M&Tコンサルティング「プログラミングを、事業の柱に」越境学習の先に見る未来

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M&Tコンサルティング「プログラミングを、事業の柱に」越境学習の先に見る未来

どんな企業にも存在する、バックオフィス業務。人手不足の折、無駄な業務をなくして業務効率化を進めたい……。そう考える企業から注目を集めているのが、「経理のアウトソーシング(スマート経理)」です。この業界で成長を遂げているM&Tコンサルティングは、さらなる成長と事業拡大を見据え、社員2名をプログラミングの“越境学習”に投入。スタートから数カ月でつかんだ手応えと、見えてきた将来像について、参加者の山本さんと福井さん、伴走者の二口さんにお話を聞きました。

<M&Tコンサルティング>
経理アウトソーシングサービス「スマート経理」を主軸として事業を展開している。クラウド会計ソフト「freee」と連携していること、遠隔で安定した経理アウトソーシングをする点が大きな特徴。所在地は大阪府大阪市、スタッフはグループ全体で20名。

今回、取材に応じてくれたのはこの3名。
・二口(ふたくち)大介さん:主に事業立案を担当。「企業が経理アウトソーシングを導入する際の、ツール選定やオペレーションの再構築などを手掛けています」
・山本真衣さん:「freeeを使った振り込みや会計入力、freeeの導入支援などを担当しています」
・福井里紗さん:「請求書の作成や支払いなど、取引先から引き受けたさまざまな業務を担当しています」

まず、自分たちが成功事例になろうと考えた

――経理のアウトソーシングは、今ニーズが高まっているのでしょうか?

二口 経理アウトソーシングのサービスは以前から存在していましたが、浸透率に地域差がありました。現在はコロナ禍もあって、全国的に需要が高まってきています。僕は、20〜30人規模の企業に日々コンサルティングする中で、ずっと課題に感じていることがあります。それは「ITスキルを持った人材がいない、確保できない」こと。例えばITを活用した業務効率化に取り組もうと考えても、人材確保という大きな壁が立ちはだかり、なかなか前に進まないんです。

――最近はさまざまなITツールがありますが、それを導入するだけでは足りないということでしょうか?

二口 ツールで解決できるのは、企業が抱える課題の中の一部だということです。例えば「freee」を導入すれば、経理部門の業務を改善できるでしょう。でも、中小企業のバックオフィスが抱えている課題はすごく複雑なので、ツール導入だけですべての課題を解決できるわけではありません。根本的に改善するためには、スキルを持った人材の確保も含め、ほかの手法も探らなければならない。そこで当社は、今後さらに重要になっていくであろう「プログラミング」を、未来の事業の軸にすると決めたんです。

――そこから、二口さんご自身がプログラミングを学ばれたのはなぜですか?

二口 とくに人材確保が難しい中小企業では、社内の「ノンプログラマー」のスキルアップが現実的。そこで思いついたのが、ノンプログラマーである僕がプログラミングを学ぶことで、当社自身が成功事例になれるのではないかというアイデアでした。

左から、二口さん・山本さん・福井さん。

一度は断念したGASの学習に、ノンプロ研で再挑戦

――具体的にはどんなことからスタートしましたか?

二口 独学で、GAS(Google Apps Script)にチャレンジしました! 2021年の春、社内の人事異動に伴って業務の引き継ぎを行ったところ、「かなりの業務が属人化している」という実態に気づいたんです。これを改善するには、GASが最適だと考えました。

――独学とはすごいですね!

二口 空き時間で取り組みましたが、だんだん時間が取れなくなってしまい、数カ月で断念しました……。始めるのは簡単でも、継続するのは難しいものだとしみじみ感じましたね。その後ずっと、もっとうまくやれなかったものかと、胸にモヤモヤが残りました。

――その後、どうやってノンプロ研を知ったんですか?

二口 ある日、たまたま目にしたDMで「ノンプログラマーのためのスキルアップ研究会」(通称、ノンプロ研)の存在を知りました。「面白そうだけど、やっぱり難しいかも」が第一印象でした。でもちょうどそのころ、ノンプロ研に参加されている三国産業さんから「すごくいいコミュニティだから、試しに参加してみるといいよ!」と強く勧められて。それがきっかけで、一度トライしてみることにしました。山本さんと福井さんを誘い、私は伴走者という立場で、越境学習プロジェクトへの参加を決めたのが2022年3月のことでした。

山本 二口さんから「プログラミングの勉強をするコミュニティに入らない?」と声をかけてもらったんですが、当時は正直戸惑いました(笑)。プログラミングの経験は0でしたし、勉強した結果どんなメリットがあるのか、まったくイメージできませんでした。でも福井さんも一緒だし、なんとかなるだろうと楽観的に考えて、参加を決めました。

