備したりした結果、なんとか一発で合格できました。紆余曲折のすえにようやく勝ち取った、正社員の椅子です。

振り返ると、我ながら道なき道を突破してきたなと思います。当時は、女性社員は男性社員のお嫁さん候補(!)として採用される時代でしたから。登録していた転職サイトを全部退会して、ここで頑張っていこうと決めました。これが私の前職です。派遣社員時代から数えると、13年間勤めました。

――今後のキャリアとしては、どんな将来像を描いていますか?

今は仕事でAIをフル活用しているので、もっと本格的に取り組んでいきたいですね。AIが出てきて既存のフローにない業務が増える分、私が担当している内部監査という仕事の重要さも増していると思うんです。

営業事務では、今まで培ったスキルを生かして、会社として大きくなるサポートができたらと思います。X社のAI部門と研究部門の両方の発展を願っているし、それによってX社が目指す未来が実現できるよう、力になりたいんです。私の頑張りがX社の研究の原資になって、直接的に神経科学の力になれると思います。エンジニアや研究者が、もっと真価を発揮できるような体制をつくっていきたいです!

ーーありがとうございました!

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。