福井 プログラミングはハードルが高くて、最初は正直、他人事のようでした。高校の授業で初歩を習って、難しく感じたのを覚えていたので、正直あまりやりたくないと思いました(笑)。でも、日常業務を少しでも効率化できるなら、挑戦する価値はあるかもしれないなと前向きに考えて、挑戦することにしました。

「あ、私、できてる」と気づいてから、一気に楽しくなった

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向かって左が山本さん、右が福井さん。手応えを掴むと、一気にプログラミングが面白くなったそう!

――実際に越境学習プロジェクトに参加してみて、いかがですか?

山本 勉強を進めるうちに、「日常業務のうち、この作業をもっと簡単にできるかも」「この作業は削れそう、工夫の余地がありそう」と、どんどんアイデアが生まれるようになりました。今では初級講座をクリアして、修了証もいただいたので、「壁を1つ乗り越えた!」という自信がつきました。

福井 私は講座の8回目くらいまで、周りのレベルについていけない焦りと、宿題が多すぎてやりきれない辛さで、正直あきらめかけていました。9回目まで進んだところでようやく、「あ、私、コードを読めるようになってる!」と気づいて。コードをすらすら書くことはできないけど、どこがどこにどう影響しているのか、仕組みがわかるようになったんです。自分の成長を感じて、ぐっと楽しくなりました。それまで「私には無理かも……」と思っていたのが嘘みたいです。

――コミュニティとしての魅力は、どんなところでしょう?

山本 参加者みんなでレベルアップしていくという雰囲気です。勉強している皆さんの姿がモチベーションになるし、何より、仲間の存在は心強いです。例えば「freee」との連携の話題で、「ほしいデータをほしかった形でインポートできた!」、「こんなツールを作ったよ!」と、Slackでみんなが盛り上がっているのを見ているだけで楽しいです。誰かが何か質問をすれば、ほかの誰かがていねいに教えてあげて、応援し合う、助け合う環境があります。

福井 仕事と家庭以外に居場所を持つこと、ゆるいつながりをつくることってとても大事。仕事と家庭を行ったり来たりする毎日の中で、まったく違う分野の勉強を通じて、いろいろな人と交流するのは新鮮ですし、すごく貴重な経験だと感じています。

――お忙しい中、どうやって勉強する時間を捻出していますか?

福井 平日の業務後は、スマホをいじったりテレビを見たりして時間をつぶすのが日常だったので、その数時間をそのまま勉強に充てました。やってみると「時間って、意外にあるんだな」と気づきましたね。逆に、宿題をしなかった日は「勉強しないと時間がもったいない!」と思うようになりました。

山本 私は子どもがいるので、朝早起きして勉強しています。うまくいく日もそうでない日もあるので、今も試行錯誤しながら時間を捻り出しています!

「現状に疑問を持つ力」がついてきた

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――貴社の中で起きた変化はありますか?

二口 課題を見つけて解決していく姿勢や、現状に疑問を持つ意識が育ってきたと思います。参加者同士でランチミーティングを開いているのを見て、コミュニケーション活性化という副次的な効果も生まれているなあと感じます。

山本 社内から「この作業、GASで自動化できない?」と相談されることがよくあって、周りからの期待をひしひしと感じます。せっかくできることの幅が広がってきたので、今後も勉強を継続して、日常業務に生かしていきたいです。

――何か、工夫していることがあれば教えてください。

二口 私は伴走者という立場なので、2人以外のメンバーがプログラミング学習の意義を理解し、自然に受け入れられるよう、社内の土壌作りに注力しています。プログラミングは今後の事業の柱として期待されている、将来性の高いスキルであること、だからこそ会社として公式に取り組んでいるのだと周知することが大事ですね。

――今後の目標を教えてください!

二口 当社にとって、プログラミングで社内の業務フローを改善するというのは副次的な目的。いちばんの狙いは、僕たちがきっかけになって、たくさんの中小企業に変化をもたらすことです。企業の経理担当は、PCと向き合い続ける日常になりがち。でも、ビジネスの現場や会社の外で、どういう動きがあってどんな潮流が起きているのか、最新の情報をキャッチアップすることが大事です。中小企業の経理が「会社全体を変える役割」を担えるよう、僕たちが触媒の役割を果たしていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

さくらもえ

出版社の広告ディレクターとして働く、ノンプログラマー。趣味はJリーグ観戦。仙台の街と人が大好き。